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![]() ■ 洋楽シングルチャート 1984.5.20 01 フットルース/ケニー・ロギンス(CBS Sony) 02 ハイ・スクールはダンステリア/シンディ・ローパー(Epic) 03 ロックバルーンは99/NENA(Epic) 04 今夜もEAT IT/アル・ヤンコビック(Canyon Int'l) 05 スリラー/マイケル・ジャクソン(Epic) 06 ヒーロー/ボニー・タイラー(CBS Sony) 07 ウォッチング・ミー/ロックウェル(Motown) 08 プロジェクトA/ジャッキー・チェン(Elektra) 09 アイ・ライク・ショパン/ガゼボ(CBS Sony) 10 スリラー(30cm盤)/マイケル・ジャクソン(Epic) 邦楽チャートでは中森明菜の「サザン・ウィンド」がナンバー1を記録していた昭和59年5月、洋楽チャートの1位はケニー・ロギンスの「Footloose(米1位)」でした。 前回に引き続き、まずマイケル・ジャクソンの「スリラー」の話題から入りましょう。以前70年代シリーズの中で、カーペンターズの「ナウ&ゼン」が驚異的なロングセラーを記録したことを紹介した回がありましたが、80年代でこれにあたるのが「Thriller」。前年に発表され、物凄い売れ行きを記録していた同作、その勢いは発売後一年経ってもまだまだ衰えませんでした。 前回紹介した「Billie Jean」と「Beat It」がともにナンバー1を記録した後、同アルバムからは「Wanna Be Startin' Somethin'(米5位)」「Human Nature(7位)」「P.Y.T.(10位)」とTOP10ヒットが続き、更にポール・カッマートニーのアルバム「Pipes Of Peace」からカットされたデュエット「Say Say Say(6週間1位)」と、ここまでがマイケル1983年のヒット実績。ほぼ1年間ずっと、彼はヒットチャートの上位に居座り続けたことになります。 しかし、意外なことに前年プロモーション・ビデオ(PV)が大変な話題となり、ヒットチャート新時代の扉を開けたともいえる「Billie Jean」と「Beat It」以降彼はPV制作を行わず、主にラジオのエアプレイに後押しされてヒットを連発していきます。で、年が明けたこの時期、結果的に「Thriller」から最後のシングルカットとなったアルバムタイトル曲で、彼は再びPVシーンに一石を投じる大作を発表します。アルバム中最大のヒットではないものの、多くの人がハイライトの一つと考えているこの「Thriller(米4位)」で彼は10数分に及ぶ短編映画風の“長編”PVを発表。特殊メイクで彼が狼男に変身するこの作品は、劇中登場するゾンビ・ダンス(何万回パロディのネタにされたでしょう・・)も話題を呼び、強烈な印象を残しました。
この頃日本は洋楽のPV番組全盛期で、ほぼ毎晩どこかのチャンネルを回せばTVで英米のヒット曲のPVを見ることが出来る、という状態にありました。当然洋楽ヒットの一般認知度も非常に高く、この「Thriller」のビデオが発表された際はTV各局の情報番組(東京ローカルで申し訳ないんですが、今でいえば「ワンダフル」とか「トゥナイト」みたいなやつ)は挙って特別にコーナーを設け、PV10数分全編を流したものでした。
あともう一つ、80年代に一般的になり、現在も幅を利かせている“形態”が登場しています。10位に登場している「Thriller」の「30センチ盤」、名称が時代を感じさせますが、これはすぐさま「12インチ」の呼称が一般的となり、CDシングルの時代となった現在は「マキシ」と呼ばれているもののハシリ。これについては次回以降に詳しく取上げましょう。
さて、音楽シーンを席巻した「Thriller(今回このタイトル、何回登場しているんでしょう?)」。ここまで彼の作品やイメージが巷に氾濫すると、当然のことながらそれに便乗する者も現れます。まず4位の“ウィアード(変人)アル”ヤンコビックの「Eat It(米12位)」。パロディ音楽を得意とするカルト・アーティストの彼は、この一作で世界的に知名度を上げます。「Beat It」を緻密にパロった(わっ!古い言い方!)PVは忽ち話題をさらい、ヒットチャートでスカイ・ロケット級のジャンプアップを見せました。
このヒット後も彼は次々とパロディ作品を発表し続け、92年には、現在では「ロックの聖典」扱いされているニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit(米6位)」をいち早く茶化した「Smells Like Nirvana(米35位)」もチャートに送りこみました。現在もなお膨大な数を誇る彼のファンサイトを見ると、相当根強い人気を誇っている様子が窺えます。
続いてもう一つ、7位のロックウェル「Somebody's Watching Me(米2位)」。彼はモータウンの社長、ベリー・ゴーディJr.の息子で、いわゆる「2世タレント」。モータウンはマイケルがジャクソン5としてデビューを果たしたレーベルで、ゴーディは父親同然の存在。当然「ウチの息子のデビューに、手を貸して欲しい。」と言われれば、断れませんよね。この曲では、ロックウェル自身は歌を歌わず、ラップでもなく科白を叫んでいるだけ。サビでマイケルが「誰か、僕を見張ってるの・・?」と歌っている部分が非常に印象的で、殆どそれだけで売れてしまったような感じ。彼はもう一曲「Obscene Phone Caller(米35位)」をヒットチャートに送りこみ、その後暫くしてアーティスト稼業を引退。90年代は父の片腕としてモータウンを運営する「若旦那」をやっていたようですが、経営体制が変わってしまった現在は、何をやっているのやら。。もしかしたらデトロイトに「モータウン博物館」を建立するため、走り回っているかもしれません。
ようやくマイケル関連が終わりました。それでは改めて上位から曲紹介を始めましょう。この月1位になっている「Footloose」は、ケヴィン・ベーコン主演の同名映画主題歌。“80年代”という懐かしさと気恥ずかしさが入り混じった時代のイメージの一部を形成している感のあるこの作品、ベーコンは現在も主演作が撮り続けられるスター俳優になりましたし(昨年の“煩悩だらけの透明人間”は笑いました)、作品もミュージカルとしてアメリカでは今も上演が続けられていたりと、意外なほどの生命力を持ちました。そういえば「Footloose」、この秋日本人キャスト版が上演されるそうです。かつて映画「グリース」で、オリヴィア・ニュートン・ジョンが女子高生役を演じたような、なんともいえないキャスティングがこのミュージカルでもなされているようですが・・。
ケニー・ロギンスはそれまでの“シンガーソングライター”のイメージから一転、突如“80年代のサントラ王”となり、この後同映画から「I'm Free(米22位)」、サントラではありませんが「Footloose」のまったくの焼き直し「Vox Humana(米29位)」、続いてこれも懐かし恥ずかし、トム・クルーズ主演の「トップ・ガン」から「Danger Zone(米2位)」、シルベスター・スタローンの「オーバー・ザ・トップ」から「Meet Me Half Way(米11位)」、更に日本未公開の「Caddyshack II(成金ゴルフマッチ)」から「Nobody's Fool(米8位)」と、サントラヒットの連発で我が世の春を謳歌する一方、「最もダサいアーティスト」ランキングのトップを、マイケル・ボルトンが台頭するまでの間独走することになります。近年彼は心を入れ替えたのか(?)アコースティックな作風に回帰、かつての「プー横丁」シリーズも復活させてグラミーの子供向け部門で賞を獲得したりしています。
この月「Footloose」関連でもう一曲がランクインしています。6位のボニー・タイラー「Holding Out For A Hero(米34位)」は、どちらかというと大映テレビ系のドラマ主題歌に使われた日本語カバー盤で記憶している方が多いかもしれません。「Footloose」サントラからは他にもデニース・ウィリアムスの「Let's Hear It For The Boy(米1位)」やマイク・レノとアン・ウィルソンの「Almost Paradise(米7位)」、シャラマーの「Dancing In The Sheets(米17位)」と大ヒットが続き、サントラから様々なアーティストの曲を次々とシングルカットし、歌と映画の相乗効果を狙うという新しいヒットチャートの流れを作っていくことになります。余談ですが、日本ではここに収録されていたムービング・ピクチャーズの「Never」も、日本語カバーによって話題になりました。
2位に入っているのは、現在何故かオムツのCMソングに使われているシンディ・ローパーの「Girls Just Want To Have Fun(米2位)」。彼女もMTVの時代に持ち前の明るいキャラクターを前面に押し出し、その強いインパクトでもってヒットチャートを伸し上がったアーティストでした。「女の子は、とにかく毎日を楽しく過ごしたいの!」というメッセージは普遍的なもので、PV上で踊り跳ね回る彼女は、実際は既に30歳を超えていたものの無邪気な少女のように見え、MTV世代の洋楽ファンに強い印象を残しました。
ブレイクまで長い時間を要したこともあり、彼女はシーンに登場したとき既に熟練したエンターテイナーであり、またこの後「Time After Time(84年米1位)」や「True Colors(86年米1位)」など名作バラードを発表して「ちゃんと才能も持ち合せている」ことも世に示し、更に“親日家”的側面もリスナーにアピール、後に「紅白歌合戦」に出場するほどの人気を博しました。これから先、80年代半ばあたりから恐らく90年代初頭まで、日本で最も人気がある洋楽アーティストといえば、女ならシンディ・ローパー、男ならブライアン・アダムス、バンドだったらボンジョビ、という時代が始まります。
3位はユニークなヒット、ドイツのロックバンド、ネーナの「99 Luftballoons(米2位)」。ドイツ語で歌われたこの曲はキャッチーなキーボードのフレーズが印象的で、アメリカでは歌詞の内容もわからないまま大ヒット。この曲やオーストリアのファルコが作ったアフター・ザ・ファイアの「Der Kommissar(米5位)」のような、ニューウェーブ風味でポップなサウンドというものをアメリカの制作陣はまだ作り出せておらず、その間隙をついてヨーロッパ産の作品がビルボードのチャートに乱入してくる、というケースが当時よく見られました。
残る2曲は日本人向けヒット。8位はジャッキー・チェンの同名映画主題歌。近年アメリカで念願のブレイクを果たした彼は、日本では昭和50年代既にトップクラスの映画スター。彼の最高傑作と評する人もいるこの作品をはじめ、多くの映画で主題歌も歌い、我が国でもかなりの数のレコードをリリース。武道館公演まで行う「アイドル」でした。9位はイタリアのガゼボ「I Like Chopin」。MTV一色の感がある1984年の洋楽チャートですが、「ヨーロピヤ〜ン」なテイストのポップスも根強い人気を保っており、これはこの時期の代表的なもの。この曲はその後小林麻美が「雨音はショパンの調べ」のタイトルでカバー、かなりのヒットを記録しています。
余談です。数年前インストヒット「Children(96年米21位/英2位)」を発表したロバート・マイルスという人がいたんですが、彼が続いて女性ボーカルをフィーチャーし、リリースしたスマッシュヒット「One And One(同年米54位/英3位)」という曲が非常に「〜ショパン」に似た雰囲気(しかも小林麻美バージョンに!)で吃驚したことがありました。ロバート・マイルスもイタリア出身ですから、あの雰囲気はイタリア独特のものなんでしょうかね?
(2001.5.29)Flashback Homecopyright (c) 2000-2003 by meantime, all rights reserved. |