Presented by meantime
■ Billboard HOT100 April 21, 1990
01 Nothing Compares 2 U - Sinead O'Connor (Ensign/Chrysalis)
02 Don't Wanna Fall In Love - Jane Child (Warner)
03 All Around The World - Lisa Stansfield (Arista)
04 I Wanna Be Rich - Calloway (Solar)
05 I'll Be Your Everything - Tommy Page (Sire)
06 Here And Now - Luther Vandross (Epic)
07 How Can We Be Lovers - Michael Bolton (Columbia)
08 Forever - Kiss (Mercury)
09 Without You - Motley Crue (Elektra)
10 Whole Wide World - A'Me Lorain (RCA)
久々に平成年間を取り上げます。平成2年4月、ビルボードHOT100のナンバー1はシニード・オコナーの「愛の哀しみ」でした。
アイルランド出身の女性シンガー、オコナーがデビューアルバムを発表したのは87年のこと。アルバム「The Lion And The Cobra」は各方面で反響を呼び、そのエキセントリックなボーカルと、一度見たら忘れられないスキンヘッドで洋楽ファンに強いインパクトを残しました。デビュー当初からその過激な言動が話題となっていた彼女が続いてこの年に発表したセカンドアルバム「I Do Not Want What I Haven't Got」からカットされた「愛の哀しみ」は、プリンスが配下のグループ“ザ・ファミリー”に提供した曲(85年)のカバーで、その幻想的なサウンドと、やっぱりインパクトが強かったプロモーションビデオに於ける彼女のスキンヘッドがアメリカでも話題を呼び、カルト・アーティストから一躍ヒットチャートのトップに踊り出ます。
突如大スターとなった彼女でしたが、トラブルメーカーぶりは相変わらず。方々での発言が物議を醸し、またアメリカでは大ヒットのフォローアップとなるシングルの選定にも失敗してやがてポップチャートから姿を消しました。以降彼女はイギリスでコンスタントに(いろんな意味で)活躍中、放言っぷりも相変わらずのようです。
80年代ほどではないにしろ、MTVはこの頃も新人を売り出すに大変重要なメディアで、オコナーのようにインパクトのあるルックスで話題を呼んだアーティストも当時多々おりました。その代表格といえるのが続く2位のカナダ出身の女性シンガー、ジェーン・チャイルド。ダンスミュージックとロック・サウンドを融合させたような「Don't Wanna Fall In Love」もなかなかのインパクトがありましたが、人々の話題を呼んだのは彼女のルックス、というか鼻から耳に通したチェーン。「痛そう。。」とか「一度引っ張ってみたかった。」とか、彼女の名前が話題に上ると未だにその話がされる、というかそれ以外されない、というのがちょっと凄い。この曲は当時日本でもなかなか人気があり、この曲のヒット以降は「一発屋」としてまったく無視されたアメリカと比べ、我が国では90年代後半までコンスタントにアルバムが発売されていたようです。
時代の移り変わりの時期にあった90年、なのでこのチャートには多くの「一発屋」が登場していますが、そういった中で継続して成功を収めたアーティストもおりました。3位のリサ・スタンスフィールドはその中の一人。イギリスでセッション・シンガーとしてキャリアをスタートさせた彼女は幾つかのダンスヒットにその声を提供した後にソロデビュー、「All Around The World」はタイトル通り世界中でヒットを記録しました。この曲のプロモーションビデオに登場した真っ白なメイクの彼女は、前記の二人に通じる“インパクト狙い”な印象が強かったのですが、音楽的にはより永続的な魅力をたたえていました。彼女のレコードはR&Bのラジオ局でもよくかけられ、この曲をはじめ92年までに3曲のR&Bナンバー1ヒットを記録。ある意味マライア・キャリーに先駆けた存在といえたかもしれません。
4位もこれまた一発屋、キャロウェイの「I Wanna Be Rich」。とはいえレジーとヴィンセントのキャロウェイ兄弟は、80年代を人気R&Bグループ、ミッドナイト・スターのメンバーとして過ごしたので、印象はだいぶ違いますが。グループが在籍したソーラー・レコードの所属アーティストたちのプロデューサーも務めたキャロウェイ兄弟は80年代後半にユニットとして独立、このキャッチーなナンバーはたちまちリスナーの耳を捉えましたが、当時R&Bシーンも過渡期にあったため、80年代に全盛を極めたソーラー・サウンドも、ウィスパーズと、そこから派生し、90年代最大の才能の一つとなったベビーフェイス以外は次第に表舞台から姿を消していったのでした。
5位はこの時期の印象的なアイドル、トミー・ペイジ。彼は80年代後半にサイア・レコードからデビューした際は、同じレーベルのマドンナに見出されたことをキャッチフレーズ(実情は違ったようですが)に売り出されたシンガー。この時期はニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックが人気のピークにあり、彼らのツアーに同行していたペイジもその恩恵にこうむることになりました。この「I'll Be Your Everything」にはニューキッズの3人のメンバー(ドニー、ジョーダン、ダニー)がコーラスに参加、それが最大の売り物となってヒットチャートの1位に輝きます。が、何度も言っているとおりこの時期は時代の変わり目。この年の後半にはニューキッズをはじめとする白人アイドルたちは急速にセールスを落とし「アイドル冬の時代」が到来します。アメリカに於ける「冬の時代」はスパイス・ガールズが扉をこじ開け、ブリトニー・スピアーズが天下を獲る90年代後半まで続きました。その後ペイジはアイドル需要が依然存在した日本などアジア・マーケットを中心に活動していましたが、やがて活躍の場を失い、現在はレコード契約を求めながら細々と歌い続けているようです。
今回はヒットチャート上短命に終わったアーティストが多いので、なんだかもの哀しげな文章が続きますが、6位は大丈夫です、ルーサー・ヴァンドロス。80年代を通じて成功を収めてきた彼が発表した2枚組のベスト盤「The Best Of Love」からカットされた「Here And Now」は、現在結婚式の定番ソングとして聴き続けられている模様。90年代以降も彼が時代の流れにも負けず、ゲイ疑惑にもめげず(?)活躍を続けているのはご存じの通り。
で、一発屋が多い、ということは様々な試行錯誤がチャート上で繰り返されたともいえるこの時期のヒットチャート。一方で“保守反動”的な音楽もラジオで大変な人気を博しました。それが現在では「パワー・バラード」と呼ばれる類いの音楽。「パワー・ポップ」とは一見似ているようで全然違うこの音楽は、サウンド的にはハードロックながら、メロウで大仰なバラードを歌い上げるというもの。80年代に隆盛を誇った多くのハードロックバンドがこの時期行き詰まり感を感じており、皆挙ってこのサウンドで“ウリに出た”のでした。
このチャートでは7位〜8位がそれにあたります。7位のマイケル・ボルトンは79年に「Love Me Tonight(米62位)」のヒットを放ったハードロックバンド、ブラックジャックでボーカルをとっていた人(当時は“マイケル・ボルチン”でした)。80年代に入ってソロに転じ、88年の「(Sittin' On) The Dock Of The Bay(米11位)」のカバーでジャケットの裏面にオーティス・レディング未亡人の推薦文を掲載するというかなり強引な売り込みが功を奏してかブレイク。89年の「How Can I Supporsed To Live Without You(米1位)」でチャートのトップに君臨しました。この「How Can We Be Lovers」は曲調的にはバラードというよりホワイトスネイク風の中庸ロックですが、その後の彼の路線を考えれば“パワー・バラード”の流れで捉えていいものと思われます。
続く8位はキッスの「Forever」。70年代後半に大変な人気を誇り、日本でもロックアイドルとしてもてはやされた彼らでしたが、80年代に入るとキャリアは低迷。メンバー交代を繰り返したり、一時はメイクを落として“素顔のキッス”として勝負に出て惨敗したりと散々な状況にありましたが、マイケル・ボルトンもソングライティングに参加したこの曲で見事復活。以降は若い世代のアーティストたちから「小さい頃好きでしたー」とリスペクトされるという日本でいえば“ピンクレディー的待遇”で安定した活動を続け、96年にはオリジナルメンバーで再編。つい先日も何度目かの“引退興行”で来日していましたね。9位のモトリー・クルーはそのキッスの遺伝子を色濃く受け継いで80年代後半に成功を収めたハードロックバンド。彼ら最大のヒットアルバム「Dr. Feelgood」からカットされたこのバラードも大ヒットとなりましたが、ハードロックもそろそろ変貌を始め、80年代的なお祭りの時代は終わりを告げようとしていました。
最後10位はガラっとタイプが変わって女性アイドル、エイミー・ロレインの「Whole Wide World」。これも80年代的アイドルポップスと90年代型のダンスポップの過渡期的作風を持った曲で、同時期に活躍したキャシー・デニスや、R&B寄りでいえばペブルスやキャリン・ホワイトなどにも通じる味わいを持っています。アイドルポップスとしては相当完成度高いですね、今聴いても“かわいい”と思えてしまいます。
(2003.4.22)Flashback Homecopyright (c) 2000-2003 by meantime, all rights reserved. |