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■ Billboard HOT100 June 15, 1996
01 Tha Crossroads - Bone thugs-n-harmony (Ruthless)
02 Always Be My Baby - Mariah Carey (Columbia)
03 Give Me One Reason - Tracy Chapman (Elektra)
04 You're Makin' Me High/Let It Flow - Toni Braxton (LaFace)
05 Because You Loved Me - Celine Dion (550 Music/Epic)
06 You're The One - SWV (RCA)
07 Nobody Knows - The Tony Rich Project (LaFace)
08 Ironic - Alanis Morissette (Maverick/Sire)
09 Fastlove - George Michael (DreamWorks)
10 Theme From Mission: Impossible - Adam Clayton & Larry Mullen (Mother)
平成8年6月第3週、ビルボード誌HOT100のナンバー1はボーン・サグズ・ン・ハーモニーの「Tha Crossroads」でした。
ボーン・サグズ・ン・ハーモニー、通称“ボンサグ”はクリーヴランド出身のラップ・グループ。とにかく早口なのと、歌うようにラップする(グループ名にある“ハーモニー”は伊達ではない)のが非常に個性的で、メジャーデビューした途端にヒットチャートで大成功を収めました。この曲はアルバム「E 1999 Eternal」に収録されていた「Crossroad」を改題し、録音もまったく変えてしまったもの。この時期同曲のアルバムバージョンとシングルバージョンが単なる“リミックス”どころではないくらいに違いがあり(「これって“リレコ(=Re-Recording)”だろっ!」と何度嘆いたことか)しばらくするとその“ヒットバージョン”が追加収録されたアルバム新装盤が発売され「もう持ってるのに・・。」と泣く泣く“二枚買い”してしまった経験を持つ方がいっぱいいらっしゃったと思いますが、これはその代表格ですね。何しろ別曲なんだから。
曲の内容は彼らを見い出しデビューのきっかけを作った元N.W.A.のイージーE(この前年にエイズで死去)を追悼したもの。そういえばこの年は記録的な大ヒットが続出し、1年間に8曲しかナンバー1ヒットが生まれなかったことで記憶されていますが、この年前半のナンバー1ヒットのテーマがことごとく“死”をにおわせていたのが不気味でした。列記してみますと
One Sweet Day - Mariah Carey & Boyz II Men(前年から引き続き16週連続1位。友人の死をテーマにしたもの)
Because You Loved Me - Celine Dion(6週。死んだ恋人を偲ぶ内容)
Always Be My Baby - Mariah Carey(2週。これは違います)
Tha Crossroads(8週。前述の通り)
How Do You Want It - 2Pac (feat. KC & JoJo)(2週。この年の秋に2Pacは銃撃により死亡)
と、やや強引なところもありますが、なんとなく“死”を連想させるものが多い。まぁ、その雰囲気にリスナーがうんざりしたのか、年の後半にはやたらと生命力に溢れたロス・デル・リオの「Macarena (Bayside Boys Mix)(14週1位)」が爆発的にヒットし、おつりが返ってくるくらいに雰囲気は変わるのですが。
さて、この週の2位、4位、5位では、この時代の熾烈な“歌姫”争いが見られます。まず2位のマライア・キャリーは、大ヒットアルバム「Daydream」からのサードシングル。ファーストシングル「Fantasy」が8週連続の1位、続くボーイズ・II・メンとの共演シングル「One Sweet Day」が歴代最高の16週連続1位と特大ヒットが続いたこともあって、この「Always 〜」のリリースまでに半年近くの間隔が空いたことから、これは売上げ好調な「Daydream」のセールスを伸ばすための策略ではないか?との見方がありました。国外ではその間にジャーニーのカバー「Open Arms(英4位)」がリリースされましたし。そこら辺の話は後半にもうちょっと触れます。
4位は新歌姫トニ・ブラクストン。ベビーフェイスの庇護のもと優等生的なイメージでファーストアルバムを成功させた彼女は、セカンドアルバムのファーストシングルであるこの曲のプロモーションビデオでガラっとイメチェン、“美人シンガー”としてシーンにうって出ます。この路線は好評を持って迎えられ、彼女は更に大きな成功を手にすることに。。
5位には先ほどちょっと触れたセリーヌ・ディオンの「Because You Loved Me」が。これは映画「Up Close & Personal(アンカーウーマン)」主題歌で、この時期既に恋愛ものは相当無理のあったロバート・レッドフォードが、よせばいいのに戦地に取材に出かけて銃撃に巻き込まれるエンディングで効果的に使用されていました。そういえばこの頃の彼の主演映画に「馬の耳に念仏(The Horse Whisperer)」という秀逸なタイトルのものがありましたね。
飛ばしてしまった3位は「一発屋」と言いたいけど一発屋じゃない、トレイシー・チャップマン。1988年のアコースティックな「First Car(米6位)」でシーンに登場した際は、新しいタイプのフォークシンガーとしてスザンヌ・ヴェガあたりとよく並べられて取り上げられていた印象がありますが、その後はこのタイプのアーティストによくあるようにチャート的には沈黙。しかしこの年、シンプルなブルースコードのこの曲がロングヒットとなり復活を果たしました。彼女のように“一発ヒット”的なものを二度放ったアーティストって、非常に珍しいですよね。定義が難しいんですが、他にはどんな人が思い浮かびますか?私はジャニス・イアンくらいでしょうか。。
6位には90年代ガール・グループシーン永遠の“二番手”、しかしこの時期はアン・ヴォーグは休業中、モンスター・グループと化していたTLCにも決してひけをとらない人気を誇っていたSWVが。92年のデビュー以来コンスタントにヒットを飛ばし続けていた彼女たちですが、この年にリリースした「New Beginning」は意外にもまだセカンドアルバム(途中リミックスアルバムはありましたが)。この実体のないまま話題をつなぐという手法が、なんとなく90年代っぽい感じ。7位はこの年を代表するロングランヒットの一つ、トニー・リッチ・プロジェクトの「Nobody Knows」。非常にベビーフェイスっぽい作風でしたが、この頃盛り上がりを見せた“ニュー・クラシック・ソウル”とか“アコースティック・ソウル”の雰囲気をたたえた佳曲でした。
8位は90年代に新しい女性ロックのスタイルを確立し、多くの模倣者を生んだアラニス・モリセットの「Ironic」。もうちょっと後で詳しく取り上げますが、この曲のビデオの“ハコ乗りアラニス”がやたら印象に残っています。
あと2曲は手短に。9位はジョージ・マイケルの「First Love」。ソニー・レコードとの係争で90年代の前半を棒にふってしまった彼を見兼ねて「俺たちが金を出して彼を解放してやろう。」と業界の大物が設立したドリームワークス・レコード(当時本当にそういう噂がありました)と契約し、久々に発表したアルバム「Older」は、久々感もあってなかなかのヒットとなりましたが、アメリカではかつての成功を取り戻すことは出来ず。しばらくすると彼のゲイ騒動もあり、その後はほとんどの活動をイギリスで行うことになります。最後10位はU2の目立たない方の2人による「ミッション:インポッシブル」のテーマ。90年代では非常に貴重なインストヒットの一つでした。
と、いうことで通常はここで1996年の回はおしまいなのですが、今回はあとちょっとあります。この時代あたりからヒット曲をシングルで発売しないケースが顕著となり、ラジオでかかりまくっている曲がHOT100にまったく登場しないという現象が頻発するようになります。参考までにこの週のエアプレイチャートを紹介しておきましょう。
■ HOT100 Airplay June 15, 1996
01 Because You Loved Me - Celine Dion (33/15)
02 Always Be My Baby - Mariah Carey (40/12)
03 Killing Me Softly - Fugees (feat. Lauryn Hill) (35) *
04 Ironic - Alanis Morissette (44/14)
05 Give Me One Reason - Tracy Chapman (39/11)
06 Nobody Knows - The Tony Rich Project (47/27)
07 Missing - Everything But The Girl (46)
08 You Learn - Alanis Morissette (41) *
09 Old Man & Me (When I Get To Heaven) - Hootie & The Blowfish (20)
10 Wonder - Natalie Merchant (40)
曲名の後に括弧書きになっている数字は、この週時点の各曲のチャート滞在週数。スラッシュの後に書かれているのは今回のHOT100のTOP10に登場している曲のHOT100滞在週数です。多くの曲が40週以上エアプレイチャートに居座っているという。いかに当時のラジオが保守的(決まりきったヒット曲しかかけたがらない)になっていたかが窺えます。これは現在もそうかも知れませんが。シングルもラジオで半年以上かけられ続けてようやく発売されるというのは「これだけ時間がたてば、シングルを出してもアルバムセールスの足は引っ張らないだろう」というレコード会社の判断によるものだと思われます。
このチャートの時点でシングルが発売されていないのは3位のフージーズと8位のアラニス・モリセットのみなので、まだHOT100と巷のヒット状況の乖離はそれほど深刻な状態ではないのかも知れません。フージーズの「Killing Me Softly」はいわずと知れたロバータ・フラックのカバーで、この年の代表的なエアプレイヒットの一つ。一方アラニス・モリセットの方はデビューアルバム「Jagged Little Pill」が猛烈に売れていた時期で、当初はシングル発売なしでアルバムセールスを伸ばしていましたが、それが一段落したということなのか、それともテコ入れのためなのかまず「Ironic」をシングルカット(前述)。続いてこの「You Learn」もシングルカットされて最高6位を記録しました。このシングルは最初にラジオで火がつき、その歌詞が大変な話題となった「You Oughta Know」のライブバージョンがカップリング収録されているサービス盤で“アルバム大ヒット御礼”の意味もあったのかも知れません。
(2003.6.17)Flashback Homecopyright (c) 2000-2003 by meantime, all rights reserved. |