「あっ、花火!!」

「そっか。今日、黒美嵯川で花火大会があるんだっけ」

部室から出た瞬間に目に飛び込んできたのは、空に輝く大輪の花。

その迫力と美しさに、思わず皆立ち尽くした。

「そうだ。帰り黒美嵯川に寄っていく? 露店も出てると思うし」

この栗田の提案に、糞チビ二人組が嬉しそうに同意する。

「友達と花火大会に行くなんて、初めてだ……」

「俺、りんごあめ食いてえ!!」

興奮したモン太がつい口走ってしまった食べ物の名前に反応し、今まで部室の

脇で熟睡していたケルベロスが覚醒した。

「リゴオオォォ!!」

「ウキャァァァ!!」

飛びかかってきたケルベロスにケツを噛みつかれそうになり、部室の周囲を走り

回るモン太。

「俺、何も持ってないのに……何で?」

セナが慌てて部室から買い置きのドッグフードを持ってくると、やっとモン太は

ケルベロスから開放された。

「ふう、ひどい目にあったぜ」

額の汗をぬぐいながら、モン太はちらりと横目で骨型ドッグフードにかじりつく

ケルベロスを睨む。

「てめーら、遊んでねーでさっさと帰んぞ」

いつまでたってもちっとも動こうとしない部員達に、苛立ったヒル魔が蹴りを

入れた。

「ったく……」

「まあまあ、楽しくていいじゃん」

まだ怒りの収まらないヒル魔を栗田がなだめる。

賑やかに騒ぎ立てながらも何とか移動を始めた後輩部員達の後から、初代部員

二人組もゆっくりと歩き出した。

「花火すごいね」

「フン。花火なんか、いつも俺が上げてんじゃねーか」

「花火よりも爆弾の数のほうが圧倒的に多いけどね……」

幾度となく爆発の被害に遭ってきた経験を思い出し、苦笑する栗田。

「でもさ、これだけ派手にたくさん上がると、花火も見ごたえあるよね」

「ケッ。俺が今度、こんなもんおもちゃに見えるほど派手なやつ上げてやるさ」

ヒル魔は様々な色で彩られた空を眺めながら、ニヤリと笑った。

「クリスマスボウルのフィールドでな」

「よーし!! てめーら、明日は朝の2時から練習すんぞ!!」

「えー!!!」

いきなりの爆弾発言に、はしゃぐのも忘れてヒル魔を振り向く部員達。

「“えー!!!”じゃねーよ!! 今日の練習の埋め合わせだ!!」

まだ不満そうな表情の部員達に、容赦無く機関銃を向けるヒル魔。

「オラァ、てめーら、とっとと帰って用意しやがれ!!」

「ひいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「お、俺のりんごあめが〜!!」

花火の音に混じって、弾を発射する音と逃げ惑う部員達の悲鳴とが、泥門高校の

校庭に響き渡るのだった。
ー完ー
糞小説トップへ戻る
前へ戻る