宿題一掃作戦(2)


「でもさ、宿題残しちゃうのはまずくない? ホントに居残りになっちゃうよ」

 紅茶をずるずるすすりながら栗田が言った。

「それで練習サボったらただじゃすまさねーぞ」

 少しでも部員を強くすることに並々ならぬ情熱を注いでいるヒル魔だ。貴重な時間

を居残りなんかに費やすのは許せないに違いない。背後に薄気味悪いオーラを

まとわりつかせながらヒル魔はモン太に凄みを利かせた。

「ひいぃ……」

 そのあまりの恐ろしさにモン太だけではなく、何故かセナも悲鳴をあげる。

「私で良ければ勉強見てあげるけど……」

 居残りと部活の板ばさみ状態で、気が狂いそうになっているモン太をみかねた

まもりが、救いの手を差し伸べることにした。

「ほ、ホントですか?」

 さっきとは打って変わって、瞳を輝かせたモン太が頬をバラ色に染め上げて

まもりを拝んだ。

「いや、だめだ! ここで人に頼ったら男がすたる!」

 と、今度は苦悶の表情で自分の頭をポカポカ殴り出すモン太に、またもや部員

全員で、

「じゃあさっきのは……?」

 と、今度は声に出してツッコミを入れた。

「それで……どれだけ残ってるの?」

 そっとセナが聞くと、モン太はぴたりと動きを止めた。次の瞬間、冷や汗を滝の

ようにどっと流し、蚊の鳴くような小さな声で答えた。

「……日誌以外全部」

「え? 何?」

 あまりにも信じられない言葉を聞いたセナがつい問い直す。

「だから、日誌以外全部!!」

「…………」

 開き直ったモン太が大声で宣言した瞬間、部室の空気が凍りついた。

「今日が登校日だから……あと十日ほどしか残ってないよ」

「これから徹夜は確実だね」

 気まずい空気が漂う中、重いため息を一つついたヒル魔が、かったるそうに椅子

から立ち上がった。

「しゃーねーな……。よし、今日は全員で宿題終わらせんぞ」

「えー!!」

 いきなりの信じられない発言に、皆が耳を疑う。

 そして、真っ先に浮かんだ疑問をセナがつい口に出した。

「だって、練習は?」

 これまでの夏休み期間中は、それこそ時間を惜しんで練習に励んでばかりいた。

ましてや、一番練習に熱心だったヒル魔がこんなにあっさり宿題なんかに貴重な

練習時間を割くなんて、どうしても信じられなかったのだ。

 そんな疑問にヒル魔は、

「居残りなんかになっちまったら、その方が時間取られるじゃねーか」

 と答えた。なるほど合理的な考えだ。

「ま、今日はグラウンド使用の日じゃないから、ちょうどいいかもね」

 そう言うと栗田はさっきの驚愕をきれいに消して、さっさと自分の鞄からドリル

を取り出し始めた。

 流石につきあいが長い栗田は、ヒル魔の気まぐれには馴れっこのようだ。

 この様子をまだ信じられないといった様子で立ち尽くしたまま眺めている他の

部員達に、

「オラ、てめーらもさっさと始めねーか!!」

 ブチ切れたヒル魔が散弾銃を連射した。


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