
| パスト・マスターズ・シリーズはシングル盤のA・B面に収められた曲やEP盤に収められた曲、またドイツ語バージョンでレコーディングされた貴重な「抱きしめたい」「シー・ラヴズ・ユー」の2曲を含む編集盤。CD化に伴って企画、発売されたありがたいシリーズだが、オールド・ファンにとっては、ちょっぴり複雑な心境ではなかっただろうか?ビートルズはアルバムとシングルは明確な分離という独自のコンセプトを持っていた唯一のグループであった。アルバムは安易なシングル曲の寄せ集めではなく、いつでも高いトータル性を持っていた。シングルはこんな風に作れば必ずヒットするんだよ!といったポップ性を持たせた。もちろんどちらもクオリティーの高さは言うまでもない。そのためファンは、取り分けコレクターと言われる人たちは、アルバム、シングル、EPとすべて買い揃えなければならなかった。それがこんな形で、簡単に手に入るということで、随分、不満を感じたファンが多数いた事と思う。しかし、その反面CD化以後にファンになった方たちには、ベスト・アルバム的で大変好評だったであろう。 このVOL1にはデビューから’65年のアルバム「HELP!」までの時期のテイクが収録されている。最大の目玉は、冒頭に述べた「抱きしめたい」と「シー・ラヴズ・ユー」のドイツ語バージョン。若き日のビートルズをいち早く認めてくれ、また、鍛え上げてくれたドイツはハンブルク市民へ敬意をこめての録音であったろう。それにしても、驚くのはシングルB面曲のクオリティーの高さである。普通ならあまり重要視しないB面曲であるが、ここに収録されている曲はどうだろう?3、5、7、11、15、16、17,18と、いずれも今やロックのスタンダードと化している名曲ばかりである。並のバンドなら間違いなくA面採用である。また、これらの曲がアルバムに収録されず、シングルを買わないと聞けなかったというのも驚かされる。今から思うと、ブライアン・エプスタインのビジネス・マネージメントも驚くべき手腕だったと言わざると得ない。現在もその手腕はニール・アスピノールにしっかりと受け継がれており、未発表音源や書籍が毎年のように発表されている。ファンとしては、嬉しい反面、出費がかさむ一方である。このページを書いている最中、「LET IT BE NEKED」が11月17日に世界同時発売のビッグ・ニュースが飛び込んできた!さっそく”Amazon”に予約した・・・。 |
| 一人よがりの曲解説 1、Love Me Do 1962年10月5日発売の記念すべきビートルズのデビュー曲。単調なリズムとメロディーの中にも、キラッと光るものがあり、将来性を感じさせる。本作に収録されているのは、シングル盤バージョンでリンゴがドラムを叩いている。加入間もないリンゴは、プロデューサーのジョージ・マーティンのOKが中々得られず、15テイク録音してようやくOKが出た。そんな状況からアルバム・バージョンに比べて多少雑な印象を与える。なお、アルバム「Please Please Me」に収録されているアルバム・バージョンはセッション・ドラマーのアンディー・ホワイトがドラムを叩き、リンゴはタンバリンを担当している。それにしてもポールの声はどうだろう?ガチガチに緊張しているのか、声が震えているのが良くわかる。 2、From Me To You 初のシングルNo1ヒット「Please Please Me」に続く3弾目のシングル。ジョンとポールがニュー・ミュージカル・エキスプレスの読者の投稿コーナー「From Me To Us」にヒントを得て作った曲。お馴染みのイントロなしで、いきなり「ダラララ・・・」で始まるのがすごく印象的。また、この頃、ジョンのハーモニカがいろんな所に挿入されており、それぞれが素晴らしい効果を発揮して、初期のジョンのトレード・マークにもなっている。 3、Thank You Girl 「From Me To You」のB面。並のバンドなら、間違いなくA面に持ってくるであろう佳曲。歌詞を読んでいると、ファンへの感謝を込めた曲だというのが分かる。ジョンとポールの共作。 4、She Loves You ジョンとポールの共作。極め付き、エース級のロックンロール。第4弾のシングルとしてリリースされ、予約だけで50万枚売り上げた。1977年、ポールの「Mull Of Kintyre」に抜かれるまで、イギリスのシングル売り上げNo1を誇っていた。この曲もイントロなしでいきなりクライマックスに達する。ジョージ・マーティンのアイディアらしいが、当時としては画期的、革新的であったろう。”Yeah Yeah Yeah”はビートルズの代名詞とも言えるほど、当時は流行っていた。 5、I`ll Get You この曲もイントロなしで入ってくる、この頃のビートルズの定番バージョン。「She Loves You」のB面だが、”Oh Yeah Oh Yeah”が妙に印象的で無視できないほど好き。この曲を最後にジョンのハーモニカは鳴りをひそめる。すごく良い味を出していたのに・・・。ハーモニカの音って、何となく郷愁を誘うようで好き!!。 6、I Want To Hold Your Hand イギリスではシングル5弾目。予約だけで100万枚突破の大ヒット曲。アメリカ進出あるいは世界制覇を視野に入れて、ジョンとポールが共作した。アメリカでは1964年1月13日に発売され、その直後に初の渡米を果たした事もあり、500万枚という爆発的なヒットを記録した。日本でも、当初の「Please Please Me」からこの曲にデビュー曲が差し替えられるというエピソードがあった。邦題の「抱きしめたい」も「She Loves You」の”Yeah Yeah Yeah”に並ぶビートルズの代名詞となった。もっとも、直訳すれば「手を握りたい」となるのに・・・理解しがたい部分もある。ゴスペルを意識して作られたとも言われているが、ジョンとポールのハーモニーはいかにもビートルズらしくカッコいい、また、手拍子(ハンド・クラッピング)も非常に効果的。 7、This Boy シングル「I Want To Hold Your Hand」のB面。ジョンの作品。隠れた名曲として名高い。とはいっても、ビートルズに隠れた曲なんてあるはずもなく、全てが名曲といっても過言ではない。ハーモニーが印象的で、高音部をポール、中音部をジョージ、低音部をジョンが担当している。3人の息もピッタリのハーモニーは本当に素晴らしい。 8、Komm、 Gib Mir Deine Hand 旧西ドイツのみで発売された、「I Want To Hold Your Hand」のドイツ語バージョン。ドイツのハンブルグは彼らにとって、第2の故郷といっても良く、ドイツ・オデオン・レーベルのために録音された。ハンブルグに対して、一際思い入れがあったのであろう。もちろんドイツでは、このバージョンが1位を記録している。 9、Sie Liebt Dich 同じく旧西ドイツのみで発売された「She Loves You」のドイツ語バージョン。8のB面に収録されていた。1964年1月29日、パリのパテ・マルコニー・スタジオで録音された。 10、Long Tall Sally ご存知!”King Of Rock'N'Roll”(チャック・ベリーとお互い「自分こそ」がと言い合っている!)リトル・リチャードの作品。おそらく日本では、このビートルズ・バージョンの方が有名であろう。ビートルズのカバー曲の中でも、「Twist And Shout」と並んでベストにあげられる。圧倒的迫力のポールのソウルフルなハイトーン・ヴォーカルが素晴らしい!。リンゴのドラムもエキサイティングで素晴らしく、全体をガチっとまとめている。最初のギター・ソロはジョンで2番目がジョージ。デビュー以前からのレパートリーで、初期のコンサートではラストに歌われていた。アルバム「A Hard Day`s Night」の制作時に録音されたが、アルバムには未収録。この曲と「Slow Down」「Match Box」「I Call Your Name」の4曲入りEP盤として発売されたテイク。当時、EP盤はシングル・LPとして頻繁に発売されていたが、全曲、アルバム、シングル発売なしの曲で占められたのはこの曲が入っているものと、「Magical Mystery Tour」のサントラのみ。当時の人気を窺い知るエピーソードの一つとして、このEP盤はシングル・チャートに登場して、7週連続で1位を記録している。そういえば、信じられない事にアルバムもシングル・チャートに登場していたっけ・・・!!!。日本ではシングルとして発売されている。 11、I Call Your Name ジョンの作品。ヴォーカルもジョン。日本では「Long Tall Sally」のB面として収録されている。ジョンのもの憂げながらも力強いヴォーカルがすごく好き。ポールのハイトーンに疲れたら、いつもこの曲を聞いていた。もともとは、ビリー・J・クレイマー&ダコタスに提供した曲で、一部書き直し録音したセルフ・カバー。ママス&パパスのカバーも有名。 12、Slow Down オリジナルはラリー・ウィリアムズ。1958年にシングル「Dizzy Miss Lizzy」のB面に収録されていた。ジョンはラリーがお気に入りらしく、2曲ともカバーしている。ジョンは非常にラフに歌っているが、ロックンロールはこれくらいラフなのが丁度良い。中間部に入る「ブルルルルル・・!?」がなんともカッコイイ!! 13、Matchboox ビートルズ以前のロックンロール創世記に活躍していたカール・パーキンスの作品。デビュー以前はピート・ベストの持ち歌だったがリンゴに歌い継がれていった。ビートルズにとって、デビュー以前からの重要なレパートリー。 14、I Feel Fine 1964年11月27日発売で8枚目のシングル。イギリスでは予約だけで75万枚突破し、6週連続No1。ビートルズがコンサート活動を停止し、スタジオに籠もり豊富なアイディアとテクニックを駆使して、画期的、革新的なサウンドを次々に生み出していったのはご存知の通り。しかし彼ら特有の遊び心を随所に散りばめられていったのも事実である。この曲のイントロの聞かれる「グァ〜ン」も偶然から生まれたものをジョンが気に入り、そのまま録音時に取り入れたもの。こんなところにも彼らの天才性を感じる。この音が後に流行した”フィード・バック”の元祖とも言われている。しかし、今改めて聞いてみると、この音、実は計算されつくして挿入されたのではないか?と思われて仕方がない。イントロのギターはジョン。アコースティック・ギターをアンプに繋いで録音したもの、中間部のギターはジョージ。この曲、当時発売された時には、これまでのどの曲とも違う印象を受けたのを覚えている。あらゆるジャンルの要素が少しずつ、散りばめられているようであり、その後の作風の変化を示唆しているターニング・ポイントになる曲でもある。 15、She`s A Woman ポールの作品。「I Feel Fine」のB面に収録されていた。ポールには珍しくR&Bのナンバー。ライヴの定番で、ポールのお気に入りの1曲。リズムは単調だが、ポールの熱唱が光る。全体を引っ張るジョンの強力なコード・カッティングが印象的。 16、Bad Boy ジョンお気に入りのラリー・ウィリアムズの作品。アルバム「HELP!」の時に録音されたが、結局ボツになってしまった。1966年発売のベスト・アルバム「Oldies」に収録された。聞き物は何といってもジョンのドスの効いたヴォーカル!!この曲を聞いていると、ジョンのラリー狂いが分かる!本当に上手い!!「Now Junior Behave Yourself」の件には思わず「マイッタ!」と言ってしまうほどカッコイイ!! 17、Yes It Is ジョンの作品。シングル「Ticket To Ride」のB面に収録された。コーラス・ワークは一層複雑になり、彼らの成長の一旦を窺わせる1曲。もはや完全に一介のアイドル・グループから脱しきっており、人々は次なるビートル・マジックに益々期待を膨らませて行くようになる。ポールが高音部、ジョージが中音部、ジョンが低音部を担当している。ジョージのヴォリューム・ペダルも印象的。 18、I`m Down ポールの作品。それまでのコンサートでのラスト・ナンバー「Long Tall Sally」に変わるものとして書いたと言われている。シングル「Help」のB面に収録された。極め付きのロック・ナンバーでポールのヴォーカルはまるでヘヴィー・メタルを思わす様なド迫力。信じられない事にこの曲は名曲「Yesterday」と同じ日に録音されている。本当にポールには驚かされる。こんな素晴らしい曲をシングルのB面に持ってくる事にも驚かされるが、驚きついでにもう一つ!!この曲はその後のコンサートではラストを飾っていくのであるが、世界広とは言えラストにB面の曲を持ってくるのはビートルズぐらいではないか・・・? |