RUBBER SOUL
 1、 Drive My Car
 2、 Norwegian Wood
 3、 You Won`T See Me
 4、 Nowhere Man
 5、 Think For Yourself
 6、 The Word
 7、 Michelle
 8、 What Goes On
 9、 Girl 
10、 I`m Looking Throgh You
11、 In My Life 
12、 Wait 
13、 If Needed Someone 
14、 Run For Your Life
 1965年12月3日(英国)リリースの6thアルバム。アイドルの殻を脱ぎ捨て、内省期に入ったビートルズの大きな転換期を示す重要な作品。デヴュー以来たて続けにヒット曲を発表し、すさまじいとしか形容できない疾走を続けてきたビートルズが、自分達の創作活動を見つめ直し、新たな取り組み方をし始めたのがこのアルバムからである。'65年のビートルズは相次ぐ大ヒット、アメリカン・ツアー、そして初の本格的主演映画の大成功により、名実ともに世界一の人気グループに上り詰めた。人々は[HELP!」におけるジョンの叫びが本音とも知らず、永遠にヒット曲を出し続け、雑誌やテレビでニッコリ笑って愛敬を振りまく永遠のアイドルであるはずだと信じていた。しかし猛烈な勢いで進化し成長を遂げる4人は、そんなファンの思いとは関係なく自分達の行動範囲と周囲の拡大に突き進み始める。そういう変化の時代が’65年という年であり、このアルバムなのである。
 レコーディングは'65年10月12日から11月11日までEMIのアビー・ロード・スタジオで行われた。同年8月のアメリカ・ツアーを終えたビートルズはその年の秋、デビュー以来初めてと言っていい休暇を楽しんだが、それもつかの間、クリスマス・シーズンに向けてのニュー・アルバムのリリースが待ち受けていた。さらに12月には、そのアルバムのプロモートを兼ねたイギリス・ツアーが組まれていた。この時期、ビートルズのメンバーは新曲のストックがほとんどない状態でレコーディングに臨んだと言われている。そうした、恐るべきプレッシャーの中で制作されたこのアルバムが、その後のポップ・シーンを変革し、結果としてロック・アルバムの概念をいち早く示したことは、まさに驚異としか言いようがない。しかもこのセッションの間にシングル「We Can Walk It Out」「Day Tripper」をリリースし、大ヒットさせている。彼らにとっては、プレッシャーさえも自らの創造力に昇華させる力があったのだろう。
 サウンド的には、前作「HELP!」の延長線上にあると思われる楽曲も見られる。「Wait」は「HELP!」のためのセッションでレコーディングされたもので、このアルバムへの収録曲が不足したため、元のテープにいくつかのオーバー・ダビングやパートの差し替えを行ったと言われる。しかしビートルズならではと思われる斬新なアイディアも随所に見られる。もちろん時代の後押しも見逃してはならない。4チャンネルを皮切りにドンドン発展していく録音機材がバンドと周辺の人々を刺激して、積極的に取り入れていく。その貪欲な姿勢が向上心という形で発展し、アルバムのクオリティーをますます高めて行く。個々のメンバーの変化も激しく、ジョンはアイドル的活動の反復に、激しいフラストレーションを抱き、それが具体的に歌詞の変化となって現れてきた。ポールは「Yesturday」での大成功が自信となり、ソング・ライティングはもちろんの事、アレンジやプロデュース的な面での成長が著しく、その後のグループのリーダー的立場へと足元を固めていく。ジョージはこのアルバムからフェンダーのストラトキャスターを使用するようになり、新しいサウンド作りに多いに貢献している。また曲作りでは、アメリカ・ツアー中にレコーディング中の”BYRDS”のもとへ訪れた事で、フォーク・ロックの影響を多分に受けて行くようになった。
 この「RUBBER SOUL」を過渡期のアルバムと見なす人がいるが、ビートルズがこのアルバムで見せた変化は、ロック界に大きな衝撃を与えた。ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンはこのアルバムに触発されて名作「PET・SOUND」を制作し、キンクスやホリーズもこのアルバムに影響を受けたと思われる作品を順次発表していく事になる。また、ローリング・ストーンズには類似のアルバムは見受けられないが、ミック・ジャガーのビートルズ・コンプレックスは益々高まっていく事になった。「HELP!」からわずか4ヶ月足らずで、この変革がもたらされて事は、まだまだビートルズの創造力が失われていないことを物語っている。
一人よがりの曲解説

 1、Drive My Car
  ポールの作品。オープニングから、これまでの作品と随分印象の異なる曲調に驚かされる。ポールのキャッチーでぶんぶん唸るベース・ラインがこの曲の最大の魅力。更にポールのハイトーンの熱いヴォーカル、絶妙のタイミングで絡んでくるピアノ、さりげなく織り込まれたタンバリンとカウベル、そして「ビビ、ビビ、イエ〜」のコーラスと一分の隙もなく素晴らしい。この曲、当初ジョンが作詞、ポールが作曲という形で始まったが、ポールはジョンの作詞が気に入らず全て書き直して完成させた。しばらく二人の間に険悪な空気が流れたが、ジョンがポールの詩に納得し、大きな対立にはならなかったというエピソードがある。

 2、Norwegian Wood(This Bird Has Flown)(ノルウェーの森)
  ジョン作のチョッピリインド風味が漂うアコースティックなフォーク・ナンバー。ジョージの弾くシタールの影響がそう思わせるのだろう。ジョージが買ったのを見て、ジョンがぜひ入れてみようと言ったらしいが、それがピッタリはまってしまうのが如何にもビートルズらしい。タイトルからいって、童話風あるいはノルウェーへ行った時の印象などを歌っているものと幼心に思っていたのだが、実はジョンが後年語ったところによると、妻シンシアの目を盗んで働いた”不倫”がテーマの曲だと言う。この頃から、ジョンの書く歌詞は難解で意味深な作品が多くなっていくが、そのことに対してファンが勝手に拡大解釈し、いろんなものにこじつけようとする。この曲も、発表当時「ドラッグを連想させるもの」という憶測がまことしやかに流れていた。

 3、You Won`T See Me
  ポールの作品。アルバム全体にグルーヴ感を与えているポールのベース・ギターがここでも存分に発揮されている。このベースのドライヴ感を中心にタンバリン、シンバルでのアクセントがつくなどして、素晴らしい仕上がりになっている。また、ポールの一人二重唱も巧みだ。

 4、Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)
  ジョンの作品。冷たい雨の降る日、一人寂しく部屋に閉じこもって哀愁漂うこのメロディーを聴くのが大好き。基本的にシンプルなポップ・ソングなのだが、アレンジに大胆なアイディアが見られる。メロディーだけを聴けば、明るいメジャー・キーの曲調だが、ジョンの自分自身を批判している内向的な詞は結構暗い。この明るさと暗さの絶妙なバランスがこの曲の最大の魅力になっている。そしてジョンのちょっと遅れ気味のヴォーカルとそれに絡むポールとジョージのコーラスが絶品とも言える。もう一つの特徴は、ポールのメロディアスで音数の多いベース。このリズムにこれだけよく動くベースはやはり斬新なアイディアと言える。間奏部分の高音を強調したギター・ソロも実に気持ちが良い。この曲はステージでもよく演奏されたのだが、コーラスに随分と苦労していたようだ。

 5、Think For Yourself(嘘つき女)
  ジョージの作品。詞は「政治家を皮肉ったもの」とジョージは語っている。この邦題はいったいなんぞや?イントロに入っている歪んだ音はポールがベースにギター用のファズをつけて弾いたもの。

 6、The Word(愛のことば)
  ジョンとポールの共作。しかしジョン主導で作られたのは間違いないと思う。最初はなんの変哲もない曲に思われるが、聴けば聴くほど味わいが増す曲である。ギターやマラカスのリズムが妙に心地良かったり、ポールの弾くベースが非常にメロディアスであったりと・・・。普遍的な愛について歌った歌詞に、非常に強いメッセージ性を感じる。

 7、Michelle
  日本でも人気の高いポールの書いたバラードの名曲。歌詞の一部にフランス語が挿入されている。この部分は、ポールの親友アイバーン・ボーンのフランス人妻によるもの。”I Love You・・・”のリフレインのパートはジョンのアイディアによるものとされている。こうした天才的なひらめきは数多くの楽曲で披露されている。ジョージ・マーティンの講演を聞いた事があるが、「ビートルズとの仕事は何が起こるか分からない未知の宇宙みたいなもので、本当に楽しかった」と語っていた。この曲は1966年度グラミー賞の最優秀作曲賞に輝いている。

 8、What Goes On(消えた恋)
  レノン=マッカートニー=スターキーの作品。と言う事で作者クレジットに初めてリンゴの名前が刻まれた記念すべき曲。歌詞の一部をリンゴが書き足したらしい。リンゴの大好きなシンプルなカントリー調の曲でヴォーカルもリンゴが担当している。ジョージのちょっと引っかかり気味で泥臭いトーンのチェット・アトキンス風ギターが程よいカントリー調を醸し出している。

 9、Girl
  ジョンの書いたラヴ・バラードの名曲。この当時のジョンのひらめきはまさしく天才的で、この曲もレコーディングの土壇場の真夜中にやっつけ仕事気味に仕上げたものと言われている。ミドルの部分で突然”tit tit”というのはオッパイの意味で、このあたりも真夜中のノリで思いついたものだろうが、まったく違和感を感じさせないところは流石としか言いようがない。男が離れられなくなるようなクールな女性について歌ったものらしが、それが結局ヨーコの事だったと後に語っている。

10、I`m Looking Through You(君はいずこへ)
  ポールの作品。当時のガール・フレンドだった女優のジェーン・アッシャーに当てつけに書いたもの。互いにハードなスケジュールのため、すれ違いの生活が続いていた。そのため口論が絶えなかったと言われている。この曲を書いたのも口論直後だったらしい。”THE BYRDS”っぽいフォーク・ロック風のハーモニーと、最後にポールならではのシャウトが飛び出す。アルバムの中では地味な存在だが、変幻自在な曲調がすごく楽しめる小品に仕上がっている。

11、In My Life
  ジョンも認める最高に美しい名曲中の名曲。故郷への想い、恋人への想いなどをつずった、素晴らしい詞と相まってこの曲をフェイバリット・ソングに挙げるファンは多い。ピアノの音色が印象的な間奏は「エリザベス朝風のピアノを弾いて欲しい」というジョンの要望に応えてジョージ・マーティンが弾いたもの。しかし流石のマーティンもこの曲のテンポでは弾きこなせなく大変苦労したらしい。そのため、ゆっくりとしたテンポで録音し、テープを早回ししてダビングしたと言われている。仕上がりは、お聴きの通り非常に完成度の高い作品になっている。ジョンが認めるまでもなく、心洗われるメロディーはいつ聴いても素晴らしい。

12、Wait
  ジョンとポールの共作。前作「HELP!」でレコーディングされたがボツになった。冒頭でも述べたが、このアルバムのセッションで楽曲数が足りなくなったため、急遽オーバー・ダビングして収録された。アルバムの中で最も色濃く初期の「リヴァプール・サウンド」の雰囲気を残している曲。

13、If I Needed Someone(恋をするなら)
  ジョージの作品。12弦ギターを効果的に使った”THE BYRDS」風のフォーク・ロック。ビートルズに触発され結成された「THE BYRDS」に今度はビートルズが影響を受けた。良いものは素直に認め合い、更に切磋琢磨してお互いに成長していく!素晴らしい話だと思う。ジョージが自信を持って送り出した曲で、ビートルズの伝説の日本公演やジョージ&エリック・クラプトンのコンサートでも演奏された。

12、Run For Your Life(浮気娘)
  ジョンの作品。エルヴィス・プレスリーの「Baby Let`s Play House」を意識して書かれたロック・ナンバー。ジョンの軽快なアコースティック・ギターとジョージのストラトキャスターらしいギター・ソロが印象的