
| 20世紀最大のロック・バンド「ザ・ビートルズ」のラスト・レコーディング・アルバム。リリースは「LET IT BE」と前後するが、レコーディングはこちらが後のため、事実上こちらがラスト・アルバムと考えて間違いないであろう。もう一度ビートルズを立て直そう、原点に戻ってやり直そうとして行われた’69年1月の”GET BACK”セッションも、ポール主導に対する不満やスタジオの不備などが重なったりして、かえってメンバー間の関係を悪化させるという最悪の結果となってしまう。 しかし、どうしてももう一度セッションを行って完璧なアルバムを完成させたかったポールは、他のメンバーやジョージ・マーティンに呼びかけ、遂にレコーディングにこぎ着けた。こうして再び4人揃ってスタジオに入り、完成させたのが本作である。 ジョンは解散後「どうせビートルズが再結成されたところで”アビー・ロード”みたいなアルバムしか作れやしない」と語ったことがある。はたしてそうだろうか?アルバムを評価しての事なのか、完成までのプロセスを言っているのか定かではないが・・・確かに映画「LET IT BE」なんかを観ると、実にいいかげんにやっている。よくあれでアルバムが出来るものだと、見ているこっちがハラハラドキドキしてしまう。またジョンのやる気のない態度をみているとすごく悲しくなってしまう。そうはいっても、本作をビートルズの最高傑作に推す声は多い。かくいう私もその一人である。本来ビートルズのアルバムに順位をつけるのは愚事とは思うが、どうしてもと言われれば本作を推すであろう。このアルバムにはグループとしての緊張感がある。全部で17曲の比較的短い曲が見事な構成を持って、たたみかけるように演奏される。特にF(アナログではこの曲からB面)からの、メドレー風に繰り広げられる部分は見事としか言いようがない!特に重要なコンセプトは持たないが、一曲一曲の持つメロディーの美しさ、プレイヤーの卓越した演奏テクニック、それに伴うギター・フィルの素晴らしさ(ジミー・ペイジがロックの教科書みたいなアルバムと評したことがある)そしてハーモニーの素晴らしさ、どこから見ても、聞いても文句のつけようがない。このアルバムがロック界に与えた影響は計り知れなく大きく、アルバムの構成、演奏、だけに留まらず、ジャケットも卓越で、幾多の模倣ジャケットが出た事か・・・。また、裸足で歩くポールの死亡説や最近になってタバコを持って歩くポールに対して、禁煙団体から槍玉に挙がるなど(実際、ポスターからタバコが削除されるらしい・・・?)ビートルズの影響力の大きさに、今更ながら驚くばかりである。 メンバー同士の意思統一もままならず、バラバラにスタジオに入り、自分のパートだけをレコーディングして去って行く、あとはプロデューサーやエンジニアにおまかせ、そんな状況にもかかわらず20世紀最高の傑作を作り上げたビートルズ・・・・まだまだ十二分の余力を残したままの解散であった。 |
| 一人よがりの曲解説 1、Come Together ジョンの作品。チャック・ベリーの「You Can`t Catch Me」をパクったといわれるナンバー。(後にC・ベリーの著作権管理者に訴えられて裁判ざたになった。ジョンが自身のアルバム「ROCK`N ROLL」で「You Can`t Catch Me」をカバーするのを条件に一件落着!)非常にファンキーかつブルージーなナンバー!ジョンのヴォーカルもすごくカッコよく冴えわたる。ポールのベースも大変歌っており、曲全体に強烈なインパクトを与えている。ジョンのお気に入りのナンバーの様で、後のコンサートでは何度か取り上げられている。 2、Something ジョージの作品にして彼の最高傑作。「Come Together」との両A面とはいえ、初めてジョージの作品がシングル・カットされた。数多くのカバーが発表されているが、ジョージはとりわけ、フランク・シナトラやシャーリー・バッシーに取り上げられた事を喜んでいたらしい。バラードの名曲であるが、中間部におけるジョージのリード・ギターが素晴らしく、エリック・クラプトンに絶賛された名演でもある。 3、Maxwell`s Silver Hummer ポールの作品。いかにも彼らしいポップなナンバー。”GET BACK”セッションで初めてレコーディングされ、その後、何回か録り直しがされた。ポールがピアノとリード・ギターを担当している。ポップなナンバーとは裏腹に”殺人者マックスウェル”を歌っている。 4、Oh! Darling ポールの作品。ソウルフルなポールのヴォーカルが非常にカッコいい!日本ではこの曲がすごく人気があり、TVの歌番組でよく歌われていた事が思い出される。イントロのフレーズがよくパクられていた事も・・・?でも、これって要するにキメフレってやつ? 5、Octpus`s Garden リンゴの作品。ジョージがほんの少し手伝っている。リンゴの人柄をそのまま表したような、明るくポップな作品。でも「海の底のタコさんの庭でひっそり暮らしたい、地上での僕らの暮らしはゴタゴタ続きだから・・・」は当時の彼らの状況を示すようで悲しくなってくる。 6、I Want You (She`s So Heavy) ジョンの作品。シンプルな歌詞に非常にヘヴィーなサウンドが絡まる。この作風は後のジョンのソロ・アルバム「JOHN LENNON/PLASTIC ONO BAND」へと引き継がれていく。 7、Here Comes The Sun ジョージの作品。美しい美しいメロディーを持つ彼の代表作のひとつ。親友、エリック・クラプトン邸の庭で寛いでいた時に作られたナンバー。アコースティック・ギター、シンセはいずれもジョージが担当。コーラスと手拍子は他のメンバーが担当しているが、ジョンはこの時、交通事故で入院していたため、彼のパートはあとでオーヴァー・ダブされた。 8、Because ジョンの作品。ヨーコの弾くベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」を聴いたジョンが、それを逆に弾いてもらって、そのフレーズを曲にしたといわれる曲。やっぱり天才はやる事が違う・・・。シンセサイザーが全面にフューチャーされている。弾いているのは、ジョージ。コーラスはジョン、ポール、ジョージの3人。非常に複雑なコーラスで再現は不可能といわれている。 9、You Never Give Me Your Money ポールの作品。ここから、このアルバムのハイライトであるメドレーへと向かう。「あれだけあった金は、どこへ行った?金が出て行くばかりじゃないか・・・」とポールが暗にアップルの財政難を批判しているナンバー。ポールが書いた曲の何曲かを1曲にまとめあげた曲でもある。彼お得意の手法・・?リード・ギターとピアノはポール。中間部のホンキー・トンク・ピアノはジョージ・マーティンが担当。 10、Sun King ジョンの作品。スペイン民謡「ロス・パラノイアス」にインスパイアされて書いた曲。途中に怪しげなスペイン語が出てくる。これは、ジョンがスペイン語やポルトガル語の単語を適当に並べたものだといわれている。一説には、この曲、当時大ヒットしていた、フリートウッド・マックの「アルバトロス」を皮肉ってジョンが書いたともいわれている。いずれにしても、短いが美しいスロー・バラード。 11、Mean Mr Masterd ジョンの作品。ジョンが'68年のインド滞在中に冗談半分に書いた曲。公園で寝起きしている、「ミーン・ミスター・マスタード」さんのお話。ジョンがピアノを弾いている。 12、Polythene Pam 再びジョンの作品。これもインドで書いた曲。スピード感あふれるハードなナンバー。ジョージの弾く、力強いアコースティック・ギターとジョンのリード・ギターが絶妙に絡み合う。いよいよアルバムのクライマックスへと導かれて行く・・・ 13、She Came In Through The Bathroom Window ポールの作品。最初のメドレーの最後の曲。難解な歌詞のため、多くの憶測を呼んだ。「窓から入ってきた女」は当初ジョンとポールの間に紛れ込んできた例の女の事では?といわれていたが、ジョンにすれば、リンダの事らしい・・・?真相はポール邸の風呂場の窓から忍び込んだ1ファンの女の事だそうだ。 ジョー・コッカーのカバー・バージョンも秀逸。「ビートルズに曲の提供を依頼したら、この曲を薦められた、ビートルズに歌ってくれって頼まれたんだぜ!あのビートルズに・・・!」とはジョー・コッカーの弁。 14、Golden Slambers ポールの作品。原曲は16世紀にトーマス・デッカーという人が作った曲「Golden Slumbers Kiss Your Eyes」。ポールが義妹のルースに見せられたこの曲に新たな歌詞に加え、異なったメロディーを付け加えて仕上げた曲。ポールのピアノとマーティンのストリングスが織り成す美しいナンバー。トラッシュというバンドがカバーしている。 15、Carry That Weight ポールの作品。メンバー全員で歌っている。「You Never・・・・」のフレーズが出てくるが、ここでは、ポール、ジョン、ジョージのコーラス。「君は重荷を背負って生きて行くんだ・・・これからの人生、すべてにおいて・・・」ポールが他のメンバー、または自分自身に叫んでいるように聞こえる・・・・。 16、The End ポールの作品。もう誰の作品でもいい・・・本当にこれで終わりなんだ・・・終わりがなんでこんなに激しいんだ・・・ 14、15、16は1969年7月30日にレコーディングされたもの。これが本当に4人揃ってのビートルズ最後のレコーディング。最後の力を振り絞ってこれが出来たの・・・?最初の短いギターはポール、その後リンゴの迫力満点のドラム・ソロが続く、ジョン、ポール、ジョージのコーラスが入り、続いてポール、ジョージ、ジョンの順にアドリブのギター・ソロが繰り広げられるポールとジョージのソロは聞き分けが難しいが、最後の激しくかき鳴らすようなギターはジョンだとすぐにわかる。これが3回繰り返され、圧倒的迫力で展開されたメドレーは、印象的な歌詞で大フィナーレを迎える。 17、Her Majesty 涙ながらに聴き終えた感動作も終わりかなと思っていたら、突然、始まるポール作の小品。ポールの弾き語りで「女王陛下は美しい、でもシラフでは口説けない」とロイヤル・ファミリーを痛烈に皮肉った曲。 エリザベス女王戴冠50周年記念コンサートで大トリを勤めたポールが「やっぱり女王陛下の御前では、この曲から」と言って、歌いだしたのが本作。エリザベス女王が品のある笑顔を隠し、しかめっ面で聞いていたのが、印象的だった。 |