「私はとてもナチュラルな人間。誰かの真似をしようとは思わない」
スウェーデンのアーティストといえば、ACE OF BASEやThe Cardigans、懐かしいところではABBAなどが思い出されるだろう。しかし、こうしたスウェディシュ・ポップばかりがスウェーデンのミュージック・シーンを独占しているわけではない。彼らとは少し趣の違う新人アーティストが、今年デビューを果たした。それが、本格的R&Bボーカリスト、イーサ(ISA)である。まだあどけなさの残る表情からは想像もできない歌唱力と表現力。そこから感じ取れるのは、紛れもなく熱いソウルだ。インタビュー時には、まっすぐな青い瞳を輝かせながらこちらの質問に丁寧に答えてくれた。
…21歳という若さでこれほど深みのあるR&Bを歌い上げることができるのは、やはり幼いからの音楽体験が影響してるのでしょうか?
「そうですね、私の父がミュージシャンで、子供の頃から常に音楽が周りにある環境で育ったからかもしれません。彼の聴いていた音楽というのは、'70年代のソウル・ミュージックやファンクが多かったんです。スティービー・ワンダーやマーヴィング・ゲイ、アースウィンド・ファイアー…。生活の中で、常にそうした音楽がありましたね。父はピアノを弾いていて、私自身も10歳からレッスンを受けましたし、16歳の頃には歌のレッスンも受けていました。」
…常に音のある環境だったんですね。ISA自身が一番はじめに音楽に目覚めたきっかけは?
「7歳のときにホイットニー・ヒューストンの歌をはじめてラジオで聴いたんです。すごく惹かれて、はじめて自分でアルバムを買おうと思いました。今まで聴いてきた曲の中で最高だと感じたんです。彼女は私にとって今でもビッグ・スター。当時はよく鏡の前で彼女の真似をしたりしていました(笑)。感情的に惹かれるもののあった最初のアーティストです」
…7歳で音楽の素晴らしさを知るなんて、早熟な感じがしますが。
「そうですか?本当に赤ん坊の頃から音楽が常にかかっているという家だったので、自分では特に早いという感じはありませんでしたけど…。すごく自然な流れだったと思います。」 
・・・では、自分自身でも歌ってみたいと思ったのはいつ頃ですか?
「10歳のときからピアノを弾きながら歌っていました。でも、歌よりもピアノ演奏の方に自信があったので、どちらかと言えばピアノがまずあって、それに歌をつけくわえるという感じ。とても恥ずかしがり屋でシャイな子供だったので、なかなか他人の前で歌うってできなかったんです。初めて人前で歌ったのは、14歳のとき。学校の同級生の前でパフォーマンスをして、”声がいい”って褒められたんですよ。それで、もしかして才能あるのかな?ってうれしくなったんです」
・・・それは友達同士で遊んでいるとき?
「いえ、毎週月曜に朝礼があって、それがつまらなくて生徒がなかなか集まらないので、必ず生徒が何かパフォーマンスをするのが恒例になっていました。で、校長先生にそこで歌ってくれないかって頼まれたのが、きっかけなんです」
・・・じゃあ、校長先生がいなかったら、今のイーサはなかったかも・・・?
「そうかもしれない(笑)。きっと音楽の授業か何かを校長先生が見て、私にパフォーマンスをしてって言ってきたんだと思うんですけど」
・・・16歳の時に、あるオーデションで注目されたということですが・・・。
「オーデションではなく、ヨーロピアン・ソング・コンテストという大きな大会のスウェーデン大会に出演したんです。1位になるとスウェーデン代表としてヨーロッパ大会に行けるんですけど、私は残念ながら3位。でも、年齢が若かったこともあり、注目を浴びたんです」
・・・そのころに歌っていた曲も、やはり今のようなR&Bですか?
「当時はやはりホイットニー・ヒューストンが私の中でビッグな存在だったので、彼女の歌が多かったですね。後はジャズとかスティービー・ワンダーなんかも歌っていました」
・・・周りの友達は?共通の音楽の趣味を持っていた人はいたんですか?
「友達はみんなスウィディッシュ・ポップを聴いていましたね。だから私はちょっと浮いちゃってたかも(笑)」
・・・でも、皆と同じようにスウィディッシュ・ポップを聴こうとは思わなかったんですね。
「子供の頃からいろんな音楽の知識があったので、みんなに合わせることはありませんでした。自分が惹きつけられる感情に忠実にしたがって音楽を聴いていましたね」
・・・高校を卒業した後、2年間学校に通って音楽の勉強をされていたということですが、どういった学校ですか?
「フリードへム・カレッジと呼ばれるところで、私が通っていたのはジャズとソウルの学校です。そこでは音楽全般に関する知識を学びました。歴史とか、ピアノ、ボーカル、アンサンブル、そしてステージでのパフォーマンス・・・。かなり細かいところまでいろいろ勉強しました」
・・・内容の濃い、充実した二年間だったようですね。
「そうだと思います。その2年間の経験を通じて、今の自分の土台となるものができた気がしますね。その経験がベースにあるからこそ、ボーカリストとしての自身も生まれたと思います」
・・・そしてデビューに至った、と。
「3年前くらいにウルフ・リンドストロームとヨハン・エキエという2人のプロデューサーに出会ったのがデビューのきっかけになりました。そこからデモ・テープを作ったりして、デビューは今から約1年半ほど前ですね」
・・・ファースト・アルバム『Pretender』では、いろんな恋愛の形が描かれていますね。
「どんなタイプの曲でも、その世界に入りこんで歌うように心がけています。そうしないとリスナーを引き込むことはできないと思いますし。このアルバムに収録されている曲はすべて愛について歌っているんですが、愛っていろんな側面を持っているものですよね?人は皆いろんな愛を通していい経験も悪い経験もしていく・・・。そうした愛のさまざまな側面を表現するように歌ったつもりです」
・・・とてもハッピーな感じの曲もあれば、7曲目の『Stay』のようにしっとりとしたバラードもあって。自分としては、どちらの方が好きですか?
「『Stay』はとても技術のいる難しい歌だったんですが、こういう感情を込めた歌というのはリスナーにも届きやすいと思います。ハッピーなだけの曲よりも、こうした感じの曲の方が好きですね。10曲目の『By The Way』なんかも、シンプルでナチュラルな歌で気に入っています。この歌詞に描かれているような恋って、普通はあまり経験することがないものだと思うんですが、歌うのはおもしろいですね」
・・・経験したことのないような内容の方が、歌っていておもしろいということ・・・?
「今までにも経験したことのない世界を描いた歌はありましたが、それを歌うのがボーカリストの役割だと思うんです。経験がなくても感情移入して、演劇のように歌に入りこめるものです。逆に経験したことのある情景を歌う方が難しいかもしれないですね。まるで自分をさらけ出しているような気分で(笑)」
・・・R&Bも時代によって変化を遂げてきたと思うのですが、たとえば、最近ならTLCやブランディなどが人気がありますよね。
「私にとってはつまらない(笑)。昔はもっとメロディーラインが重視されてたと思うんですよね。今はいろいろな音楽が出回って、メロディーが軽視されているような気がします。うちこみ中心だったりして、ちょっと・・・退屈ですね」
・・・メロディーに対するこだわりは、アルバムを聴いてもよくわかりました。やはり自分がボーカリストであるという誇りでしょうか?
「そうですね。自分がボーカリストであるというのはもちろんですし、それに幼い頃から聴いていた音楽の影響は大きいと思います」
・・・どうしてそれほどまで確固たる自分が持てるのでしょう?一般の21歳の女の子たちは、もっと迷いがあるような気がするのですが・・・。
「私も確かに迷ったりすることはあります。でも、自分のやっている音楽に自信がありますから・・・。ルックスやイメージにこだわるのって、贅沢な悩みですよね。世の中には飢えで死んでいく人もたくさんいるのに、体重を気にしてダイエットに励んだりして。そういう人って、結局は寂しい人なんだなあと思います。ダイエットなんかに向けるエネルギーがあれば、もっと他のことに使えばいいのに」
・・・イーサ自身は、いちボーカルとしてポリシーを持って歩んでいく、と?
「そうありたいと思っています。今後もメロディー主体のスタイルでいくとは思いますけど、もっとベーシックなものもやっていきたいですね。生の楽器をもっと取り入れて、いずれはジャズもやってみたい。ダンスミュージックは、頭が痛くなっちゃうからやらないと思います(笑)。私はとてもナチュラルな人間なので、常に自分の個性を大事にしていきたいと思っています。誰かの真似をしたりはしたくないですね。そうすることが、自分自身に満足できることにも繋がっていくと思うんです」

情報提供:Namiさん


さらにこのFree PaperにはisaのPhotoが4枚ほどのっています。