シャチ集団死

北海道羅臼町の海岸で先月7日、12頭のシャチが流氷に閉じ込められ、9頭の死が確認された。
メス1頭は自力で脱出し、残る2頭の生死は未確認だ。シャチに何が起きたのか。
原因は特定できないが、生まれたばかりの3頭をかばおうとしたとの見方もある。
国立科学博物館(東京都)などによる解剖で、オス1頭を含む成獣6頭の胃からアザラシ類の骨、
生後間もないオス1頭、メス2頭の子のうち2頭からミルクが検出された。直前まで、アザラシなどを襲い、授乳していたことになる。
健康な群れが流氷に囲まれたのは、なぜか。前日6日夜は、北寄りの風が吹き荒れていた。
流氷の帯が、風と波とうねりで浅瀬に追いやったのか。
遠洋水産研究所(静岡市)の加藤秀弘・鯨類生態研究室長は
「優れた危険回避能力を持つシャチだが、予想を上回る氷の変化があったのかもしれない」と推測する。
群れの特殊性を原因とする声もある。
シャチの出産は4〜6年おき。十数頭の群れで、生まれて間もない子を3頭も抱えるのは珍しい。
成獣なら最高時速50キロで流氷を避けられても、子の泳ぐ速度は劣る。
北海道室蘭市でクジラ・ウオッチング船に乗る自然観察員、笹森琴絵さん(41)は
「新生児3頭を抱え、押し寄せる流氷から逃げ切れなかったのかも」と推測。
解剖した東京大海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの天野雅男助手(鯨類生物学)は「高度な社会性を持つシャチだけに、
1〜2頭が弱った場合、置き去りにせず、群れ全体が犠牲になることは十分ある」と指摘する。
シャチの引き揚げ作業のため海中に潜った水中カメラマン、関勝則さん(50)は「一番大きなメスの腹の下に子がいた。
メスは子を抱えるように死んでいた。子を守ろうという意志のようなものを感じた」と証言する。
生まれたばかりの3頭を守ろうとしたのだ。