そのころ僕は、彼女のことを「高橋さん」と呼んでいた。メールの中でも、BBSの書き込みの中でも。
確かに、名前で呼ぶのは照れ臭いという面もあった。前に話した「チャットパーティー」の中で、その一度だけ「>美佳子」と書き込んだことがあったのだが、もう僕はそれだけで照れてしまってどうにもならなかった。が、それはともかく。
「高橋さん」と呼んだ理由にはもうひとつあって、それは意外かもしれないが、彼女の存在をより身近なものとしてとらえていたからなのだ。僕にとって彼女は、テレビの中の正体のわからない作り物ではなく、そこに厳然と存在し、息づいているひとりの人間なのだ。
僕にはどうしても、彼女を一方的に「美佳子」と呼びつける気にはなれなかった。春、クラス替えで初めて出会ったクラスメートは、彼女のことをなんて呼ぶだろう?「高橋さん」と言う呼び方は、彼女が実像であることの証明なのだ。
そして今は、堂々と「美佳子」と呼んでいる。知り合って半年が経ち、ようやく僕にも彼女を名前で呼べる資格ができたと思えるようになったから。
「美佳子」って、いい名前だね。すごく可愛らしいイメージだし、なんと言っても、声に出してみると音の響きがすごくいい。名前を呼ぶだけで、幸せな気持ちになれるよ。そしてなにより、きみにぴったりだ。
大好きだよ。
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