優しさと自己満足 (2001年01月23日)




 随分 昔の話なのですが・・・・



 夜のバーにて、テキーラサンライズとバラライカを前にして、ある後輩?との会話。



後輩G「・・・・。先輩、優しさって何ですか?」


僕 「え?・・・」


G「優しさって偽善だと思いませんか?・・・。先輩なら『優しさ』ってどう定義します?」



 なるほどねぇ・・・。この年頃らしいと言えば、「らしい」感じ方だよな・・・・。


僕 「定義ね・・・・『人の幸福を望む・・・・・・自己の心・・・・いや、自己の欲望』ってところでしょ」


G「・・・やっぱり、優しさって自分のためですよね」


僕 「・・・・・・・・・うん、ま、そうだね」




 「優しさは他人のためだ」と主張する人間には即答で「違うよ、馬鹿、自分のためだ」と言うところだ。


 しかし、「自分のため」ですよねと主張する人間は、おそらくなんらかの負の影響を受けた上でそれに気づき、精神的な成長の一局面にいる。


 それだけにストレートに「そうだね、よく気づいたね」みたいに手放しで誉めるのは危険である。





僕 「でも・・・、偽善ってのとは違うと思うよ・・・」


G「なんで?」


僕 「・・・・・善ってものがそもそも何なのかだよね。善がなければ、偽の善である偽善もないんだから」


G「・・・・・・そうですね」


僕 「どんなに人のためを思って、無償の愛、例えば、自分の命を捨てて、人の命を助けるとする。でもその行動は結局自分の命を犠牲にすることで自分の満足を得たいってだけなんだよね」


G「やっぱりそうですよね」


僕 「うん・・。そうすると、「人を殺したい」ってのも「人を助けたい」ってのも実は、その人個人に注目する限りは価値としては等しいことなんだよね。結局、その人の自己満足のための手段なんだからさ」



 後輩Gはうんうんとうなずきながら聞いている。



G「やっぱり、優しさなんて・・・」


僕 「・・・・やっぱり、優しさなんて自己満足のためだから・・・・無意味?」


G「違いますか?・・・」


僕 「でもね、視点を少し変えてみようか。『利益』、利益っていっても経済的な即物的なものだけではなくて、『幸福』とか『満足』とかの精神的なものとかも含めての利益。その利益の量を、幸福と満足の絶対量を考えたらどうだろう?。」


G「あ・・・・」


 彼女は頭の回転が早い。どうやら気づいたらしい。


僕 「そう。「助けられた人の幸福」と「殺された人の幸福」では「助けられた人の幸福」の方が一般的には大きいよね」

 わざわざ「一般的には」と注釈をいれるあたりに自分で苦笑せざるをえない。


G「そうですね」


僕 「すると、殺したもしくはその助けたかの行動をした人間にとっては満足度、幸福度は同じだ。でも、「助けられた人の幸福」と「殺された人の幸福」もそれに足し算すると・・・・」


G「ある人を助けた場合の方が大きいですね」


僕 「そう。結局、善であるかどうかってのは、相手も含めて、全ての人間の幸福の総量とか和が多いかどうかで決めるしかないんじゃないかな?、たぶんね」


G「・・・・・」


僕 「だから、結局、「優しさ」も善なんじゃないのかな?。ただ、「優しさによって相手が幸せになれば」って条件付きでね。

 自分の欲望も満たされるし、相手も幸せになるわけだから、幸福の総量が増えるからね。

 ただ、たぶん、相手が幸せにならないのに自分は善だと思っているのを「偽善」って言うべきなんじゃないかな・・・・。って思ってるんだけど、僕は。

 それと自分が満足したいだけで、実は相手の幸福を増やそうなんて考えてないってのも、もちろん偽善だろうね。こういうのが一般的には偽善って言うんだろうね。」


G「わかります」


僕 「まあ、結果が必ず伴わなければ駄目かっていうとそういうわけでもないだろうけどさ。『幸福の総量の増加を目指す心』も含めて善と呼んでもいいかもとは思うからね、一応。」

G「ふ〜ん・・・」


僕 「で、そうすると、さっきの定義の『人の幸福を望む自己の欲望』ってヤツも偽善じゃなくて善だと思わない?。」


G「はい・・・・・」


僕 「てことは偽善じゃない優しさってのも存在するってことだろうね・・・。」


僕 「まあ、もちろん、結果を伴ってない時に、『あなたのためを思ってやったの』とか言うヤツは僕は、大っ嫌いだけどさ」


G「わたしもです(笑)」


僕 「それと、自分の『優しさ』も所詮『自分の欲望』だって気付いてないヤツも僕は嫌いだしね。」


G「気が合いますね(笑)」



 そして、帰りの時刻は迫り、彼女は帰った。


 彼女はどうやら僕とのやりとりに満足したらしい。



 「あんな哲学な話で時間つぶれちゃって・・・」と僕は苦笑しながらつぶやく。


 まあ、彼女が満足したんだから、幸福の総量は増えたよな。


 「『善』行、善行をしたよ(笑)・・・・・・・・・」


 僕は帰宅するため冷房の利いてる電車に乗り込んだ・・・・・。


 時刻は11時をまわっていた・・・・。








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