山下達郎 シングス・フロム・サーカス・タウン・トゥ・スペイシー
「ステージ右手からミュージシャンが良くいうと気取らずに、悪くいうとモソモソという感じで出てくる。
ひときわ大きい拍手を受けて、この日の主役、山下達郎が登場し、ニュー・アルバム『スペイシー』でもa面1曲目収められている「ラヴ・スペイス」でコンサートが開始される。
今日のメンバーのほとんどが、新しいレコードでもバックを務めた人達。
ドラムス村上秀一、ベース高水健司、キーボード坂本龍一、ギター松木恒秀、アルト、ソプラノ・サックス土岐英史、そして、バック・コーラスに吉田美奈子が加わった編成。
初のソロ・コンサート(ちょっと意外な感じ)という亊も意識してか、緊張してアガリ気味の感じで演奏の方も、少し荒っぽい所が耳につくが、曲はおなじみの「ウィンディ・レディ」、新曲の「ダンサー」へと歌われていく。
会場のせいもあって、妙に音が硬質で、それはメリハリのきいた音とは違って、ドラムスの音がときには金属音のように聞こえる亊があったりして、軽い疲れさえ覚える。
そして音の処理もどこか拡散した感じで、一つのバンドとしては、どこかまとまりきらない点も合わせて残念。
それらの亊をひきずりながらもステージは進み、息抜きのお楽しみを2曲、ニューヨーク産のtv出演用という、カラオケをバックに「ミニー」、そして大ヒット作(?)「三ツ矢サイダー'76」を御披露。
さらにフェバリット・メドレーともいうべき、ビーチ・ボーイズ「ゴッド・オンリー・ノウズ」スモーキー・ロビンソンの「ベイビー、ベイビー」といった曲を折り込みながら、新曲を中心にステージは進められ、本当にアッという間に2時間あまりが過ぎ、オープニングと同じくアルバムのラスト曲「ソリッド・スライダー」で幕となった。
今日のコンサートを振り返ってみると、演奏自体は、なかなかドライヴ感もあってゴキゲンだったし、山下達郎という個性が各ミュージシャンのフィルターを通して伝わってくるのが良くわかるのだが、不満な点が全くない訳ではなく、それは前記のような音の問題と、編成にもう2本くらいラッパがほしかったのと、それに歯切れのいいパーカッションはどうしても必要だったのでは。
彼が僕(等)と同じ時代のポップス感覚を下敷にして、さらに自身の音楽を創造していく亊は、少なくとも僕にとってはスリリングであるし、また、シュガー・ベイブの1枚、ソロでの第1作、そして今回のアルバムと、彼は確実にその期待に答えてくれ、スケールを大きくし、自身の音楽を築きつつある。
ニューヨークやフィラデルフィアのスープに、耳ざわりの良い言葉を煮込み、フィーリングという訳のわからないスパイスを入れて、ニュー・ミュージック、シティー・ミュージックなどという様々な料理が、どんどん僕等の前に運ばれてくる。
その中で山下達郎を含めて、僕は腕のいい料理人を知っているし、彼等の持つポップス感覚や、ロックへの関わり方を見ていると、その核心のようなものも理解できる。
結局それが、歌謡曲と、彼の作りだす曲やサウンドとの差なのだろう。
くどいようだが、彼の今度のレコードは手応えがあるし、今日のステージでも充分それが感じられた。
後望む亊は、そろそろグループ結成という話や、積極的なコンサートの話等を聞きたいと思うのだが。」
(大鷹俊一、new music magazine 1977.7)
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2003.1.25.rev.0