『Get me on』
自分にとって何かいいことがあると誰かに話したくなる。
それはどんな人にも当てはまる感情ではないだろうか。
ここにも、そんな男が……いた。
「ったく、何で来ねぇんだよ! 北山はよぉっ」
イライライラ。
全員集合の連絡を入れてから1時間。
「北山にもいろいろと事情はあるだろうし…ねぇ」
「そうだよぉ。大体、休みに集合かける必要ないじゃ〜ん」
「そうっすよ、一体何があったんスか」
文句をいいながらも自宅から出てきたメンバーは必至で北山のフォローをしていた。
― 早く来てくれ ―
そう願いながら。
しかし、一向に来る気配の無い北山に痺れを切らせた村上は
「しゃぁねぇ。電話いれっか」
と携帯を取り出し、番号を打ち込む。
「遅れるくらいの連絡しろっての」
「多分留守電だと思うよぉ」
すかさず安岡がフォローを入れる。
「こっちに向かってる途中ならドライブモードですな」
酒井も後に続く。
「でも」
黒沢が言いかけたとき、村上が携帯を切った。
その動作で連絡が取れなかったことを伺わせる。
「……電源切ってやがる」
その一言で全員彼の現在の行動が把握できたのだった。
「テツ。仕方ないよ」
「今日はせんせ〜捕まらないってぇ」
「ま、休日に何をしようが個人の自由ですから」
メンバーに脱力感が広がっていった、その頃。
当事者である北山は悩んでいた。
― どう、切り出せば効果的に進むだろう ―
彼にとって今日最大のイベントがこれから始まろうとしていた。
それは
「ごめんね、遅れちゃった」
そう言って隣に座った彼女を口説き落とすこと。
今日は君の耳元で甘く囁いて。
君の瞳を決して俺から逸らさせはしないからね
「ねぇ」
そう言って彼は話を切り出した。
「俺と
とは違う人間だから、当然愛し方も違うはずだよね」
突然語りだした俺に彼女は戸惑いを隠せないでいる。
「でもね、だからこそ、俺は
ともっと分かり合いたい」
そして微笑みかけてみる。
彼女の瞳の奥の戸惑いを見透かしたかのように。
そう
これが俺の罠だとわかっても、このまま騙されていて。
ゆっくりと、あなたのペースで構わないから。
そしてこの熱い思いを終わらせないで……。
フロアの照明が少し落ちて、スローナンバーが流れ出した。
その雰囲気が彼女を妖しく照らし出す。
何かを訴えているかのような、その視線は彷徨って。
だけど瞳の奥にある君の想いは俺を誘おうと懸命に頑張っている。
― 踊っていただけませんか? ―
告げる代わりに右手を出してみる。
もう、逃れられない
へたどり着くための階段を。俺は進むしか、ない。
君の誘いに負けたフリをして、仕掛けた罠に堕とすまで。
今夜中に君の口から言わせてみせる。
「陽ちゃん、上手すぎるよ」って。
言葉を使わず、ただKissをするだけで
俺の愛を伝えよう。
とめどなく、溢れてくるこの気持ちを…。
にはその手が一番有効なのを知っているから。
今夜、俺にとっての
という存在の意味を教えてあげる。
身体の中でくすぶっている俺への愛を、開放してあげるよ。
そして二人、楽になろう。
これからずっと、一緒にいるために。
君の細いソプラノの声が 今の俺にはとても心地いい。
誰にも言えないような二人の秘密を、増やしていこう。
だから
「愛してるよ、
」
最後にそっと囁いてあげる。
今夜こそ、俺だけの女性にするために……
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