『約束の季節』

― あなたは今、恋愛をしていますか ―
時間待ちの退屈を紛らわせるために読んでいた雑誌で
僕はそんな見出しを見つけた。
「…恋愛、かぁ」
思わず口に出た言葉。
懐かしい響きに感じるのは、まだあの頃の気持ちを忘れていないから。
「ヤス?」
隣でゲームをしていたユージさんが僕に目を向けた。
「どうしたのだ? そんな声を出して」
いつも元気なお前さんらしくもない
オレで良ければ相談に乗るぞ?
そう言ってくれるのはとてもありがたいんだけどぉ
「恋愛、してますか? だってぇ」
そう答えた途端、ユージさんは苦笑いした。
「オ、オレの出番は無さそうだな…」
やはり北さんあたりに……いや、アレは経験が多すぎか
しかしテツさんでは逆に自慢話に終わってしまいそうだし
比較的無難な黒ポンあたりで手を打っておけばよいのではないか?
「そうだねぇ〜」
上の空で返事をしながら僕は自分に尋ねてみた。

― 今の僕は恋愛を楽しんでるかなぁ ―

そもそも、恋愛って言える心理的状況下にいるのかなぁ
に対するこの想いは恋愛なの? それとも別の感情なの?
あの夏の日から、もう2年も経ったんだねぇ。
お互い別の道を選んだ、あの日から……。

いつもの帰り道。
あの日、僕はしばらくこの街から離れるって君に告げたんだ。
その後、僕達は何も話すことが出来ないまま駅まで歩いたんだっけねぇ。
「サヨナラ、明日…また」
そう言う君の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいて
すぅっと流れ落ちた一筋を拭い去るように僕は右手で君の頬に触れた。
「だいじょぉぶ。いつかきっとまた会えるってぇ」
僕は出来る限りの明るい声で笑ってみせた。
そしたら君はぎこちなく少し微笑んでくれたね。
そして僕に、僕との思い出に背を向けたんだ。
この瞬間から僕達は違った道を歩き出したのかもしれないね。

今、あの頃のように右手を空にかざしたら
夏の眩しさの先に一体なにが見えるかなぁ。
僕の周りも、君の周りも、違ってしまっているはずなのに
僕に感じることが出来るものの中で今でもたった一つ変わらないもの。
それは
に対する、この想い ――

いつか、 に伝えに行こう。
君の本当の言葉を僕に聴かせて欲しいから。
そして君の心に僕の声を届けたい。
今はこうして離れているけど
いつか必ず、二人で歩ける道にたどり着けるはずだもん。

幾つの季節を過ごした後かは解らない。
だけど僕は未来の と約束したんだ。
自分の信じる道を、自分らしい今日を過ごしていれば
その道のどこかで僕達はもう一度再会できる。
その時を、感動を分け合うために生きていこうって。
だから僕は の住むこの街に戻ってきたんだもの。

夏の空を見上げると太陽が眩しくて
それを遮ってくれる雲を探してしまうように
あのときの僕は君の真っ直ぐな想いから逃げてしまったけれど
そんな大切な恋愛を僕に教えてくれた、この愛の意味を
君自身に知って欲しいから……

だから
いつか必ず に会いに行く。
僕の全てを君の心へ届けるために。
僕の声を、本当の気持ちを感じて欲しいんだ。
きっと笑いあえる。
もうあの時のような涙なんて流さなくてもいいんだよ。
雨上がりの空には虹がかかるんだもの。
君の涙の跡にもきっと虹がかかる。
そして僕と二人で過ごせる季節まで君を導いてくれるよ。

……ね?
だから、待ってて。
今は君への想いを形にすることは出来ないけれど。
僕の大好きな、 へ。
君に会いに行く勇気がまだない、一人のオトコより……。