『W』
― もうすぐ、会えるのねっ ―
早く、一秒でも早く。
君の笑顔を見つけたくて
― 迷惑にならないようにお迎えに行っても、いい? ―
構わないさ。
折角だもの、そのまま食事しちゃおうよ
そうだな、待ち合わせ場所は……
「安岡?」
不意に声をかけられて視線を上げると黒ポンが僕を見つめていた。
「ん? なぁにぃ?」
僕はわざと寝ぼけた口調で答えた。
と会えることを楽しみにしているなんて、気付かれないように。
「いや、もうすぐ到着だから。起きておいた方がいいと思って、ねぇ?」
そう言って他の3人を振り返る。
「あん? そんなの放って置きゃいーんだよ」
面倒くさそうに返事をしたてっちゃんの隣ではゲームに夢中になっているユージさん。
……そうだねぇ、この人たちは本当に置いて行きかねないものね
思わず苦笑いした僕に気がついたのか
「どうしたの?」
と、センセが首をかしげる。
「うぅん、なんでもなぁい」
寝ていたフリをするために生あくびを出してみる。
あくまで、到着までは冷静に
僕の計画がばれてしまわないように。
「ところで安岡ぁ」
起きたなら丁度いいや、とてっちゃんが話を切り出す。
「さっき他の奴らと決めたんだけどさ、黒沢部長オススメの」
「あ〜っ メンゴ! カレー昨日食べちゃったんだよねぇ」
昼食の誘いだと気がついた僕は牽制する。
攻撃は最大の防御なり、とはよく言ったもので
「そか、んじゃ他の店にすっか」
「えっ…」
あれぇ?
そんなすぐに予定変更しちゃっていいの?
「あ、それじゃ、オレ。いい店見つけてるのよ、コレが」
酒井部長オススメの
「メンゴメンゴ、昨日のやつ、カレーうどんにしたんだよぉ」
なんとかして誘いを断らなくちゃ。
ただそれだけのために僕の頭はフル回転。
折角
が迎えにきてくれるのに、食事も出来ないなんて悲しませられないよぉ。
「だからさ、僕はいいから。皆でカレー食べてきてよっ」
「だけど」
「い〜ってぇ 僕は勝手に好きなの食べておくからぁ」
いいかけた黒ポンの言葉を遮って僕は笑顔を返す。
「ふぅ〜ん…」
「な、なにぃ?」
どぎまぎしているのがばれたのか。
てっちゃんは僕を見て、ただニヤニヤするばかり。
そして新幹線がホームに到着した。
「それじゃ、僕はここで別行動になりまぁす」
そう言って先に歩き出した背中越しに4人の声が聞こえた。
「時間厳守だかんな、遅れんじゃねぇぞ!」
「安岡ぁ、本当に一緒に行かないの〜? おいしいんだよぉ?」
「そんなに慌てるとまた汗が止まらんぞ〜っ」
「……ヨロシク言ってくださいね」
ば、ばれてるっ!? それともセンセの揺さぶり??
と待ち合わせた場所まで、自然に足のスピードが速くなっていく。
それは近づくにつれて、もっと、もっと
ポケットに忍ばせたままの小さな鐘が揺れて響くように
僕の気持ちも揺れていく。
会いたい いますぐ
会いたい あなたに……
「愛してる」
ただその一言を伝えることが出来たなら。
すぐに、君の側にいくからね
だから
聞かせてよ 君の声を
抱きしめてよ 僕の想いを
囁いてよ 僕への想いを
電話で話をするだけじゃ 物足りない
だけど 君にあえない日は 自分のための日にしよう
そうすれば 今度会う時には もっと
への気持ちは強くなっているはずだから
「愛してる」
ただそれだけは 変わらないから
今も同じ気持ちだって
約束をしてくれるよね
今すぐ 君の待っている その場所へ
もうすぐたどり着くから。
もう少しだけ、待っていて。
「
っ」
思わず声を出して駆け寄った僕を
君は想像以上の明るい笑顔で迎えてくれた。
「…お帰り」
ちょっと照れた顔がまた僕の心をくすぐって
「ただいまぁ☆」
そう。僕はいつでもココに戻ってくる。
君の待ってる、この場所へ……
だから、心はいつでも
の側にいる。
その想いを抱きしめていて欲しい。
待ってる
そう、囁いていて欲しい。
どんなに遠く離れていても
君が淋しさに震えてしまっても
僕が君を愛していることを 感じて欲しい
どれだけ一人きりの時間が流れても
僕が君を愛していることに 変わりはないから
いつまでも、僕が
を
―― 愛しているよ
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