さよならは未来のために。
「キレイな空」
春のはじめ。雲ひとつない青い空を見あげつぶやく。
風が吹くと桜の花が空に舞う。
あの時も、今みたいに桜のキレイな季節だったな。
小さくため息をつくと空にそっと問いかける。
「・・今、何してんだろ」
「亀梨!行くぞ」
「あ、ん。わかった」
視線を空から俺を呼ぶ仁にうつす。
あの日からもうすぐ1年がたとうとしてる。
もしも ひとつだけ 願いがかなうなら
今の俺は何を願うんだろう。
あのときの俺だったら・・何を願ったんだろう。
今から1年前。
俺には彼女がいた。
少し小柄で髪が長くてめちゃくちゃ可愛いというわけではないが愛嬌のある感じだった。
俺とタメで、いつも笑顔で俺のことを支えてくれてた大切な人。
「かずや〜〜〜」
「ん?」
「チャンネルかえてもいい?」
「ダメ」
「野球つまんないよ」
「俺はおもしろいもん」
「私はおもしろくないもん」
「あっそ」
「・・・・」
「ああ〜〜。」
「・・・」
「よし、おぉ・・ああ〜〜アウトかよ」
「かずや〜」
「何?」
「・・・何もない」
「ああ。適当にそのへんのマンガ読んでいいよ」
「・・かえる」
「は?」
「だって和也、テレビに夢中なんだもん」
「いや、それは」
「帰ります、さようなら」
「ああ〜〜待って待って!」
「じゃテレビみない?」
「あぁ・・・。」
「見ない??」
「・・わかった、わかったよ。ったく」
「わ〜い」
いつまでもこんな日が続くとあのころは信じてた。
些細なことがシアワセで、がいるだけで、心が安らいだ。
だけど・・そんなシアワセが・・いつからか当たり前になってしまってた。
いつからだろう、ボクとキミの見つめる未来が違い始めたのは。
その未来にボクがいないことに 気がついたのは。
「すごいじゃん、ソロもらっただなんて」
ある歌番組で俺はソロを歌うことになった。
とはいっても後ろにはいつものメンバーがつくんだけど。
「うん」
「和也?どーしたの?元気ないじゃん」
「・・ん」
「うれしくないの?」
「うれしいよ、そりゃ・・すんげー嬉しい。けど」
「けど?」
「・・・なんで、俺なんだろって」
「・・・・」
「俺以外にもうまいヤツはいるわけでしょ?なのに・・」
「フフ」
「・・何がおかしいんだよ」
「和也らしいな〜と思って」
「・・・」
「自分のことよりすぐ人のこと考える。」
「・・・」
「自信持ちなよ。事務所は他の誰でもないあなたを選らんだ。それだけでいいじゃない」
そういうと微笑んでボクをギュッと抱きしめた。
―――おめでとう、和也―――
迷っていたボクの背中をいつも押してくれていた。
その微笑の裏で・・悲しむ瞳を隠しているなんて気がつかなかった。
目が回るような忙しさとはきっとこのことをいうんだろう。
そんなことさえ思うぐらい、急に・・いや、少しずつ仕事の量が増えてきた。
だけど・・そんなことで弱音を吐くようじゃこの世界ではつとまらない。
忙しさにかまけて・・に連絡をとらなくなって2ヶ月がたとうとしていた。
「そばに・・いてほしかったの」
そう泣きながら電話をかけてきたのはその次の月のことだった。
が引越しをすると連絡をしてきたのは・・。
「どういう・・こと」
「・・親がね・・離婚するの」
「りこ・・ん・・って」
「だから、私はお母さんの実家に帰るの」
「ちょ、ちょっと待てよ!お前、なんでそんなこと俺に」
はっと我にかえった。
は何度も俺に伝えようとしてた。
メールだって電話だって・・。
だけど・・俺が・・。
「・・・ごめんね、和也」
「」
「私たち・・きっと、もうダメだよ」
「・・・んなこと」
「離れちゃったら・・きっと、心ももっと離れていっちゃう」
「なんで、そんなこというの?」
「約束できる?」
「え?」
「離れても・・私だけを思ってくれるって、約束できる?」
「あぁ・・できる」
「ウソ・・。きっと、仕事で夢中になっちゃう」
「・・・」
「何も考えずに、和也は今あることだけに集中してほしいの」
「・・」
「私のことなんか忘れちゃって」
「んなこと急に言われても」
「・・そばに・・いてほしかったの」
「え・・」
「離婚が決まったとき・・もう、どうしていいかわかんなくって」
和也に側にいてほしかった。和也のぬくもりがほしかった。
「・・和也の声がききたかった」
「・・ごめん」
「聞きたいときに声が聞けなくて、側にいてほしいときにそばにいてくれない」
「・・・」
「わかってる。和也は忙しくってそんな暇がないことぐらい。・・けど」
・・・もう・・たえられない。
の声が耳に響いた。
「さよなら・・和也」
ツーツーツー。
電話が・・・きれた。
あれから1年が過ぎた。
あの日以来、俺に恋人はいない。
たとえば・・あのとき。
俺があいつの側にいてやったら・・きっと今頃、未来は変わっていただろう。
だけど・・側にいなかったという事実は消し去ることができるわけがなく。
俺とあいつのことが・・俺の中で思い出になってゆく。
なあ、。
今、どこでどうしてるの?誰といるの?
キミの側に・・誰がいるの?
「やっと・・言えそうだ」
青い空に向かって、ひとつ大きく息を吐き出した。
さよなら、。
舞い上がれ、はるか遠く。
この思いが・・キミに届くように。
さよならは・・別れのため、また出会うため。
そして・・。
これからの・・未来のため。
+END+