| 卜伝図の説明。達人は無理をせずに、7割の力で、緩慢なようで、素早い動きをしているようにおもえる。 |
塚原卜伝「無手勝流」のいわれについて 図のうち左側の説明これは第3回目の遊歴中と思われる。近江日野の蒲生秀賢のもとに滞在中、京へ行ったと見えてその帰り、大津から舟に乗った。卜伝はこの時門下を連れてなかったと見えて、乗合六,七人であった。その中に三七、八ほどに見える、背が高く、髭黒く、物言いの荒い武士が会った。それが唯一人、人も無げに語り、天下無敵のように兵法の自慢をする。卜伝初めは知らぬ顔で居眠りをしていたが、余りのことに懲らしてやったほうがその者の為だと考えたか、その武士に向かって、「いろいろのお話を聞いたが、兵法のことは誤っている、拙者も若いときから修行したが、まだ人に勝とうとは思わなかった」と言った。武士は之を聞いて、「それは不思議だ、何流であるか、何流でも望まぬ兵法はあるまい」。卜伝は之に答えて「何流でも勝つことより負けぬことが大切で、兵法、すなわち武の道は、戦いを止むるのが目的で、人を斬って勝つのはやむを得ざる最後の手段である。刀を用いるのは未熟だからである。元来刀など不用なもの、故に人に負けぬことを念として、勝つことを思わない。勝つことを思えばその裏に負けるということがある」。之を聞いた武士は、その意を解する力がなく「然らば貴殿は無刀で試合をするか」と鋭く詰め寄ると、卜伝は「好むところではないが望みとあれば試合しよう」と答えた。そこで、武士は船頭に早く舟を岸に着けよと命じたが、卜伝は之を止めて「陸で試合して見物人が多くて面倒だから、唐崎の向こうの離れ小島に着けて心置きなく試合しよう」。それに舟を急がせた。乗合の客は老人卜伝の為に心配したことであろう。武士は島に着くや否や、直ぐに岸に飛び乗り、早くも刀を抜いて卜伝を待った。卜伝は静かに大小を脱して、舟に置き、船頭から水棹を受け取って舟べりに立った。そしてその棹で岸に飛ぶのかと思いの外、反対に舟を沖の方へ突き出してしまった。之を見た武士は驚いて「卑怯だ、返せ!返せ!」と怒鳴った。船客は手を叩いた。卜伝は静かに言った。「兵法の奥儀をそこでゆっくり工夫するがよい。人に負けない無手勝の極意は之である」と、舟は急いで山田村に着いた。世に之を無手勝流と云い伝えた。(鹿嶋市の歴史から) (余談)侍を置き去りにしたのではなく、急ぎの乗合の人を降ろして、中州に戻り鉄扇で勝負し打ち勝ち、船に乗せて帰ったのが真実だともいわれています。 (参考)落語に「巌流島」と云うのがあります。「本所と浅草を結ぶ御厩の渡しの船中で煙草をふかしていた無骨一遍の若侍、船縁で氷玉をはたく途端に雁首が水中へ。しきりに惜しがるところへ、残った吸い口を良い値で引き取ると屑屋がしゃしゃり出たのが癇にさわり、手打ちにすると言い出す。年配の侍がとりなすと、さらに激勗、真剣勝負と言われて、槍を取った老武士、乗合に迷惑ゆえ陸に上がってお相手いたすと、岸に着けさせ、若侍が先に上がったところで槍で石垣を着いたから、船は再び川中に。一同にわっと囃された若侍、いきなり裸になって飛び込む。泳ぎ寄るところへ槍を付きつけ、「謀られて口惜しく、船底えぐりに参ったか」「いや、さっきの雁首を探しに来た」 「七人の侍の侍探し」の元ネタは、卜伝の養子の選択です(図のうち右側の説明) 「卜伝は前後三回の周遊を終わって故郷の鹿島に帰った時、年既に七〇歳近くになっていた。そこで子がないから、門人の中から誰か適当な者を選んで後継者を決めなければならない。その候補者が三人あった。或る日、戸張(長い暖簾の類)の上に木枕を置いて、触れれば落ちるようにし、事に託してまず一人を呼んだ。来かかると戸張の上に木枕があるのをみて、之を取り戸側において内に入った。また、前のようにして次の一人を呼んだ。その者は戸張を掲げようとしたら、木枕が落ちてきたので、之を避け刀をひかえて内に入った。最後の一人を呼ぶと、その者は木枕を落ちるのを見て、之を避け刀を抜いてしたに落ちぬ間に両断した。卜伝は二人目と三人目の二人に向かって、汝等は小事に逢うて盲動したのは修行が足らぬと戒め、初めの一人に向かっては、荘重持敬敢えて心を動かさず、以って我が後を委すべし、と云って嗣とした。この人が彦四郎幹秀である。」(鹿島市の歴史から。「本朝武芸小伝」) (参考)彦四郎幹秀は「見越しの術」を使ったと、書いてあるものもある。 七人の侍の解説 馬が蹴った際ひらりと避けた弟子に対する評価(真中の図の説明) 「道を歩いていて馬の後ろを通るとき、後ろ足で蹴られたが、ヒラリと避けたのが、卜伝の弟子であったので、この光景を見た人が、卜伝にそのことを話すと、『あの弟子は誉められるほどのものではありません』と答えたという。」「卜伝の場合は、避けて通ったと書いてある本もあります」。遠富士の安全訓。馬は蹴るもの、重機はバックするもの。 安全理論と止まる侍のページへ戻る 卜伝は武蔵の師匠かのページへ飛ぶ |