大江健三郎「空の怪物アグイー」から。
きみはまだ若いからこの現実世界で見喪って、それをいつまでも忘れることができず、
それの欠落の感情とともに生きているという、そういうものをなくしたことはないだろう?
まだ、きみにとって空の、百メートルほどの高みは、単なる空にすぎないだろう?
・・・それとも、今までなにか大切なものをなくしたかね?
*喪失感の痛みが分かり人にだけ感じる事が出来る「空の悲しみ」
私は空の写真をたくさん撮りたい。
鷺沢萠 「誰かアイダを探して」(少年達の終わらない夜、から)

窓の下の通りを行く車は、冬へ向かって走っている。
今、彼女に会えたなら、この数ヶ月間に考えつづけていたことを僕は伝えられだろう。
だから僕はアイダを探している。
アイダが何処へ行ったのか、誰か教えてくれないか。
話したいことがあるんだ。
*鷺沢萠さんは今年四月逝去されました。謹んでご冥福をお祈り致します。
鷺沢さんのHPは健在です
J・D・サリンジャー「ライ麦畑で捕まえて」
「ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。
でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」
*ジョンレノンを射殺した男が最後に読んでいた本は「ライ麦・・」だそうです。
日本の禅にも興味を覚えたサリンジャー。
「ライ麦のつかまえ役」とはあなたを大きく包む寛容の心です。
「エズミに捧ぐ」 (ナインストーリーズから)
「エズミ、本当の眠気を覚える人間はだね、
いいか、元のような、あらゆる機──あらゆるキ─ノ─ウがだ、
無傷のままの人間に戻る可能性を必ず持っているからね。」
*傷ついた兵士が偶然出会った少女に独白するセリフです。
疲れた人は眠れば良い。
「無傷のままの人間に戻れる可能性」を信じて。
サリンジャー作品一覧
女流歌人のうっとりするような美しい言葉を数々を拾ってみます。
・山中千恵子(日本歌壇の重鎮) 大正14年生まれ
青空の井戸よわが汲む夕あかり行く方を思えただ思えとや
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪降るさらば明日も降りなむ
青人草あまた殺してしずまりし天皇制の終わりを見なむ
・井辻朱美(あけみ)1955年生まれ
ゆめに散る花ことごとく蒼くしてこの世かの世にことば伝えよ
雪の降る惑星一つめぐらせてすきとほりゆく宇宙のみぞおち
・水原紫苑 1959年生まれ
風狂う桜の森にさくら無く花の眠りのしずかなる秋
宥(ゆる)されてわれは生みたし 硝子・貝・時計のように響きあふ子ら
こぼれたるミルクをしんとぬぐふとき天上天下花野なるべし
・米川千嘉子 1959年生まれ
名をよばれしもののごとくにやわらかく朴も大樹も星も動きぬ
春日野の飛ぶ火の野守いでて見よ老いし父母率(い)てさびしきわれを
たましいに着る服なくて醒めぎわに父は怯えぬ梅雨寒のいえ
短歌のデータベース 電脳短歌イエローページ
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