は じ め に
1 調査地域
(1)高槻の自然環境
早春の高槻の山々は、マンサクの黄色い花から始まりタムシバ・ヤマザクラとその色彩も豊か
に変化します。林床にはヒトリシズカ・ニリンソウ・フタバアオイと始まり、花々のたえるとき
がありません。
高槻市は、森林面積が府下でもっとも広く北部山間部では、森林が60%を占めています。そして、
高度数百メートルの北摂連山の一部を作っています。
この地域にはシカだけでなく、サル、イノシシ、タヌキ、キツネ、テン、イタチ、リス、ムササビが生息し、アナグマ、ハクビシンも生息しているら
しいと言う情報も得ています。
(3)植物
渡辺昇氏の「高槻市植物目録」(高槻市教育研究所編集1975発行)では、シダ植物を入れて145科970種を記載しています。私たちの調査では、ポンポン山北部が京都市に入りますが、9種を追加しました。しかし、再確認できた種は山間部で約400種程しかありません。
(4)野鳥
野鳥のリストを佐藤雅史さんに作成して頂きました。調査の中心となる冬場の鳥(一覧表)は、17科36種(*)みられました。
コサギ、トビ、ハイタカ、コジュケイ*、ヤマドリ*、キジ、アオバト、キジバト、フクロウ*、ヤマセミ、カワセミ、アオゲラ*、コゲラ*、セキレイ、セグロセキレイ*、ハクセキレイ、ヒヨドリ*、モズ*、カワガラス*、ミソサザイ*、カヤクグリ*、ルリビタキ*、ジョウビタキ*、トラツグミ、シロハラ*、ツグミ*、ウグイス*、キクイタダキ*、エナガ*、シジュウカラ*、ヤマガラ*、ヒガラ*、コガラ*、メジロ*、ホオジロ*、カシラダカ*、アオジ*、ミヤマホオジロ*、アトリ、カワラヒワ*、マヒワ、ベニマシコ*、ウソ*、イカル*、シメ*、スズメ*、カケス*、ハシブトガラス*、ハシボソガラス* (無印は野鳥の会大阪支部報、*印は佐藤の調査 作成は佐藤による)
(5)本山寺、神峰山寺の樹林
神峰山寺の裏山には、シイの林にマツ、ヒノキのまじたまとまった暖温帯照葉樹林を作っています。本堂の前にはカリンが植えられ、山門から本堂にかけてはたくさんのカエデ類があり新緑も紅葉もとてもみごとです。
本山寺は山奥の落ち着いた寺で、本堂の前にはシャクナゲ、オオイタヤメイゲツ、ボダイジュなどが植えられ、山門の脇には大きなアカシデがあり、鐘楼のそばにフッキソウの群落が見られます。
寺の北側には立派なモミ・ツガ林がありアカガシをまじえた温帯針葉樹林が分布しています。大阪府下では、ここしか見ることができません。
(6)神峰山寺周辺の開発
「都市近郊林整備事業」として、1億2千万円の予算で、林道の拡幅、伐採、植林、山野草園(神峰山の森)などの開発が行われました。自然を残すというよりも公園化が優先し、自生のキンラン、ギンラン、エビネ、ササユリなどが消え、一方で在来種でないものを移入しています。
2、シカの調査について
(1)シカの生態
(2)調査地域と方法
大阪府と京都府に接する地域で、交通機関のたいへん不便なところで、踏査ルートの無いとこ
ろ、入山の難しい所も多く全域をくまなく調査が出来ていません。
主な調査地は次のとおりです。
コスリ棒、ヌタ場ではイノシシも共有して使かっているので体毛などの他のサイン等の情報によって決定しました。また、イノシシ・ノウサギなどと紛らわしいものは除外しました。
生息状況については、ひとつの点としてではなく他の地域との関連や、発見されるサインの付近の植生などを大切にしました。
分布図については、全体を把握できるように、2万5千分の一の地形図を100分割したものを基準に利用しています。
調査区は、一区画をさらに四分割(一辺は約500m)して、サインがあればその区画に黒丸を付けています。
(3)シカの分布と目撃報告
現在までのシカの調査地でフィールドサインをのこれらを地図に表したのが、図1です。全体として、田能から中畑、ポンポン山、原付近に集中しているように見えるますが、これは調査のさいの交通機関とうの利便性からきています。同様に、図2の目撃例についてもほとんど登山ルートから報告されている。団体での調査中は残念ながら目撃はできませんでした。92/2/28,92/3/13の両日に高槻北部の田能、樫田小学校近くで3頭のシカを日中、目撃しています。ほぼ同じ集団で、居付いているものと思います。
(4) H:原盆地周辺の観察
摂津峡の北、河岸段丘上に原の集落が形成され、すぐ南まで住宅が迫ってきています。
(5)アオキの食痕
冬場に大量にアオキの芽を食べています。原周辺から本山寺にかけてよく食べられています。
私たちは、85.3.3田能南尾根で見ていますが、ここれは葉を少しかじった程度です。
神峰寺北では、4メートル四方がすべて食べられていたりします。
(6)食餌植物について
私たちの調査で、42種の食餌植物がわかりました。他に数種の不明なものがあります。
ひのき科 ヒノキ
3、まとめ
(1) シカの分布は丸印の範囲とその周辺で京都府側にまだ少し広がる。
(2) 落葉林内で南側に明るく開けたなだらかな斜面では多くのフィールドサインが見られる。
(3) 原盆地北では、シカのフィールドサインが通年みられ、子供のサインが得られました。ここで、イネの食害が見られました。
(4) フィールドサインの多く見られる場所では新旧のものが見られるので、常時生息するものと思います。
(5) 高槻神峰山寺では,アオキの食痕がありました。
(6) 食餌植物は、今回までに42種が判りました。
(7) 一年児のツノコスリと判定のできるものがみられ、子供の出産があることがわかりました。
(8) シカの体毛を顕微鏡で見ると
「うろこ」状の模様が見られ、種の識別に利用できることが分かりました。
(9) シカ・キツネ・テン・タヌキ・ホンドリスの目撃ができました。
(10) 原盆地北の通称オオヌタでは、六ケ所のヌタ場が観察され、よく利用されていました。
(11) 八坂神社および谷北部での、ムササビの生息の確認ができませんでした。
(12) 繁殖期にシカの穴ほり(つちほり)を見ていますが、その理由はわかっていません。
(13) 季節的な移動が考えられます。冬と夏場でフィールドサインの出現傾向の偏りがあるように思えますが、
夏のサインは下草がおいい茂ってなかなか発見が困難です。
(14) シカ道はたいへん歩きやすく、うまく地形を利用して行動しています。
高槻では、哺乳類、鳥類、魚類、植物、昆虫などいっぱい見られます。最近では、分布の限られたムカシトンボの生息や、ヒダサンショウウオも発見されました。しかし、しばばしば住宅街までシカが出てきたり、交通事故にあったりしています。
シカの生息地にまで住宅が広がってきているからです。こういう状況は野生動物にとってたいへん不幸なことです。
私たちの生活があるように、野生動植物も生きています。同じように共存の道をさぐっていきたいと思います。
これらの課題を調べていきながら、この豊かな自然を守っていきたいと思います。
私たちは1984年11月から、おおくのナチュラリストの仲間とともに、野生ジカの生息域
や生態を把握し、その保護に役立てるため調査を開始しました。そして、既に第6集まで年次報
告書をつくりました。
調査では、多くの関係機関等、また神峰山寺北のジャラ畑でアオキの調査をされている北元敏
夫(高槻公害問題研究会)さんから多くの観察報告をうけました。高槻公害問題研究会、田口圭
介氏、大阪自然環境保全協会、池田裕計氏からも貴重な情報を頂きました。
また、報告書作成中にポンポン山北部に計画されていた「ゴルフ場」計画が中止になりました。
粘り強く反対運動を行った「ポンポン山・大原野ゴルフ場に反対する会:代表立石五郎氏」ほか
と喜びたいと思います。
そして、タニウツギ・ユキザサ・ウノハナ・ハナイカダ・ガマズミ・ムシカリ・フジへと、さ
まざまな色を持った花が枝先につけ、夏に向かいます。
木々はいっぱい葉を広げ、その緑色がより深く色を変化させます。 みごとな紅葉を見せてく
れた木々の葉が、すっかり無くなった頃から、私たちの調査が始まります。
山地のほとんどが古代の堆積物である丹波層郡(秩父古生層)やそれが変成した岩石からなり、とくに
硬い砂岩地帯では採石業が盛んです植。山地の大部分はスギ・ヒノキの植林地になり、かっての薪炭林の
面影を残すクヌギ、コナラ林は少なくなりました。しかし、ポンポン山北部は良好な自然が残っておりこ
れが、シカの生息におおきな役割をになっています。
また、本山寺には、りっぱなモミ・ツガ林があり、アカガシを交えたの
温帯針葉樹林が分布し、神峰山寺には、みごとなシイの暖温帯照葉樹林を形成しています。
(2)生息する哺乳動物
ニホンジカ(Cervus nippon centralis)は普通14亜種ほどに分類さており、日本に6亜種(エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、マゲシカ、ヤクシカ、ケラマジカ)が認められる。
シカは、毎年秋に発情し交尾(9月から11月ごろ)し、翌年の5月〜6月ごろ一頭(まれに二頭)を出産します。
10月ごろになって発情期に入ると、オスジカは頻繁にphyo〜phyo〜とよく通る声で鳴き始めます。この声を生息頭数や分布状態の確認に利用します。
シカの角は毎年はえかわり、5月ごろ被膜を破った袋角が出て、8月に伸長し終え、9月に骨化がほぼ終了する。そして翌年の4月〜5月ごろ、落角する。
A:明神岳周辺
B:田能南尾根
C:こんぴら岳周辺
D:出灰北部
E:ポンポン山北部
F:出灰スミヤキ跡
G:本山寺神峰山寺周辺
H:原盆地
調査には、高槻市と京都市発行の一万分の一の地図を利用して、フィールドサインを正確に地図に落としました。識別の顕著な、糞と体毛をもっとも重視し、つぎに足跡・食痕等を調べました。
フィールドサインの種類
足跡
水のみ場
ツノコスリ
食痕
ヌタ場
泊まり場
穴ほり
糞
今のところ、開発規制によって農耕地が多く、のどかな田園風景を作り出しています。
集落の回りの山地では、アカマツ林がすこし残るが、ほとんどがスギ・ヒノキの植林地となっています。
原盆地周辺では、シカの足跡・糞・食痕・泊り場が通年みられました。秋にはツノコスリ・コスリ棒・ヌタ場もみられました。
シカの他にはイノシシ・テン・キツネ・タヌキ・リスのサインがみられました。この付近の良好な落葉の林がつぎつ
ぎに伐採され、萩谷林道までのびました。
伐採が続き、ダンプカーが材木を運び出したり、人の往来が増えたので、シカのサインが原から
北に掛けては少なくなったように思われます。また、数個体か数ファミリーが生活をしており、
猟期(11月15日から 2月15日)はフィールドサインが極端に少なくなります。これはイノシシ猟
で犬を使うためにシカの群れが分散するものと思われ、私たちはポンポン山の北部に移動するので
はないかと考えています。
個体の目撃がむつかしいので、移動状況については判っていませんが、
なんとか調査をしたいものと思っています。
しかし、4〜5頭の群れの目撃報告(第3集)もあり、季節的な移動ではなく常に出現しています。伐採跡の植林地などは、いっせいに草木が芽をだすので来るのかもしれません。今後もっとも植林の食害の心配な地域です。
(北元、池田「ジャラバタ谷で野生シカがアオキを食害」Nature Study35(4)1989)
シカの生息地域にはアオキが多くあり、この選択性などどのように広がるかを調査をしています。
アオキと同じように、大台ケ原では、トウヒの樹皮が大規模にかじられているのを見ました。
高槻ではネムノキですが、箕面では同じようにリョウブが大量に食べられています。
もちろん高槻にもリョウブがありますが、すこし角でつついた程度か、新芽をたべているくらいです
私たちは、これらを
@シカなどの反すう獣が、腸内発酵をコントロールするための薬利効果
Aツノの落角の為の何らかの効果と考えています。
いぬがや科 イヌガヤ
いらくさ科 ミズ
カテンソウ
アカソ
たで科 イタドリ
ミズヒキ
ミゾソバ
1sp
ひゆ科 イノコズチ
つばき科 ヒサカキ
けし科 ミヤマキケマン
ばら科 ナガバノモミジイチゴ
ノイチゴsp
ゆきのした科 コアジサイ
まめ科 ネムノキ
クズ
アカツメクサ
とうだいくさ科 アカメガシワ
みかん科 イヌザンショウ 追加
かえで科 1sp
つりふねそう科 ツリフネソウ
もちのき科 イヌツゲ
アオハダ
くろうめもどき科 ケケンポナシ
ぶどう科 ノブドウ
すみれ科 1sp
みずき科 アオキ
せり科 セリ
りょうぶ科 リョウブ
くまつづら科 ヤブムラサキ
しそ科 ナギナタコウジュ
なす科 ヒヨドリジョウゴ
はえどくそう科 ハエドクソウ
きく科 コウゾリナ
アメリカセンダンクサ
コウヤホウキ
モミジカサ
アザミsp
ゆり科 ジャノヒゲ
ヤブラン
つゆくさ科 ツユクサ
いね科 エノコロクサ
チヂミザサ
かやつりくさ科 ニシノホンモンジスゲ
らん科 サイハイラン
また木本ではネムノキの樹皮ぐいが見られ、同じ木を2年に渡って利用していました。
箕面公園ではリョウブが同じように集中して食べられていました。