Factor that cause the cleistogamy of Salpiglossis sinuata Ruiz et Pavon.
和訳:Salpiglossis sinuata Ruiz et Pavon.の閉鎖花発生要因について
この論文はSalpiglossis sinuataの閉鎖花について、毎月1回ずつ播種を行い、気温の変化と閉鎖花発生の関係を調査し、開放花と閉鎖花の開花順序を記録しました。
1.緒論
Salpiglossis はRuiz et Pavon.(1794)によって、S.sinuataをタイプ種として創設されたナス科(Solanaceae)の植物です。本属にはS.sinuata Ruiz et Pavon.とS.spinescens Clos.の2種の原種が含まれているとされています(Hunzikerら,1979)。
Salpiglossisという属名は、ギリシャ語のsalpinx(ラッパ,筒の意)と、glossa(舌の意)に由来し、花冠と花柱の形にちなんでいます(井上,1989)。また、種小名のsinuataは「縁が深波状」、spinescensは「やや刺のある」という意味で、いずれも葉の形状に由来しています(Liberty,1996)。
分布域はS.sinuataがチリ及びアルゼンチンの中央部、S.spinescensがチリとされています。
存在する2種のうち、園芸植物として利用されているものはS.sinuataただ1種のみで、体細胞染色体数は2n=2x=44とされています(Hunzikerら,1979)。
Hunzikerら(1979)は、Salpiglossisの近縁属としてLeptoglossisとReyesiaを挙げています。また、BouchetiaをSalpiglossis属に再分類しようとする動きも出ていたようです(D'Arcy,1978)。
現在、花壇や庭を飾る植物素材であるPetuniaの原種であり、また歴史的な父親であるPetunia
integrifolia (Hook.) Schinz et Thell.と1990年まではPetunia属であったCalibrachoa
linearis (Hook.) Wijsmanも1831年の原記載ではそれぞれSalpiglossis
integrifolia Hook.及びSalpiglossis linearis
Hook.となっており、すべてSalpiglossis属に分類されていました(安藤ら,1993)。
Salpiglosisが閉鎖花をつけると最初に報告したのはVilmorin(1894)です。その後、閉鎖花の遺伝についてLeeら(1976)の研究を経て、1979年、Leeらは閉鎖花発生の要因として環境条件の悪化、特に連続した高温と極端な長日で閉鎖花が発生すると報告しました。
著者がSalpiglosisを1999年より実際に栽培を行った結果、夏場の高温で閉鎖花は著しく発生しました。
閉鎖花発生について述べられた文献は数報存在しますが、いずれも高温での発生としか述べられておらず、他の要因については一切報告されていません。
2.材料及び方法
播種は2000年4月から8月までの計5回、供試品種として'ロイヤルディープレッドバイカラー'を用いて行いました。調査は毎月2回(初旬および下旬)、開放花および閉鎖花数をカウンターで数えました。またハウス内の気温はシグマミニキューブ温湿度記録計にて記録しました。開花順序の記録には、供試材料としてSP2を用い、第1花から第120花までを調査しました。
3.結果及び考察
全ての播種区で閉鎖花が認められ、ハウス内温度の上昇とともに閉鎖花割合が増加しました。また、ハウス内気温の下降が開始した9月14日以降も閉鎖花発生割合が増加していることより、これらは株の老化が関係していると思われました。第1〜120花まで調査した結果、第1花から閉鎖花が認められ、第64から102花までは全ての株において閉鎖花となりました。開花中盤以降、閉鎖花発生が増加した理由として株の老化が考えられました。気温の上昇とともに閉鎖花発生割合が増加することより、Leeら(1979)の結果を支持する形となりましたが、温度以外にも株の老化という条件も加味しなければならないことが明らかとなりました。