第1話 ケナフなハナシその3

3月某日、今日も子ども達は元気に学校へ出かけていきいました。
もうすぐ春休みです。

ごはん、ごはん♪あ〜腹へった・・・今日も元気だ、飯がうまいっと、、。
ごはんだ、ごはんだ♪
ふぁ〜〜ふぁ〜〜い、眠くてしょうないわ〜〜〜、、、おはよ。シッポナ君。
なんだよなんだよもう春だっちゅうのに何さえない顔してんだよ。
は、はん?夕べもネットサーフィンとやらで夜更かししてたんだろ。
目が真っ赤だぜ。
そんなことより、飯くれ!腹へって死にそう。
元気でいいねぇ〜元気でいいねぇ。その食欲、ちょっと分けて欲しいわ。
あ〜〜だるぅ〜〜。
あ〜だらしね〜そんな不摂生してるからだよ。
睡眠不足はお肌の大敵…なんだろ?この調子じゃ、あっとゆうまにお肌の曲がり角3つくらい曲がっちゃうんじゃないの?
ふ〜〜んだふ〜んだ、曲がり角3つ曲がったらもとのとこに戻ってくるもん。
それに、不摂生じゃないも〜ん。”春眠暁を覚えず”ってゆーでしょ!?目が赤いのは花粉症なの。い〜わよね、水の中には花粉がなくて。
あ・そあ、そう。それはお気の毒。
それはそうと、3学期ももう終わるけど、学校の紙すきは終わったのか?全然話を聞かなかったけど。
はら?と〜〜っくの昔に終わってるよ。そんなの。
あれ?言わなかったっけ?
言ってないっ!初耳だぜ!ちゃんと教えてくれよなっ。この間の話の続きも。ケナフの発表はどうなったんだ?
ゴメンゴメンアハハ、わすれてたわ。ゴメンゴメン。
紙すきはねぇ、班ごとに分かれてやったらしいけど、B5サイズ2枚くらいしかできなくて、自分の分ってなかったみたい。あの子のクラス6班あるから、クラス全部で12枚?あんまりたくさんできなかったみたいね。
う〜〜ん確か植えたのは、1人一株だったよな。32人で32株のケナフを育てて、B5サイズの紙が12枚……少なくないか?
さあ…さあ、どうだろ?少ないような気もするし……。全部のケナフを使った訳じゃないだろうしね。
まあ、小学校の体験学習なんやから、生産量をどうこう言うこともないと思うけどね。 
 K小学校でのケナフの取り組みを順を追ってみてみようか。

K小学校5年生のケナフ栽培と学習
注:子どもの話に基づく概略です。
指導者側の意図が充分伝わっていないことも考えられます

1)ケナフ栽培の動機
 社会科の学習で環境問題について勉強した。環境を守る植物ケナフを知り、栽培することにした。

2)ケナフの栽培
5月に牛乳パックの植木鉢に種まき 3日目に発芽、1週間で本葉が出る。
  
学級園(露地)に定植、5年生全員、当番制で毎日水やりをする。
  
8月 一番高いもので3m20pまで成長した。(日当たりがよく、植える間隔の広いところでよく育っていた。)
  
9月 開花

11月 葉が落ちて、茎だけになる。

1月 収穫。茎の先にとげのついた実がなっていた。中には種が5個ずつ入っていた。クラスで育てた中で、一株あたり最高28個の種が取れた。

3)ケナフの加工
 刈り取ってすぐ皮をむく。むいたばかりの皮を編んでコースターやしおりを作った。残りのケナフを使って、班ごとに紙すきをした。失敗したりしたけど、班にB5サイズ2枚くらいの紙ができた。

4)ケナフについての学習
ケナフの特徴
・暖かい国に生えているセイタカアワダチソウのような草
・日本では和歌山のような暖かいところでよく育つ
・ほかの植物よりも地球温暖化の原因である二酸化炭素をたくさん吸収するので、環境に優しい。
・皮や茎が紙の材料になるので、森林を守ることに役立っている。

身の回りのものでケナフが使われているものを調べる。
・ティッシュ・ペーパー、ハンバーガーの包み紙、便箋と封筒など実物を集めた。
 その他に壁紙などにも使われている。

今の日本の紙はほとんどが木材を使っている。伝統的な和紙ではコウゾという草を使っていた。木を切りすぎないために、再生紙や、ケナフなどの草から紙を作ることが必要だ。

5)ケナフの発表
ケナフについて学習したことをまとめてスライドなどを使って、学年発表会で発表した。

ケナフについての説明→ケナフの成長スライドを使いながら劇(セリフとナレーション)の形で→ケナフで作った作品の紹介→身の回りのケナフ製品の紹介→まとめ
 (内容は1)4)に準ずる)
だいたいこんなもんよだいたいこんなとこよ。材料の栽培から、加工までを一貫してやっていて、実際の社会の中でケナフがどこに利用されているかとか、和紙のことまで、よく勉強しているし、学習発表もスライドを使ったり、劇の形式にしたり、とても工夫されていて、よくまとまってる。子ども達にも達成感があって、ひとつの学習テーマとしては成功と思われてるやろな。おおむねの主張は正しいといえる。何か、ハッピ−エンド、ちゃんちゃんって感じ?
でも…………でも気になるところがある。
たしかに確かに。前回、私らが話してた生態系の話はふれてない。まあ、小学5年生やから、いろんなこと同時に扱うとややこしてついてこられへんやろからなあ。でも、種ができたときに、先生から「野生化したら困るから、空き地とかにばらまいたらあかんで、まくんやったら自分でちゃんと育てるんやで」とか注意してくれたらええんやけど。生態系の話とか勉強でやると大変やけど、要はそんだけのことやん?種ができてるんやから、絶対子供らは「持って帰ってもええん?」とか、聞いちゃあるで。うちの子は持ってきてないけど……あれ?まさか帰る途中でどっかほかしたんちゃうやろなぁ。
ありそうな話だなあいつならやりそうだな。まさかとは思うけど。たとえ先生から注意されたって今時の子供は素直にきくか?んなこと……。うざったいとか言って捨てちまえばそれっきりだぜ。
まあ、ケナフ学習の話に戻ろうぜ。
そ、そうやね…生態系云々とか、複雑な話はちょっと置いといて、ケナフそのものについてみてみよ。
まず最初に……まず最初に、「ケナフがセイタカアワダチソウのような草」っての、変。全然違うじゃん?
なんでこうなっちゃうの。
そやね。まあ、そやね。でもこれって子供の素直な感想やと思うよ。枯れたケナフの茎って、私も空き地に突っ立ってる枯れたセイタカアワダチソウの茎に似てんな〜って思ったもん。見た感じそっくりやで。でも性質は全然違うよなぁ。セイタカアワダチソウはキク科。ケナフはアオイ科。もちょっとつっこむんやったら、やっぱ、「ハイビスカスやオクラと同じ仲間」または、「みんなの洋服の材料になる綿や麻の仲間」と言った方がいいよなぁ。でもま、ここは子ども自身の感じたままの表現ということで、とりあえずよしとして……
よしとするなよっよしとするなよ。非科学的だっ。なんで教師はこういうマチガイを訂正しないんだよっ。
まあまあ、まあまあ、分類学の勉強してんじゃないんやから。
これをきっかけに、将来セイタカアワダチソウから紙を作る方法とか資源として利用する方法を発明する子が育つかもよ。そんなとこで脱線してたら話が進まへん。小5レベルで考えてや。次いこ次。 
ブツブツ……こんなもん、ちょっと図鑑を広げりゃすぐわかることじゃんかよ。脱線してどうのこうのて言うほどの手間かよ……、おい、…聞いてないな…ったく。
くそっ、じゃ、次っ!
二酸化炭素をほかの植物よりたくさん吸収する=環境に優しい
これも、おかしいっ!
これって……これって、一見もっともらしく聞こえるのよね。私が気になったのは、学年便りで保護者向けにも”5年生ではケナフを栽培します。ケナフは二酸化炭素を多く吸収します。だから環境に優しいのです”って紹介されてたんよ。教える側も、単純にこういう認識なんやろか?
これじゃ…これだけじゃ、自然のしくみの認識不足だよな。二酸化炭素は植物の体を通って循環してるだけ。たくさん吸収しても、それだけじゃ循環のパイプが太くなっただけのことで、二酸化炭素を減らすためには固定化*5する必要があるんだ。だから、ケナフが特に環境にいいという根拠としてはいささか不充分だ。むき出しの裸地よりはケナフでも植えてる方が環境にいいといえるかもしれないが、それならほかの雑草でもそれこそセイタカアワダチソウでも同じだ。
そうそう。そうそう。だから、「ケナフを木材の代わりに使うことによって、森林によって固定された二酸化炭素を固定化されたまま守り、そこで初めて環境を守ることに役立つ力を持った植物」なんよね。これじゃ、プロセス抜きで環境に優しいと言っているような気がする。
さらにさらに、その発表の中の劇のセリフにも気になるくだりがある。
ケナフの成長の台本(一部抜粋)
・植え替えられた苗

「毎日水やり大変やなぁ。」
「ノストラダムスの大予言で地球が滅亡するんやて。」
「地球の空気がなくなっても、ケナフが酸素を出してくれて、ぼくらを助けてくれるんちゃうか。」
「そうやったらうれしいな」
う〜ん、ここんとこねう〜ん、ここんとこね。国語的には、子ども達が言いたいことを子どもらしく表現した言い方なんやけどなぁ。
でもでもこれだと、聞いてる方の受けとる印象はどうだろう。学年発表会での発表ということは、1年生から6年生のケナフの学習をしていない子どもが聞くわけで、とりわけ低学年の子はまるで、ケナフが地球環境の救世主みたいに感じるんじゃないだろうか
それってやっぱりまずい?それって、やっぱりまずい…よね?これじゃ、いたいけな子どもが単純に「そうか、ケナフをたくさん増やせばいいんだ」って思ってしまっても不思議じゃないわなぁ。
そうそうそうそう。だいたい、生き物をいい者と悪者に分けるような印象を与えるのはよくないだろう。ケナフは環境に優しい正義の味方だけど、セイタカアワダチソウは野原を独裁する悪者みたいな……。こういう分け方は得てして人間にとっての都合しか考えていないことが多いからな。自然の立場に立ったらもっと公平な目で見てもらわないと。
それってつまりう〜ん、昔から、虫でも益虫と害虫に分けるみたいなことしてるしなぁ。それは農業などにとっての益と害っちゅうことやから、こと自然環境については、そういうイメージは払拭してみていかんと。
 それとさあ、今の子って、なんかこう正解を求めるというか、物事を○か×かみたいな判断の仕方するやん?この話でゆうたら、『ケナフ紙や再生紙は環境に優しいから○、木材パルプ使ってる紙は森を破壊するから×』みたいな感じでさぁ。
例えば、「ケナフだって本当に環境に役立つためにはいろいろ課題があるんや*6。単純にケナフつこてたら環境に優しいわけとちゃうで」とかいうと「ほなら、何やったらええねん?」「ホンマはケナフはええんかわりんかどっちやねん?」というふうに聞き返してくる
それじゃあ本当の環境教育なら、『環境を守るためにはどうしたらいいか』『今ある課題をどうすれば解決できるか』ということを自分で考えられるようにならないといけないんだ。そのためには『ケナフは環境によい』とか『ケナフのような草で紙を作ることが大事』いうような結論を子どもに教えるだけの勉強じゃ意味ないよ。現時点で結論が出ない方がほんとだと思う。
それは……それは確かにそうだけど、こんなふうに環境問題を勉強しててよ、ケナフで紙作ったって、こんな問題あるし、こんな事が起こってもまずいし、って現実ではいっぱい壁があるわけやけど、それを小学生に突きつけても、何か未来に希望が持てやんようにならへんかなあ。何かもうどうやったって手遅れみたいな印象受けるやん?子どもには未来に希望を見いだせるような教育せんと
あまい!あまい!そんな甘い考え方してるからダメなんじゃないか。だいたい、いまやもっともっと積極的に取り組まないとダメなくらい環境問題は深刻化してるって、おまえが言ったんじゃないか!現実そのものを教えないでどうするんだ?でないと、ケナフが地球環境を破壊することにもなりかねないぜ。
なんで?なんで?それって日本の生態系を攪乱するってこと以外に?
つまりつまり、日本の様な紙の需要が高い先進国で『ケナフ紙は環境に優しい』といった単純な考え方が浸透してしまうと、いろいろな製品にケナフを使うことで大きな付加価値をつけられることになる。つまり、「ケナフを使ってるよ」というと売れるようになるわけだ。もともとケナフ栽培に適しているのは、まさに熱帯雨林の破壊が問題視されているような地域だが、そんな国々で日本に売るためのケナフが増産されていくことになるだろう。限られた土地で金になるケナフ栽培を拡大するにはどうするか、森を切り開きケナフ畑にすることもあるかもしれない。これでは、何のためのケナフ栽培かわからない
そ、そ、そ、そんなそ、そんなぁ、いくら何でもそりゃひどいわ。環境に優しいをうたい文句にしながら、いくら何でもそんなひどいことできへんやろ!
それがあまいってんだよいいや、残念ながら起こりうるね。人間の社会ってのは、経済中心に動いてるだろ。ケナフについてはそういう危惧の声もあがってたはずだぜ。確か。
それじゃあそれじゃあ、まるで、環境を守るためにケナフを勉強したことが無駄どころか、かえってあだになっちゃうやん!
そうだそうだ。だから、中途半端じゃなく、もっと深く学習しないと。
この場合、消費者として*7環境を守るためにはどういうふうに製品を選んだらいいかということを勉強しないといけないわけだ。あるいはどんなメーカーの製品をといってもいいかもしれない。原料の調達時点から、加工工程までちゃんと環境に配慮できているメーカーかどうかを判断しないといけない。
え〜〜〜そんなん、小5には難しすぎるで〜〜。大人でも普通そこまでせえへんもん。エコマークついてたらOKくらいしか普通は見いへんもん。
いやいや、必要になってくると思うよ。そういう勉強は。5年生でなくても中学校ででもいいんだ。インターネットなんかが利用できて、高度情報化社会だとかいいながら、このくらいできないと宝の持ち腐れだよな。おれに言わせりゃよ、世の中どんどん便利になって、人間自体はどんどんバカになってく感じがするぜ。
・・・言われてみれば、面目ない……気もするなぁ。
でもちょっとむずかしとこまで話がいっちゃってるから、軌道修正。
K小の5年生でやって来たケナフ学習で、少なくとも、ここだけはもうちょっと掘り下げた方がええんちゃうって思うことってどんなところがある?
ひとつはひとつはもっと科学的であること。ケナフが環境にいいというのなら、なぜ環境にいいのかということを、もっと科学的に掘り下げて欲しかったと思うよ。もう一点は、子ども達が”環境に優しいケナフ紙”を作ったその行程を子ども達自信が検証すること。
なるほどねなるほど。2点目は例えば、ケナフの収穫量とそれを使ってできた紙の生産量との比較とか、紙を作るのに付随して出てくるゴミや汚水の問題とかそういうことやね。
その通りそうだ。ほかにも、こんな風にできる。学級園でできたケナフで12枚の紙ができた。自分たちのクラスで使うプリントなどを、そうだな例えば1週間分をケナフで作るにはケナフ畑がどのくらいいるか…とか、まあ、いろいろな。自分たちでやったこと、やりっぱなしじゃなくて、きちんと見直せること。そういうことの方が大事じゃないかな。
それならそれやったら、実際問題としてケナフを利用するときに課題となっていることが自然と勉強できるかもね。プリント1クラス分をK小学校全部の分にとか、1週間分を1ヶ月1年分にとか広げて考えていくとか。
そうそうそうそう。ケナフ紙は環境にいいとかなんとかいう結論だけ先に勉強しといて、体験学習で紙すきやって、ああおもしろかったってだけじゃ、ただの環境ごっこじゃないか?
 それともう一つ。ケナフ紙のような非木材原料の紙が、森林を破壊しないから環境に優しいといいながら、どうして木材パルプによる製紙業の現状*8についても勉強しないんだ?単に木材資源を使っているから森林保護の敵という見方は、あまりにも短絡的だ。”割り箸撲滅運動*9”なんてばかげた騒動があったろう。あれといっしょじゃん。非木材の紙を強調しすぎると、こういう考え方も出てくるわけだ。
確かに不公平ねそうやね。林業にたずさわる人たちによると、乱開発はもちろんいけないことだけど、適切に森林資源を利用することが大切だというね。自然林を大切にしながら片方で人工林を育て利用する。木を切ったらちゃんと植林*10する。
そうだそうだ。木材パルプについてももっと勉強すれば、”紙”ってものを通じて森を守るためにできることほかにもありそうじゃん。
そうやねそうやね。”紙”というものにいろんな方向から光を当ててみることによってたくさんのことがわかる。そういう多角的なものの見方が大事だよね。
 でさあ、とにかく今すぐにでも子ども達にできることっていえば……
それはもちろんそりゃもちろん、無駄づかいをしないってことだな。ひとりひとりが紙を無駄にしない。まずはこれが基本。それとリサイクルってとこかな。
あ〜ああ〜あ、結局そこに落ち着いちゃうのね。何かたいそうな勉強してきたのに、結局地道にいくしかないのねぇ。
 二酸化炭素の削減もオゾン層破壊物質も一気に解決できちゃうコスモクリーナー*11なんて発明は、21世紀になっても無理かしら?
何だよそれ?コスモクリーナーって何だよ?
はれ?はれ?”宇宙戦艦ヤマト”知らない?
・・・何か、おまえと話しても無駄なきがしてきた……。

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