■永遠の語らい(とあのかたらい)
◎概要
注)ストーリーや登場人物などについては、上記の公式サイトかミニパラ を参照してください。
タイトル 永遠の語らい 原題:Um Filme Falado 監督・製作年 マノエル・ド・オリヴェイラ 製作年:2003 放映時間など 95分 舞台となる国 ポルトガル、フランス、イタリア、ギリシャ、トルコ、エジプト、イエメン 空間的移動など 移動型:豪華客船による一種のロード・ムービー アクティビティの
ポイント○地中海沿岸の遺跡の様子
○地中海文化圏とイスラム文化圏の範囲
感想一言 ポルトガルの巨匠(95歳)による作品。映画を見た後、地図でアデン湾がどこか見つけたときに、この映画の底深さを見た想いがした。なにげない遺跡観光めぐり映画のようで、実は欧米思想のひとりよがりさとその限界を地理的な範囲・場所で示したヨーロッパ人の自省の映画のようにみえる。イエメンのアデン(Aden)沖で終ってしまう旅は、エデンの東(East of Eden)を連想させるとは考えすぎだろうか。
ポストモダニズムの世界の表現方法のヒントをみたと思った。
配給会社 アルシネテランの公式サイト 公式サイト アルシネテランの公式サイト (トップページから選択できます) ◎アクティビティ
Q1: この映画で客船が立ち寄った港と海域を順に示し、地図で確かめなさい。
A1: 立ち寄った港と、母子の行動などを一覧表にしました。
経由地(港) 国 海洋 母子などの行動 リスボン ポルトガル 大西洋 出発地。バスコ・ダ・ガマ像、ベレンの塔などを船上からみる。 マルセイユ フランス 地中海 地元の漁師とフランス語で会話。遺跡見学。 ナポリ イタリア 地中海 ナポリの卵城、ベスビオ火山、ポンペイの遺跡を見学。観光客が多く、ガイドは英語。 アテネ ギリシャ 地中海
エーゲ海アクロポリスの丘・パルテノン神殿・エレクティオン神殿・円形劇場を見学。ギリシャ正教の神父とフランス語で会話。
イスタンブール トルコ マルマラ海 聖ソフィア大聖堂などを見学。ガイドなしで、母が娘に主にヨーロッパとトルコとの戦争の歴史を説明。 エジプト・スエズ エジプト 地中海
紅海客船がスエズ運河を曳航中に、陸路でピラミッド・スフィンクス見学。休暇滞在中のポルトガル人とナポレオンのエジプト征服について話す。 アデン イエメン アデン湾 母子や船長が、港近くのバザールでお土産品を買う。遺跡見学なし。
Q2: 母子の目的地は、パイロットの父親と待ち合わせの場所であるインドのボンベイ(現ムンバイ)でした。アデン以降のルート・立ち寄り地はどこが考えられますか。
A2: 航海のルートとしては、次の3つが考えられます。地図で確認してください。
1)インドのボンベイに直行
2)パキスタンのカラチ経由で、ボンベイ
3)上記に加えてオマーンやアラブ首長国連邦などに寄港
Q3: アデン湾は、紅海からアラビア海(インド洋)への通過海域です。アデン湾に面した国をあげて、その国々の宗教的特徴を述べなさい。
A3: アデン湾の北側・・・イエメン(アラビア半島)
アデン湾の南側・・・ソマリア(アフリカ大陸)
いずれもイスラム教国で、イスラム原理主義運動が盛んといわれる。
Q4: 映画の後半は、船長主催のディナーでの会話のシーンが大半である。船長及び招かれた人たちの国について整理すること。またその国は欧米諸国のどんなイメージを代表しているか考えなさい。
A4: 人物ごとに一覧表を作成しました。
人物
出身国
出身国からイメージされるもの 船長 アメリカ
(ポーランド移民)現代の覇権国家。 女性実業家 フランス 現代のヨーロッパの中心的な国。中東の国々とも関わりが深い。 女優 イタリア ローマ帝国としてかつて地中海世界、中東、エジプトなどを支配した。 女優・歌手 ギリシャ ギリシャ文化 母親(大学教授) ポルトガル 大航海時代の中心的な国。
ポルトガル人である監督の分身。
この人たちに共通する点は、次のとおり。
1)白人
2)ヨーロッパの言語を数ヶ国語会話できる。
3)社会的な地位や名声を得ている。
Q5: 客船の乗務員やお客さんは、全員がヨーロッパ系の白人のようである。目的地がインドであり、トルコやエジプトなども経由しているのに、なぜアジア系やアラビア系、アフリカ系の人々が乗船していないのだろうか。
A5: 豪華客船による長旅ができる人は、財力もあり時間の余裕もある人である。全員が欧米の白人ということは、世界の富が欧米に集中していることを暗示しており、そのことが近年のアルカイダなどによるテロの理由にもなっている。
Q6: 船長のディナーに招かれた人たちは、数種類のヨーロッパ言語を使えるが、アジアやアラビア、アフリカの言語を話せるだろうか。
A6: (想像だが)話せない。
Q7: アデンに立ち寄った際に、母子や船長が買い物をするシーンがある。このシーンは、マルセイユからエジプトまで以前の立ち寄り地でのシーンと、明らかに内容も映像が異なっている。その違いを整理し、なぜその違いが生じたのか考えなさい。
A7: 立ち寄り地ごとに特徴を整理してみました。
立ち寄り地 マルセイユ
〜 アテネイスタンブール
エジプトアデン 文化圏 ヨーロッパ文化圏
イスラム圏だが歴史的にヨーロッパと関わり深い イスラム文化圏
地元の人などとの交流 遺跡の説明をする地元の人がいる。
遺跡やその背景にある哲学などが話題。
地元の人との交流なし。
トルコとの戦争やナポレオンのエジプト支配などが話題。
地元の人との交流なし。
母子や船長が訪れた店員なども映していない。
お土産品の購入 購入した形跡なし。 母子はアラビア風の服を購入し、客船のディナーに着ていく。 撮影方法、カメラの位置等 オープンエアで自然光。
青々とした空を取り入れ、巨大な遺跡をバックに母子を映す。
歴史の偉大さを示すとともに、安全で自由にゆったりと会話を楽しめる雰囲気。
人口光(バザールの蛍光灯)。
バザールの中の店の2階に隠れて、母子や船長を身を隠して撮ったような感じ。
カメラマン自身に身の危険があったのか、またはテロリストの視線を意識して撮影したものか、いずれにせよ不気味な感じ。
Q8: イスタンブールでは母子がヨーロッパ世界とトルコとの戦争について、エジプトではナポレオンのエジプト征服がポルトガル俳優との会話の中心になっている。素晴らしい文化遺跡よりもヨーロッパとイスラム圏との戦争が、なぜ話題になるのか。
A8: (想像だが)アテネまでの遺跡では、自分たちの祖先の遺跡として見学してきた感じがする。トルコやエジプトは南ヨーロッパから見れば同じ地中海文化圏に入り歴史的にかかわりが深いが、ヨーロッパ人としては異文化(との衝突)を意識せざるえない地域といえる。
特にエジプトではピラミッドなどの建設技術などにはふれず、もっぱらナポレオンによる征服が話題になっているのは、違和感が大きい。エジプト人ならピラミッドの前でナポレオンを話題にすることはないだろう。
ヨーロッパ人としては、これらの文化遺跡の素晴らしさを単純に認めることができず、ヨーロッパと異文化との関係(戦争)を思い起こしてしまうのだろうか。
Q9: それまでの寄港地では、お土産を買っていなかったようだが、アデンではなぜ母子はアラビアの服を、船長は(どちらかといえばアフリカ風の)人形をお土産として購入したのだろうか。
A9: (想像だが)ヨーロッパでは普段手に入らない独特のデザインであるから。
また、異文化のものを身近において楽しむことが、その文化を理解するのに役立ち、また子どもの教育にもよいと考えたから。
Q10: 娘は船長からプレゼントされた人形を最後まで抱えていた。このことは、どんなことを暗示しているか
A10: 欧米人の異文化への素朴で純粋なあこがれなどの好意が、イスラム圏の一部の人(原理主義者など)には通じないことを暗示しているように感じる。問題の根深さ、解決の困難さを予見させる。
Q11: 航海はアデン湾で終わり、アラビア海やインド洋へは行けなかった。これは、欧米的な考え方がヨーロッパに近いエジプトあたりまでは何とか通用するが、イスラム文化圏であるアデン湾あたりになると通用しなくなるということ、つまりヨーロッパ文化圏の限界と他の文化圏との対立を、航海の予期せぬ終了地点によって示したものと考えられないだろうか。
A10: この映画の狙いの一つに(決して全てではない)上記のような点があるかもしれないが、他にも多様な解釈、見方があるだろう。こうした多様な解釈、見方を観客に想起させることが、この映画の優れた点のひとつといえる。
2004.07.31 渋谷シネマ・ソサイエティ(渋谷・道玄坂)
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