食の文化通信

2001.7.5

■WINE編 初心者Q&A

 wine1:ボルドーワイン・グランクリュ特集

フードビジネスコンサルタント  VINCENT Systems
調理師・1級建築士         池田晴哉  


 ワイン編第1号を専門家に近い人を対象に、内容を限定して書きましたので、さっそくワインに詳しくないという渡辺君から、次のような質問がありました。

1.どうして1997年のワインを今話題にするのですか?

 一般消費者からみると、ボルドーワインの最新ニュースになるからです。

 ワインにはいろいろな熟成方法と熟成期間があり、飲みごろも違います。

 早飲みの代表がおなじみのボジョレーで、発酵期間は1ヶ月、その後瓶詰めで1ヶ月で出荷します。つまり収穫年の10月に飲みごろとなるのがヌーボーです。
 日本でも島根県の出雲市でつくっているワインは6月に収穫し、約1ヶ月の発酵・熟成で、8月には出荷します(ここではデラウエア種などの食用ぶどうを使用しているので収穫時期が早い)。

 ボルドーでは、発酵後約12〜18ヶ月樽で熟成し、その後ビンで2年近く置き、この間もビン内熟成をする。従ってブドウを収穫してから約3年後にシャトーから出荷されます。
 1997年ものは、3年後のVinexpo 2000に出品。販売業者が購入し実際にユーザーの手元に入るには、早くても半年かかるので2001年、つまり今ようやく販売し始めたかどうかの時期なのです。
 ボルドーの高級ワイン・グランクリューの飲み頃は、早くても5年後からであり、一般には2002年から高級ワインを扱うデパートやワイン専門店に並ぶのが普通です。最も良い飲みごろは8〜15年で、なかには20年以上を要するものもある。気の長い話なのです。

 なお、かつては樽熟成に4〜5年かけていたスペインの高級ワインなどがありました。これだと出荷は5〜6年後となります。しかし、この熟成方法ではワインの風味が重くなりすぎるという評価がされ、現在はボルドーと同じように3年間の熟成で出荷されるものが多くなっています。

関連Q
ボルドーのグランクリューは、赤ワインだけですか?

 ボルドーのグランクリューの格付けは、赤ワインに限定されています。

 例外として格付けされている白ワインは、貴腐ワインのバルサックとソーテルンのみです。これ以外は、たとえ4大シャトーの白ワインでもグランクリューの指定はされず、「AOCボルドー」という表記になります。
(注:AOCについては、Q9で述べます。)

2.グランクリュ・ワインの値段は日本ではボトルでどのくらいですか?

 ボルドーのグランクリューの値段はさまざまです。

 通常のグランクリューは、若い年(出荷した年に近いもの)で8千円というのが普通。5千円前後〜1万円と思えばよい。
 なお、サンテミリオンは一般に価格は低く、3千円〜5千円です。
 不況が続く日本では、このクラスの高級品もそうは売れないので、時々在庫整理で出ることも多くなり、3千円前後で見かける。小遣いの余裕のある時には、ストックすると良いでしょう。

 ただし最高級品といえる4大シャトーの「シャトーラトゥール」や「シャトーオーブリオン」や「シャートーマルゴー」等は、近年のもので1本約1.5〜2.5万が普通です。15年くらい前の良い年の「ラトゥール」は、5〜6万します。
 この手の最高級品は、最近は国際的な投資の対象になっていて、ドイツ人やアメリカ人、かつてはタイ人などが買い占めていて、この状況が今も続いています。
 ポムロールのシャトーペトリュス(Petrys)は、格付けなしの地域のものですが、4大シャトーより高い価格です(8万円近い)。

 骨董品的なワインを除くと、価格の最も高いのはブルゴーニュで生産されるラ・ロマネコンティ(La Romanee Conti)で、12〜20万円ととんでもない価格です。わずか1.8haの小さい畑から造り出されている。

 注:1本の容量は750mlが標準。

3.「ポムロールは、長い間格付けなしで通しています」とは、どんな意味があるのですか?

 一般に高い評価を獲得していて、格付けがなくても人気が高いのです。

 ポムロールのシャトー評価は、全体の水準がボルドー地域内5地区内で最も高いとされていて、その評価で良しとしているのでしょう。Q2で述べたシャトーペトリュスのように、格付けがなくても高い評価のワインが多くあります。
 「格付けに何の意味があるのか」「客観的な格付けなどありえない」という考えも強いようで、「今さら格付けなんて」という気持ちのようです。
 また、ポムロールは生産量が少なく、品薄状態が続いているため価格が安定しており、特に格付けがなくても「AOC Pomerol」の表示だけで十分やっていける状況だと思います。

 日本酒では品評会で受賞できたかどうかが、その後の価格や売れ行きに大きく影響するようですが、日本のように公的機関や雑誌がつけた「格付け」(ブランド価値)が珍重される傾向は小さいようで、個人それぞれの好みを尊重するという文化の違いがあるのかもしれません。

 ただしサンテミリオンでは、独自のグランクリュー制度を導入しています。シャトーが多くあり、生産量も多く、商品差別化の為にAOCの格付けのみでは満足できなかったようです。私の所有する1本も、前回の審査でグランクリューでなくなっています。競争が余り激しいのもどうかとおもいます。

4.シャトーでは、ぶどうを自ら作っているのですか?

 一般的にシャトー所有の畑で生産したぶどうのみを使用します。

 フランスをはじめAOC制度のある国では、自らのぶどう園(畑)または同一地域内で収穫したもの以外は、AOC表示のワインの材料として使ってはいけないことになっています。
 ボルドーのグランクリューも、シャトー所有の畑で生産したぶどうのみを使用すると決められています。
ラベルには「GRAND CRU CLASSE」と表示があるので判りやすい。

 桶買いの場合では、同一地域であれば「AOCマルゴー」(マルゴー地域内のぶどうを使用)や「AOCボルドー」(ボルドー地域内のぶどうを使用:注)と表示できます。
 こうした桶買いのワインは、ネゴシアンというワイン商社(仲買企業:クルーズ社やコーディア社など)が生産しているものが多い。かれらは自らぶどう畑を所有するものやシャトーを経営するものもあるが、畑を所有しないものもあります。

注)「AOCボルドー」の表示は、普通クラスのワインと、グランクリューシャトーの白ワインとで両方使用している。白ワイン購入時は生産者のチェックして確かめること。

 日本酒の製造とは大きく異なっています。ワインの場合はブドウ生産(農業)と製造業が一体化した「1.5次産業」といえます。日本酒の蔵元は一般に酒米の栽培しておらず、産業分類では食料品製造業(第2次産業)です。もっとも、ごく少数ですが酒米の生産から自ら行う蔵元もあります。フジテレビ系列のドラマ「夏子の酒」がそうした蔵元の話でした。

5.熟成方法で「新樽使用」にはどんな意味があるのですか?

 新樽の強い香りの効果に期待して使用する場合が多い。

 オークでつくる新樽は香りが強い。その香りによる効果に期待して使用する場合が多い。しかし、熟成期間は短くしないと香りがきつくなりすぎるなど、逆効果となる場合もあります。
 また、新樽はゆるんでいないので、外気との遮断性能が高い。その効果への期待もあります。

 古樽使用の場合では、反対にゆるみの部分からの外気との交流が良い効果を生むことが知られてます。一概に新樽が良いとか、古樽が良いとかいうものではありません。

 なお樽は、ボルドーに流下するガロンヌ川の上流にあたるアルマニャツク周辺の樫が多く使われてきたが、現在はアメリカ・オークの使用も多い。

6.シャトーの外観の説明をなぜしているのですか?

 シャトー見学を行う人のために、外観の説明を加えました。

 ボルドーのシャトーは、予約さえすれば見学に積極的に対応してくれます。美しいシャトーを見学されるのも楽しいと思い、外観の説明を加えました。
 ただし、日曜とぶどう収穫期や繁忙期は除きます。また直販はしないのが普通です。

 ボルドー市内からは、各地域をめぐるシャトー見学バスツアーが、毎日出ているので、これを利用するのが簡便で良い(除く夏休みと日・祝祭日)。
 北西方向のメドックと北東方向のサンテミリオンやポムロールを2日間で見学するのが上手な方法でお薦めです。

7.セカンドワインとは何ですか?

 グランクリューの次ランクのものを、セカンドワインとして別のネーミングで発売している。

 グランクリューの格付けに値いしないが、次ランクなら十分な品質と判断したものを、セカンドワインとして別のネーミングで発売しています。
 価格的には、グランクリューが8千円とすると、セカンドワインは3〜3.5千円が普通です。

 こんな例もあります。有名な高級シャトーで、当たり年でないと判断して、その年度はグランクリュー格付けをせず、全てをセカンドワインとして出荷したケースがありました。当たり年でないといっても、その年の最高級ワインを安く買えたのですから、このセカンドワインを買った人はラッキーだったと思います。

8.セパージュとは何ですか?

 ぶどう品種別の混入割合のことです。

 この場合は、出荷するワインの「ぶどう品種別の混入割合のこと」と答えるのがよろしいかと思います。
 ワインをつくるぶどうは、食用に用いるマスカット種がドイツなどで使われる以外は、ワイン専用種です。メルローやカベルネ・ソービニヨンとは、そうしたワイン専用種の名称で、それぞれに味や香りに特徴があり、混入することで複雑な味わいや香りを創り出します。
 ボルドーのグランクリューには、数種のぶどうを混入して上等なものにする技と経験が活かされており、それが高い評価になっているのです。

 最近は、メルローやカベルネ・ソービニヨンなどの単一種でワインを作るケースも増えました。単一種でも上手につくると美味いワインは出来ま技術を持たないために、単一種でワインを作っている地域が多いようです。

9.AOCとは何ですか?

 地域・生産量・ぶどうの品種等の細かい規制を満たしたワインのみが、AOC表示が出来るという法律があります。

 AOC表示とは、ワインのラベルにAPPELA [地名]CONTROREEと表示してあるもののこと。AOC表示のあるワインは、フランスのワイン生産の1/5しかなく、高級ワインに入るのです。

 AOC表示の根拠となる法律は、「原産地名呼称規制法 Appellation d'Origine Controlee」といいます。
 これは、地域・生産量・ぶどうの品種等の細かい規制を満たしたワインのみが、AOC表示が出来るという法律です。指定地域が狭くなるほど、条件が厳しくなり、したがつて品質もよくなる

 ボルドーでは、BORDEAUX
        MEDOC
        HAUT-MEDOC
        SAINT-JULIEN,SAINT-ESTEPHE,PAUILLAC,MARGAUX
という段階で高級となります。
 メドック地域のグランクリューは、最下段に示した地名表示がされているのが普通です。
 なお、近年はメドックのうちの北側バーメドックが、通常は「メドック」と表示して良いことになっていて、「オーメドック」と名乗るグランクリューも少数ではあるが存在します。

 AOCは、地域でAOC委員会を結成し、国と交渉すれば取得が可能です。
 最近ではラングドックワイン委員会(C.I,V,L.)が、1999年にカバルデス(Cabardes)を認定している。このラングドック・ルシオン地域(地中海に面しカルカソンヌ・ナルボンヌ・モンペリエ・ニームまでの地域)は、フランスワインの大生産地です。ただしAOCは11と少なく、AOCランクの下位のVDQSランクで知られる。けっこういけるワインも多い。

 AOCランクのワインは、フランスのワイン生産の1/5しかなく、このランクでも高級ワインに入るのです。価格は900円〜2500円まで、色々と幅が広い。
 普及品は VAN DE PEYS D'OC と表示のあるもので、テーブルワインと表示のあるのも同等品です。価格は、380円〜1,000円まで。

 安売りの「やまや」(塩釜市)が販売協力するジャスコなどでは、普及品の380円クラスから高級シャトーものまで幅広く揃えています。2001年5月末には、サンテミリオン・プルミエクリューが2,980円で販売していた。不況で放出という感じでした。


 wine1:ボルドーワイン・グランクリュ特集 <<< 食の文化通信 >>> 初心者Q&Aその2

Top Pageへ
(GeoCities)

サイト内容一覧
(geocities)