食の文化通信

2001.7.20

■WINE編

 ワインの基礎知識 その1:
  
ぶどうの成長過程とその収穫---ワインの出来るまで

フードビジネスコンサルタント  VINCENT Systems
調理師・1級建築士         池田晴哉  


 wine1は、6月開催のボルドー(フランス)VENEXPO2001に併せて、ボルドー地域のグランクリュー・ワイン(高級格付けワイン)のことを、専門家に近い人を対象に記事にしました。

 ところが、渡辺君から質問が色々あり、QandAという形式で基礎的な事柄を示しました。質問内容をみると本当に基本的なことばかりで、wine1の内容は初心者には難しかったと思います。

 そこで、初心者向けにワインの基礎的なことを色々とコラム的に展開する事にしました。

質問: ぶどうの生長過程は、どうなのでしょうか?
ワインの出来るまでの手順(ワインの製法)は?
フランスなどでは、ワインの醸造業者は、ぶどう生産者を兼ねているのでしょうか?
回答: フランスやスペインなどのワインの醸造元では、一般にワイン用のぶどうを自家生産しており、自分の所で収穫したぶどうを使ってワインをつくります。つまり、農業生産者(農家)であり、また一方でワインという製品をつくる生産工場・企業でもあるのが普通です。

AOC制度とワインの製法

 ワイン用のぶどうを自家生産し、そのぶどうを使ってワインをつくるのは、AOC制度(原産地統制呼称法:詳しくは、先のQ&Aを参照のこと)との関係があり、この形態を取らないと格付けが得られないという事情があります。

 日本には、AOC制度のような格付け制度はありません。大手メーカーの普及品〜中級品のワインの多くは、海外からぶどう液やワインを購入して、日本で作ったぶどうやワインを混ぜ合わせています。
 これは、日本酒の大手メーカーが各地から桶買いを行いブレンドして大量販売しているのと同じことです。手っ取り早く品質が安定し、消費者に安価に提供できる飲み物になる。

 しかし、そうしたやり方をAOC制度は排除している訳です。つまり大量生産・大量販売方式から、伝統的な生産方式をAOC制度が守っている面があります。

 もちろん日本の大メーカーの高価な高級ワインには、産地指定やぶどう品種指定を厳格に行い、その製法もボルドーに負けないものがあります。しかし、混ぜ合わせワインとの区別が消費者には判りにくい。

 また、自家農場でぶどうを収穫して、そのぶどうのみでワインを生産している中小の醸造所や組合も数多くあります。しかし総生産量は少なく、差別化が認知されていない。つまり、一般の消費者が日本のワインをきちんと評価する状況に至っていないのです。

ワインが出来るまでの手順(ワインの製法)は?

1.ぶどうの成長過程とその収穫

苗づくり
 苗は、苗づくりの専門業者がいる。アメリカより元苗を取り寄せて、それに接ぎ木する。ろう付けして苗床に立てる。
 春畑に移し、その年の秋にまた引き抜き、冷蔵して翌春まで保存。
(ここまでが苗づくりの専門業者の仕事)

シャトーの畑にこの苗を植える。
 シャトーの畑に、古くなったり育ちぐあいの悪いぶどうを引き抜き、この苗を植える。
 この苗は3年後(初期からは4年後)にぶどうを収穫する。
 (注:この4年後の収穫という制限はAOC法で決められている)

 ぶどうは、4月に葉が出揃う。このころ(3〜5月)に霜が降りたり、氷点下以下になると大変なことになる。近年では、1991年にボルドーで被害があつた。これは、花芽を駄目にするからである。

剪定
 葉が伸びる時期に「剪定」
をする。
 剪定の高さにあわせトラクターで作業するが、下の部分は人の手で行う。

授粉(6月)
 6月が授紛期(約2週間)。
「暖かくて乾燥していて、かつ風が吹きすぎない」ことが大切な気候条件となる。これから収穫期まで暑い日が続くと大豊作となる。

ぶどうの実の間引きなど(8月)
 
8月にぶどうの実の間引き作業をする。(この作業をしないところもある)
 かびを防ぐため、ボルドー混合液(硫酸銅と石灰)で消毒。

ぶどうの収穫(9〜10月)
 
ブドウの実は、秋(9月〜10月)に収穫する。約15日間くらい摘み取りにかかる。
 この収穫には多くの人手が要り、学生や外国人が参加して最終日には収穫祭的なパーティが開催される。
 なお、南半球のオーストラリアでは、2〜3月に収穫。

 高級ワインの生産地では、丁寧に手で摘み、品質を確認し選別(4人以上で選別)して醸造に入る。
 高級ワインでなくても、手摘みが原則です。
 ぶどうの選別等の手間の掛かり方が、高級ワインとの違いとなります。

2.ワインの製法(醸造方法)

その1. ぶどうを「除梗」する。
 梗があると、酸度が増すのと、青臭い臭いや味がつくので取り除く。

その2. この後の手順は、熟成前までは、白と赤では異なる。

白ワイン

赤ワイン

(破砕)

破 砕

圧 搾

発酵前処理

浄 化

発 酵

発 酵

引き抜き酒の取り出し

おり引きと濾過

圧 搾

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   

   

グランクリュー
10〜12ヶ月間

熟 成

グランクリュー
12〜20ヶ月間

濾 過

通常は短期間

瓶詰め
瓶熟成

赤の高級ワイン
2〜数年間

出 荷

3.白ワインの製造手順

圧搾
 白では、圧搾機にかけられゆっくり「圧搾」される。軽い圧搾で出るのが最上級品となり、最も香りが高いとされている。
 その後加圧され、「一番搾り」「二番搾り」「三番搾り」となる。それぞれは、別々に発酵されて違う製品に仕上がる。(勿論、これらを混ぜ合わせる場合もある)

 なお、圧搾する前にフランスなどでは「破砕」する場合も多いが、スペインでは破砕せず圧搾から入るのが普通である。

浄化
 
これらの搾り汁には、固形物(果皮や種子など)が混入しているので、1日程度置かれた後、その上澄みのみを取り出す(「浄化」という)。

発酵
 
これを「発酵」させる。発酵中の温度コントロールで、糖分のアルコール分解や炭酸ガスの放出過程を制御することで適切な芳香を得る。
 発酵期間は、10〜14日間程度。

おり引きと濾過
 「おり」とは、発酵中に生じた沈殿物のこと。これを取り除くために、ワインの上ずみを別の樽などに移し替える(これを、おり引きという)。この作業は、数回繰り返される。
 また、この間に細かい不純物を除去するために濾過をする。白ワインでは、透明になるまで濾過する場合が多い。

 この後、熟成に入る。(以下は、赤ワインと同じ)

4.赤ワインの製造手順

破砕
 赤では、まず、「破砕」を行うために破砕機にかけられる。
 どろどろの果汁は、容器に移される。

発酵前処置
 硫黄酸化物が使われるのが普通。また、
 糖分と酸味の測定を行い、必要に応じて調整を行う。
 ボルドーは、寒い気候のためにぶどうの糖度が低く、アルコールを加えて糖度を高める場合もある。

発酵
 皮・種子も一緒に発酵する
 果皮を発酵中に発生する二酸化炭素が押し上げて、発酵糟の上部に帽子状の固まりが出来る。
 これが、赤の色の素になるので、攪拌したり果汁をかけたりの操作を行う。果汁に果皮の色が完全に出し切ると一次発酵は終了。

 この果汁を、別の容器に移し替え、二次発酵に入る。
 なお、発酵中の温度は、常時30度を超えないことが肝要とされている。
 発酵期間は、10〜16日間程度(これで十分発酵している)。

引き抜き酒の取り出し
 容器の下にたまった沈殿物(初期に帽子状に固まったものが最後に沈殿したもの)から、引き抜き酒を取り出す。これは色が濃くきめの粗いものであるが、上手くすると上等なワインとなる。
 醸造関係者の役得とされたこともあるが、現在は、これも熟成に入る。その一部をブレンドに使用する。

圧搾
 発酵後のものを圧搾する。タンニンを多く含み色は濃い。

 引き抜き酒を取った後の皮などがその対象となり、容器の下の部分(全体の1/3)が主である。上部の果汁はポンプ等で吸い上げられて別の容器に移し替えられる。
 この間の容器は、一部のシャトーを除いてステンレス糟が使われている。

5.熟成から出荷まで(白ワイン・赤ワイン共通)

熟成
 初期熟成は、ステンレス糟(タンク)で行い、年明けに樽に移す
 この作業までは、ぶどうの種別に行う。樽つめも品種別に行い、ある期間経過後、ブレンド割合に応じて樽に詰め替え熟成する。この方法や時期は、各シャトーで異なる。

 樽につめて熟成に入る。ボルドーのグランクリューなどの赤ワインでは12〜20ヶ月、白ワインでは10〜12ヶ月が樽熟成期間。スペインの赤の高級ワインでは3〜5年となる。
 熟成期間や樽の新樽利用割合などは、各醸造所の判断により一定していない。新樽は、タンニンの強い時に多く使われる傾向がある。
 樽の消毒は、硫黄を焼き10分程度入れておく。

 この間も「おり引き」は数回繰り返される。「ラッキング」とも呼ばれ、「上部のおりのないワインを抜く。最後の方はロウソクでおりの出るまで、小コップで汲み取る。」おりが出始めたら、残りはシャトーの人で飲む。

濾過
 以前は、細かい「おり」を取るため、卵白を使用しており引きしていて、現在もそのメソードに従うところもあるが、大部分は、濾過器で濾過する。
 卵白使用の場合は、「一樽に6個分の卵白と塩をミキサーなどで攪拌して入れる」というメソードのシャトーが実際にある。
 La Cabanne(Pomerol)、Palmer(Cantenac Margaux)等のボルドーグランクリューで実施。

瓶詰めと瓶熟成
 瓶詰め後も、瓶熟成をする。赤の高級ワインで2〜数年かける。
 白はモンランシェなどの超高級白ワインを除くと短期間。
 (瓶詰め後、すぐに出荷するのが新酒。補足参照)

出荷
 ネゴシアンや酒問屋などには、瓶熟成期間中でも早期出荷する場合がある。
(その場合は、酒問屋等で瓶熟成を続けるのが常識)


補足1:ロゼワインの製法

 ロゼワインは、国や地域によって製法が様々で、白ワインや赤ワインよりも多様になります。
 フランスAOCでは、基本的には赤ワインと同じ製法ですが、発酵初期の段階で果皮や種子を除去する点が異なります。これは、淡い色づけとフルーティーな味わいに仕上げるためです。

 他の国や地域では、白ワインと赤ワインをブレンドして作る地域や、赤いぶどうを使用して白ワインと同様の製法で初期段階で果皮や種子を除去して作る地域など、様々な製法をとっています。

補足2:新酒でのむワイン

 醸造して1ヶ月後に、瓶詰めして即売り出すのが、ボジョレ・ヌボー
 この若飲みワインは、以前から例外的に早く飲み始めるワインとして人気が高かったが、今ほどの量は出荷していなかった。日本でバブル期に人気を高めて、その後定着したのが大きいようです。
 ボジョレーは、以前からパリのビストロ(食堂)の親父たちに人気のワインでした。

 これとミュスカデ(白)(写真右)は、1970年代のパリで好かれた安ワインで、生かきに合わせて飲むのがよいといわれた。

 オーストリアのホイリガーとして飲むワイン(ここも1〜2ヶ月の醸造期間で飲みはじめる)も新酒。
 11月11日〜12月31日まで、新酒として販売が許可されている。ウイーンのが有名。
 1784年8月17日にヨーゼフ2世が許可して以後、今日に至っている。

 また、スペインやイタリアの農家のワインは、新酒に近い段階で飲み始めるものが大部分である。

おまけ情報 夏にのむワイン

  ミュスカデ(写真右)を良く冷やして飲む。
  アンジューのロゼ(写真左)も良い(これも冷やす)。
  ともに900円程度で、ビール2本分強の費用ですむ。


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