アケボノソウ
アケボノソウは、渓流沿いに咲く、清楚な花です。
9月下旬、たくさんの虫たちが集まっていました。
花に虫が集まるのはあたりまえ。 花は蜜を出し、虫たちを集め、花粉を運んでもらいます。 しかし、この花に集まっている虫たちはどこをなめているのかというと、なんと、花びらにある黄緑色のパッチ模様の部分をなめています。 この部分から蜜が出ているようです。
中央の写真にはハエが2匹写っていますが、そのうちの右下の個体が口吻を伸ばしているのが分かります。 下の写真では、アリがやはりこの模様の部分で蜜をなめています。 下の写真の左上の部分には茶色のハナグモの仲間が潜んでいますが、これは花に来る虫を待ち伏せているので、蜜とは関係なさそうです。
普通、花の蜜は、メシベのつけ根あたりから出されます。 虫たちを花の中央部の一点に集め、そのことを前提に、それぞれの植物は、花粉を効果的に運搬してもらう花のつくりを工夫しています。
もっとも、蜜を出すところは、植物によっては花だけとは限りません。 サクラやアカメガシワの葉の基部、
カラスノエンドウの托葉、イタドリの節などにも蜜腺があります。 これらは花外蜜腺と呼ばれ、蜜を出すことでアリを誘引し、アリによって食葉性の虫たちから守ってもらうねらいがあるようです。
では、アケボノソウの花弁にある蜜腺は、どのように考えたらいいのでしょうか。
私なりに、3つ考えました。
@ 花弁の中央にある蜜腺に集まる虫で、ちゃんと花粉を運んでもらい、メシベの柱頭で
受粉できている。
A めしべの根元にある受粉に役立つ大切な蜜を、受粉に役立たない虫たちに取られな
いように、これらの虫たちを遠ざけるための蜜腺を、花弁の中央に別に用意した。
B 花外蜜腺と同じ理由で、アリに来てもらうことで花を守ろうとしている。
あなたはどの考えに賛成ですか? @については、どうも花のつくりからして納得がいきません。 オシベの位置は花弁と花弁の間にあり、葯は蜜腺の真上にはありません。 それにメシベの柱頭にも虫が近づいてくれそうにもありません。 Aについては、めしべの根元からも蜜が出ている確認ができていません。
正解はここには無いCかもしれません。 とにかくもう少し観察を続ける必要がありそうです。もしヒントになるような情報がありましたら、ぜひお知らせください。
(以下、'09.10.16.記入)
上は'06年までに書いた記事です。 その後もアケボノソウの観察を続け、おもしろい結果も得ました。 この続きは
こちらでどうぞ。