ヒイラギ

 クリスマスが近づくと、私の家の近所でも、イルミネーションを楽しむ家庭が多くなりました。 イルミネーションと並んで、リースもよく目にします。 このクリスマス・リースは、伝統的には、モミ(の仲間)の葉をベースに、ヒイラギ、松かさ、ベルなどをつけて作ります。
 クリスマス(キリスト降誕祭)は、ヨーロッパ各地にあった冬至祭が、キリスト教の影響を受けたものとされています。 リースは十九世紀に普及しましたが、緑は農作物の生長を、ヒイラギの実の赤は太陽の炎と生命力を、ヒイラギのとげやベルの音は魔よけのために、そして松かさは豊穣多産の象徴として飾られたようです。 また、ヒイラギの葉の刺は、キリストが十字架につけられる時にかぶせられたイバラの冠につながり、キリスト受難の象徴とされ、ヒイラギの赤い実は、救いのためにキリストが流した血を意味するとされています。
 このように、クリスマスリースの中で、ヒイラギの持つ意味には大きなものがあります。 ところが、このヒイラギは、福島県以西から沖縄、台湾に分布する常緑低木のヒイラギではありません。 クリスマスが近づくと、この日本のヒイラギの苗が園芸店などで売られているのを見かけますが・・・
 混乱を避けるために、以後、クリスマス・リースに使う“ヒイラギ”を、「ホリー」(holly:発音に従うなら「ハリー」でしょうが・・・)と表し、日本に自生している「ヒイラギ」と区別することにします。
 リースでは、ホリーの刺とともに、赤い実にも意味があることを書きましたが、ヒイラギはこの時期には実をつけていません。 ヒイラギは11月に白い花を咲かせ(下の写真)、果実が熟するのは、翌年の初夏です。しかも実の色は黒です。
ヒイラギ 撮影日:H17.11.20.  
 さらに、ホリーの葉は互生ですが、ヒイラギの葉は対生です。 似ているのは、刺のある葉くらいなのです。 ヨーロッパやアメリカからホリーのことが日本に伝わった時に、葉の似ている日本のヒイラギに当てはめたのでしょう。 日本でもヒイラギは魔よけの力があると信じられており、庭の鬼門の方角にヒイラギを植えたり、節分(せつぶん)には、柊の枝葉にイワシの頭をさして戸口に立てて魔除けにする風習があります。 そんなことも関係したかもしれません。
 ヒイラギとホリーは、上に書いたように、全く異なる植物です。 ヒイラギ(Osmanthus heterophyllus)はモクセイ科で、キンモクセイなどと同じ属に属しますし、ホリーの仲間はモチノキ科に属します。
 欧米でリースに使用するホリーは、セイヨウヒイラギ(Ilex aquifolium)やアメリカヒイラギ(Ilex opaca)です。 最近は日本でもホリーの仲間であるシナヒイラギ(ヒイラギモチ:Ilex cornuta)をよく目にするようになりました。 これは中国原産で、チャイニーズ・ホーリーなどと呼ばれたりしています。 葉の形は、セイヨウヒイラギなどと異なり、かなり長方形っぽい葉ですが、ちゃんと12月に赤い実を見ることができます(下の写真)。
シナヒイラギ 撮影日:H17.11.23.