イヌビワ その3 (イヌビワの仲間たち)

 イヌビワとイヌビワコバチのような関係は、他にも見られるのでしょうか? このことを説明するために、このページでは「身近な自然」を少し離れます。
 イヌビワの仲間( Ficus属 )の分布の中心は暖かい地方にあります。 下の写真は7月末に石垣島と西表島で撮ったイヌビワの仲間ですが、2日間の旅で目のついたものだけですので、まだ他にも種類があります。 石垣あたりまで来ると、Ficus属の種類が増えるということを理解していただければいいでしょう。


 上段左から
   アカメイヌビワ、 アコウ、 ガジュマル
 中段左から
   ハマイヌビワ、 ホソバムクイヌビワ、 ギランイヌビワ
 下段
   オオバイヌビワ
 熱帯になれば、Ficus属の種類はさらに増えます。 園芸的に育てられているインドゴムノキもFicus属で、花嚢をつけることがあります(左の写真)。
 大阪付近でも見られる、オオイタビ、イタビカズラ、ヒメイタビは、ツル性のFicus属ですが、熱帯雨林では、ツル性のFicus属もたくさん見られます。 右の写真は、ボルネオで撮った写真で、太い樹の周囲にくっついている丸太のようなものがツル性のFicus属で、「絞め殺し植物」と呼ばれています。
 この「絞め殺し植物」は、他の木の樹上で発芽し、多湿の空気から水を補給しながらその樹に沿って根と枝を伸ばし、根が地表に達すると急激に成長し、ついには取り付いた樹を絞め殺してしまいます。上の写真も、取り付かれた元の樹は、もうほとんど見えません。
 これらFicus属は、イヌビワがいつもイヌビワコバチの生育場所を提供していたように、ある程度成長すれば、コバチ類のための花嚢を、いつもつけているようになります。 動物にとって、いざとなればいつでも食べることのできる花嚢をつけているFicus属は、熱帯雨林の食物連鎖の大切な位置を占めているのです。

 これらのFicus属のそれぞれの種は、それぞれ違った種類のコバチ類と深い関係にあります。 最近のDNA分析による系統樹を見ると、Ficus属の系統樹と、これらFicus属と関係するコバチ類の系統樹は、みごとに一致することが分かってきました。 Ficus属とコバチ類は、互いに深い相互作用を保ちながら進化してきたことになります。
 互いに影響を及ぼしながら進化することを「共進化」といいます。 共進化は生物の多様性生成における重要な要因の1つと考えられています。

 なお参考までに、果物店で売られているイチジクは、受粉しなくても花嚢が発達する栽培品種で、雌株だけが育てられています。 コバチ類は関係しませんし、堅い種子もできていません(右の写真)。