クマバチ

 フジの花にクマバチが来ていました。 また、近くではオスがメスを待ちかまえてホバリングしていました(右)。 体長は2cm以上もある大きなハチで、羽音も大きく、近づくのはいかにも怖そうです。 でも、クマバチの関心は蜜と花粉、刺す針は持っていますが、攻撃性は低く、十分近寄って写真を撮らせてもらいました(下)。

 ハチに刺されることに関しては、誤解が多いようです。 全てハチと名の付くものは凶暴で、人を襲うようなイメージを持っている人がいます。 また1981年に、田中各栄元首相秘書官榎本敏夫の前夫人である榎本三恵子がロッキード裁判丸紅ルート公判での証言後の記者会見で、ハチは一度刺したら死ぬが、その覚悟での証言である旨の発言がありました。 この“ハチの一刺し”発言は、当時有名になりましたが、現在でもそのように思っている人がいるのではないでしょうか。
 人を積極的に襲うのは、集団で営巣する社会性のハチが巣を守ろうとする場合のみです。 また、一度刺したら死ぬのは、ミツバチに限られます。

 ハチの種類は多く、さまざまな生き方をしています。 以下にハチの進化について、簡単にまとめておきます。
 いちばん古い時代から生きているのは、キバチやハパチの仲間です。 幼虫時代は名前のとおり植物の葉や材を食べて成長します。 針は産卵管としてのみ、使われます。
 ヤドリキバチはキバチの仲間から進化したもので、幹に産み付けられた卵から孵った幼虫は、幹の中のタマムシの幼虫を食べます。 寄生性のハチの出現です。 以上のハチは、腰がくびれていないことから、広腰亜目としてまとめられています。
 寄生性が進んだヤドリバチの仲間になると、腰の一部が細くなり、腹部が動かし易くなって産卵し易くなりました。また、産卵管に毒腺を持つようになりました。 ヤドリバチの仲間の産卵管は、まだそんなに鋭くはなく、産卵管を錐(きり)に見立て、有錐類と呼ばれています。 有錐類のほとんどのハチの産卵管は、人の皮膚に刺さるほど丈夫ではありません。
 ヤドリバチの仲間から、カリバチの仲間が出現します。 この仲間は有剣類と呼ばれ、産卵管は毒液を注入するためのみに使用され、卵は産卵管を通らずに、別の所から産み出されます。
 幼虫の餌となる虫などは死ぬと腐ります。 ジガバチなど単独生活をするカリバチの仲間では、「剣」と呼ばれるようになった産卵管は、幼虫の餌となる他の虫などを麻痺させておくために使われていました。 ところが、アシナガバチやスズメバチなど、社会生活をするハチでは、餌を捉えるために剣は使いません。 餌は強力な顎でかみ殺し、肉団子として巣に運びます。 餌を蓄えておく必要はなく、毎日運べばいいのです。 剣は自分自身や巣を守るための武器になりました。
 クマバチやミツバチの属するハナバチの仲間は、カリバチの仲間から派生しました。 肉食から再び植物質を食べるハチに戻ったわけです。 しかしその植物質は、栄養価の高い花粉になりました。 ハナバチの仲間にも、クマバチやハキリバチなどの単独生活をするハチと、ミツバチやマルハナバチなどの社会生活をするハチがいます。 剣が護身用の武器であることには変化はありません。
      プリムラ・マラコイデスの花に来たミツバチ。 花粉を身体にくっつけて集めるために毛むくじゃらなのは、クマバチと同じ。