ムクロジ(果実と種子を中心に)

 お正月に行う羽根つきは、室町時代の宮中のことを記録した「看聞御日記」にその記録をみることができます。 羽根を、病気を運ぶ蚊を食べてしまうトンボに見立て、無病息災を願ったようです。 時代は進んで庶民の楽しみとなりましたが、1人で数を数えながら羽子板で羽根をつく「突き羽根」、左右に分かれて羽根を打ち合う「追い羽根」も、最近はあまり見かけなくなってしまいました。
 この羽根の頭には、地方によってはいろいろあるようですが、多くは(少なくとも東京や大阪では)ムクロジ(下の写真)の種子を使っています。 ムクロジの種子を使うのは、ムクロジに「無患子」と漢字を当て、「子が患わ無い」という縁起を担いだことも、その理由のひとつでしょう。
 ムクロジは暖帯の植物で、日本でも中部以西に分布しています。 上の写真は、堺市のフォレストガーデンに植栽されていたものを、H18.6.25.に撮影したものですが、葉は互生の大きな羽状複葉で、枝先に小さな花がたくさんついた大型の円錐花序を作ります。
 花の部分を拡大した右の写真でも分かるように、メシベは3心皮で、受粉後、子房はすぐに発達をはじめます。 ところがおもしろいことに、通常発達を続けるのは3心皮のうちの1つだけです(下の左側の写真:H18.7.9.撮影)。 果実になるのは、この1つだけということになります。

   
 右上の写真は、H18.12.10.に撮影したものですが、熟しきった果実に、発育しなかった2心皮が蓋のようについています。 そして、この果実の中に、羽根つきの羽根の頭となる種子が入っています。 写真の果実の中の種子には、白い糸くずのようなものがついていますが、これは拭えばすぐ取れます。 また、このムクロジの果皮にはサポニンが含まれていて、石鹸の代用とすることができます。
 ムクロジの仲間(ムクロジ科)は熱帯地方に多く、果物としてなじみのあるレイシやリュウガンもムクロジ科の植物です。