ムラサキツユクサ

 「原形質流動」の観察をしたことがありますか?
 植物の細胞は、細胞壁に囲まれているので、通常は細胞の外形をすばやく自由に変えることはできません。しかし、生きている細胞であるいじょう、細胞壁の中では動きがあってもおかしくはありません。 「原形質流動」は、細胞壁の内側で、細胞の原形質が流れるように移動する現象で、植物の細胞も“生きて”いるんだ、と、実感することができます。
 ムラサキツユクサのオシベには、たくさんの毛が生えています(下の写真)。 この毛は、原形質流動を観察するのにたいへん便利な材料です。
 その大きな理由は2つあります。 一つ目に、この毛は、細胞が一列につながってできています。ですから、毛を一本取ってきて、顕微鏡で観察すると、細胞が重なって観察が難しいという心配がありません。 下の写真でも、毛の一つひとつの細胞がわかってもらえると思います。
 二つ目として、写真でわかるように、この毛の細胞は、青い色をしています。 染色しなくても色がついているので、観察しやすいのです。 細胞を顕微鏡で観察する場合、通常は観察しやすくするために染色します。 しかし、通常の染色液で染色すると、細胞の生命活動は停止してしまいますので、原形質流動を観察する場合は、染色できないのです。
 園芸的に改良された植物は、学名や和名が混乱していることがよくあります。 ムラサキツユクサの基本種はヌマムラサキツユクサとも呼ばれ、染色体数は2n=12ですが、染色体数が倍加して2n=24となったものは、花が大きく、全体的にも大型になり、オオムラサキツユクサとも呼ばれています。 上の写真の花は、後者になります。
 堺市の泉北ニュータウンにある公園で、オオトキワツユクサの群落を見つけました(右の写真)。 木陰に一面に広がり、白い花を咲かせていました。 この植物は、ムラサキツユクサと同じTradescantia属に属します。 また、このオオトキワツユクサ( T.albiflora )より少し小さく、茎や若い葉の裏に紫紅色を帯びるノハカタカラクサ(トキワツユクサ : T.fluminensis )も、あちこちで見かけるようになりました。
 オオトキワツユクサのオシベの毛でも原形質流動は観察できます。 でも、やはり色のついていない細胞の原形質流動は観察しにくいものです。
 Tradescantia属の植物は、園芸店では略してトラカンと呼ばれることもあり、さまざまな斑入りの種類などが売られています。 オオトキワツユクサやノハカタカラクサは、これらの園芸品種の斑が消え、野生化したものでしょう。
 ※ ノハカタカラクサは、野にあるハカタカラクサの意味で、ハカタカラクサは博多織に似た縞模様のある園芸植物です。ただし、ハカタカラクサは、同じツユクサ科ですが、Tradescantia属ではなく、Zebrina属の植物です。