ヒメクロオトシブミ

 平安時代、恋文など直接手渡すのがはばかられるような内容の、巻紙に書かれた手紙をわざと目に付くところに落としておきました。 この手紙のことを「落とし文」と呼んでいました。
 コナラの新緑が美しい頃、右の写真のようなものを見つけました。 「落とし文」そっくりの、コナラの柔らかい新緑で作った“葉の巻物”です。
 このようなものを作るのは、オトシブミ科の甲虫の仕業です。 近くを探すと・・・ いました。 体長5mmあまりのヒメクロオトシブミです。


 “葉の巻物”は、揺籃(ようらん=ゆりかご)と呼ばれており、この中に卵が産み付けられています。 卵からかえった幼虫は、“葉の巻物”の内部を食べて育ちます。 
 揺籃を作るオトシブミ科甲虫の種類は多く、揺籃の形も、棒状、円錐形、このクロヒメオトシブミのような円柱形など、種類によってさまざまです。 揺籃を必ず切り落としてしまう種類もあります。
 下の写真には、ヒメクロオトシブミと、この個体が作ったと思われる揺籃が3個写っています(H18.4.22. 泉北ニュータウン内の槇塚公園にて撮影)。 写真撮影はなかなか難しいものでした。 少しでも驚かすと、足を縮めて葉から落ちてしまうか、飛んでいってしまいます。


 今年(平成18年)は、なぜかあちこちで、このヒメクロオトシブミによく出会います。 コナラに作られた揺籃を見ていると、4月下旬は人の腰より低いところに作られていたのが、気温が上がるにつれて作られる場所がどんどん高くなるような気がします。 5月6日には2mを越えました。

 揺籃が作られる植物もいろいろです。 左下はアラカシに作られた揺籃です。写真の中央上部に3個と左下隅に1個、合計4個の揺籃が写っています。 中央の葉は揺籃作成途中で作業が放棄されています。 また右下の写真は、フジの小葉に作られた揺籃です。 どちらもヒメクロオトシブミによるものかどうかは不明ですが、平成18年5月14日に、泉北ニュータウン内の歩行者専用道の脇で撮影しました。

 このオトシブミの仲間の話は、ファーブル昆虫記にも登場します。 また、大阪市立自然史博物館友の会の会誌 Nature Study の32巻4号には、沢田佳久氏の「オトシブミ科甲虫の作る揺籃の見分け方」が載っています。