サンショウモ(2種類の胞子を持つシダ

 サンショウの葉に似て、水面に浮いているから、サンショウモ。
 昔は田にもたくさん見られたということですが、最近は米作りのサイクルが変わり、田から早く水を無くすようになってからは、池などで見られる珍しい植物になってしまいました。でも、水を入れた容器にこのサンショウモを浮かべて、庭の日当たりのいいところに置くと、どんどん増えてくれます。
 このサンショウモ、いろいろと変わったところがある、おもしろい植物です。水中にある根のようなものは、組織を調べると葉ですし(水中葉)、胞子を作るシダ植物です。
 胞子を入れておく袋を「胞子のう」と言います。普通、シダの胞子のうは、集まって「胞子のう群」をつくっています。
 10月下旬、サンショウモの水中葉の付け根に近いところに、球形のものが見えます。これが包膜に包まれた「胞子のう群」です。
 この包膜に包まれた胞子のう群の断面をつくってみると、2種類の胞子のう群があることが分かります(下の写真)。サンショウモでは、普段普通に見るシダと違って、大きさの違う2種類の「胞子のう」をつくります。
 左が「小胞子のう」の集まりである「小胞子のう群」、右が「大胞子のう」の集まりである「大胞子のう群」です。
 上の写真の左側は、「小胞子のう群」の一部を撮したもので、複数の「小胞子のう」が写っています。中央の写真は、それを透過光で写したものです。中に「小胞子」ができています。(1つの「小胞子のう」の中には、64個の「小胞子」が作られます)。
 右の写真は、「大胞子のう」です。 1つの大胞子のうの中で作られる「大胞子」は、1つだけです。
 冬になるとサンショウモは枯れてしまいますが、大胞子のうと小胞子のうは水に浮かんだり水辺の土などにくっついたりして、冬を越します。そして春になると、大胞子のうの殻をまとった大胞子は前葉体を作ります。
 この前葉体には卵細胞ができます。この卵細胞が、小胞子から作られた精子と受精して、新しい個体を作っていきます。右の写真には、水面に浮かぶたくさんの小胞子のうと数個の大胞子のう、そして受精して生まれたサンショウモの“赤ちゃん”が写っています。
 下は以上のサンショウモの生活誌を図にまとめたものです。 なお、最近夏になると、このサンショウモに似たオオサンショウモが観賞用によく売られています。このオオサンシヨウモも胞子のう群を房状につけますが、子孫を作るための胞子は作ることができません。
 2種類の胞子を作るシダは、サンショウモ以外にも、アカウキクサやデンジソウなどがありますが、シダ植物全体から見ると、ほんのわずかです。しかし、シダ植物から進化した裸子植物やさらに進化した被子植物も、じつは2種類の胞子を持っているのです。被子植物ですと、メシベの子房の中にできる胚のう細胞が大胞子に、花粉の元になる花粉細胞が小胞子に相当します。
 きれいな花を咲かせて我々を楽しませてくれる植物は、2種類の胞子を持ったシダ植物から進化したのでしょう。しかし、シダ植物として生きていく上では、胞子は1種類の方が有利だったようです。