ツマグロヒョウモン

 写真は、ツマグロヒョウモンの番(つがい)です。「ツマ」は「端」、つまり「端黒豹紋」です。タテハチョウ科に属します。
 私が子どもの頃は、かなり珍しい蝶でした。ところが、このチョウの食草は各種のスミレ類で、パンジー(サンシキスミレ)を好んで食べるので、これがたくさん植えられるようになって個体数が増え、最近は私の家の庭にもよく飛んできます。こんなところにも人の影響が出ています。
 右の写真は、上と同じ個体の翅を閉じたところです。頭を下にしている個体は、カメラを構えている間、ついに翅を開かなかったので、別の日に撮った、翅を開いた時の写真を下に載せておきます。模様は、他のヒョウモンチョウの仲間のような、「ツマグロ」の無い、黄色に黒の斑点模様(豹紋)です。
 ところで、どちらが雄でしょうか。動物は一般に、雌雄で色彩や形態が異なる場合は、雄の方が目立ちます。雄は、目立つことで雌を引き寄せる必要がありますし、雌は子どもを生むために、目立たないようにして長生きしなければなりません。女性が着飾って男性を引きつける人の世界は、安全な社会に暮らす人間の特権かもしれません。
 このツマグロヒョウモンの場合、自然環境の中でどちらが目立つかは、人間の目だけで見ての結論は危険ですが、やはり黒地にくっきりとした白帯のある、最初の写真の翅を開いている個体ではないでしょうか。
 このツマグロヒョウモンの雌は、じつは目立つ方の、翅を開いている個体です。最初図鑑で調べてこのことを知った時は、どうしても納得がいきませんでした。図鑑の誤植ではないかと思ったくらいです。
 さらに、力強い飛び方をするヒョウモンチョウの仲間にあって、このツマグロヒョウモンの雌は、フワフワと優雅な飛び方をします。まるで鳥に“食べてくれ”と言わんばかりです。 

 この謎は、日本の中央部にいたのでは分かりません。じつは、カバマダラというチョウが九州南部以南に分布していて、このチョウがツマグロヒョウモンの雌によく似ており、飛び方も似ています。このマダラチョウの仲間は、食草から取り込んだ有毒成分を体に持っており、鳥などは食べるのを嫌います。ツマグロヒョウモンの雌には毒はありませんが、この毒を持ったカバマダラに似ることで、鳥などの補食を免れようとしていると考えられます。
 しかし、両者の分布は狭い範囲で重なっているだけです。これで有効なのでしょうか?
 なお、同じタテハチョウ科で、本州では迷蝶としてみられるメスアカムラサキの雌も、おなじようにカバマダラに擬態しています。
【関連項目】
チョウの足は何本?
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