ヤツデ

平成17年12月10日 高倉寺にて   

 ヤツデは東北地方南部から南西諸島にかけて自生しており、庭園木としても利用されています。 ただ、鳥の糞に入っている種子であちこちに生えたりして、あまりにも普通にありすぎ、あまり大切にはされていないようです。 しかし、ヨーロッパなどでは、アオキなどと並んで、日陰にも強い日本の植物として、園芸的に珍重され始めています。
 和名は「八つ手」から来ているのでしょうが、葉の裂片の数は、ほとんどが5または7または9の奇数です。
 花は、冬に次々と咲き、花の少ない季節の昆虫たちの蜜源となっています。 上の写真では、ツボミの状態から、花が終わり種子へと成長を始めているものまで、さまざまな段階が混じっています。
 ところで、有性生殖の意義は、遺伝子を混ぜ合わせることにあります。 被子植物の多くの花は、オシベとメシベを持っていますが、オシベの花粉を同じ花のメシベに受粉させてもあまり意味はありません。 そのため植物は、自家受粉を避けるさまざまな工夫をしています。
 ヤツデの花も1つの花にメシベもオシベもつけますが、成熟の時期をずらすことで、自家受粉を避けています。 いろんな段階の花を同時に見ることのできるヤツデでは、このことがよく分かります。
 ヤツデは小さな花ですが、よく見ると、なかなかおもしろい変化をします。 以下にその様子を紹介しましょう。

 左は、まもなく開こうとするツボミ。 花弁とガクとの境が写っていますが、はっきりしません。 ガク歯はありません。 花弁は縁でくっつきあっていますが、5枚からなることが分かります。
 花弁は開くと、次第に後ろに反り返ります。 手前の花のおしべは花粉を出しています。 奥の花は、まだ花弁は水平で、花粉はもうすぐ出はじめるのでしょう。
 メシベはまだ伸びきっておらず、受粉能力はありません。 この時期を「雄性期」と呼んでいます。
 花盤(メシベとオシベの間の平らな部分)には、昆虫を呼び寄せる蜜が吹き出しています。
 花弁も、花粉を出し終えたオシベも、既に散っています。 蜜は花盤を覆い、光っています。 メシベは長く成長して広がり、花粉を身体につけた昆虫の到来を待っているようです。 この時期を「雌性期」と呼んでいます。
 もう蜜は出ていません。 メシベもかなり縮んでいます。 あとは種子に成長するばかりです。

 以上で分かるように、ヤツデは雄性先熟の植物なのです。