環境会計の概説その1――環境会計の現状

森 哲郎

「環境会計」については、昨年から今年にかけて、一部大手企業を中心に環境会計情報を環境報告書等で開示するケースが増え、また、今年、環境庁がコスト情報の開示のためのガイドライン案を発表するなど、注目を集めてきています。KPMGセンチュリー審査登録機構では、環境報告書と併せて環境会計に関するサービスも開始しており、来春には環境会計に関するセミナーも開催する予定です。今号より、環境会計についての概説を掲載します。

さて、環境会計と言っても、少なくとも日本国内では、まだその言葉の定義すら確立していない段階であると言えます。英語のenvironmental accountingが日本語の「環境会計」と同義であると簡単に考える向きがありますが、environmental accountingaccountingとは、accountability(説明責任)という言葉からもわかるように、「説明する」との意味を持っています。したがって、欧州では、environmental accountingといえば、環境報告書によって組織の環境上の取り組み(環境パフォーマンス)について説明することもenvironmental accountingに含まれる場合があるわけで、もちろん、金額ではなく物量によって説明するエコバランスといわれる方式も含まれます。つまり環境会計といえば、現行の会計監査の制度と必ず整合しなければならないということはありません。現行の実務から見ると、環境会計とは、環境保全に関する投資及び経費とその効果を適正に把握し伝達するための仕組みと考えることができます。

 昨年から今年にかけて、一部大手企業を中心に環境会計情報を環境報告書等で開示するケースが増えてきていますが、その内容は様々であり、環境コスト情報のみを開示しているものもあれば、環境コストに加え環境効果情報を開示しているものもあります。こうしたものの中には、環境コスト金額と効果金額とを対比させ、一見すると差引きで利益が出ていると誤解しかねないような表示をしているものもあります。

 環境コスト項目については、ほぼ現行の財務会計制度における算定基準とほぼ同様の基準で集計されていると推定できるのに対し、環境効果項目については明らかに現行の財務会計制度における算定基準を逸脱した推定計算、みなし計算が含まれており、このような計算を含んだ環境会計情報が、財務会計制度における損益計算書に類似した形式で開示されることは情報の受け手に誤解を与えかねず問題があるといわざるをえません。

環境会計情報の測定及び伝達方法を考える場合、それが内部経営管理目的なのか外部公表目的なのかで大きく違ってきます。内部経営管理目的の場合は任意の方法で算定・伝達すればよいが、外部公表目的の場合は算定基準の合理性と情報の受け手にとっての有用性を十分考慮する必要があります。こうした観点からすれば、環境効果情報の開示についても必ずしも貨幣的表示に固執する必要は無く、物量データで十分な場合があることに留意する必要があります。

 したがって、環境会計と言っても、どこまでを対象とするかが重要です。環境会計の対象範囲には、少なくとも以下のチェックポイントでがあります。

1. 社会的か企業内か?

2. コストか効果か?

3. 貨幣か非貨幣か?

4. 公表用か内部管理か?

これを表にすると以下のようになります。

環境会計の分類方法

 

集計範囲

コスト/効果の分類

表示方法

(単位)

使用目的

社会的

費用

貨幣

対外公表

企業内

効果

非貨幣(物量か記述情報)

内部管理

 

 つまり、AABA、AAAA、BABBなど、基本的にはどんな組み合わせでもあり得ます。ということは16種類あることになります。現在取り組んでいる環境会計が対象としているのは以上のうちのどの項目なのかを考えておくことは、その環境会計の意味・目的を考える上で重要です。次号以降では、こうした分類も踏まえて、対象ごとの考え方について説明します。

(センチュリー監査法人『環境監査ニュースレター』199911月号掲載)