T. 環境会計の概説その10−内部環境会計@

KPMGセンチュリー審査登録機構

森 哲郎

 

 今回は、環境会計を企業内部の経営管理にどのように効果的に活用するかを解説します。これは、内部環境会計や「環境管理会計(EMA)」とも呼ばれる内部管理目的の環境会計です。

1はじめに ―― 内部環境会計とは

 

なぜ内部環境会計が重要か

環境コストが着実に増加していく時代にあって、企業の経営効率向上のためには、環境コストとその効果の把握は、環境負荷大きい多くの業種の企業にとって不可欠になってきています。

図表1環境会計の主な適用分野とその効果

注:適用分野が貢献する可能性のある効果項目に○を付けています。

内部環境会計(環境管理会計)とは、製品やサービスのライフサイクル全体について、金額情報およびそれ以外の情報をとりまとめて、分析し、企業の経営効率の向上や持続的な発展に利用することです。内部環境会計は、企業の管理者が、資本投資、原価計算、工程・製品開発、環境対策、予算管理などに関する意思決定をしたり、業績評価を行うための参考情報を提供することができます。図表1には、ここで触れる環境会計の主な適用分野とその効果についてまとめています。

 内部管理のための環境会計については、米国・環境保護庁(EPA)の取り組みがおおいに参考になります。最もまとまったガイドブックが、米国環境保護庁(EPA)『経営管理手法としての環境会計入門』です。

このガイドブックは、経営管理手段としての環境会計に焦点を当てています。これは、環境パフォーマンスの改善、コストコントロール、環境負荷がより小さい技術への投資、環境負荷がより小さい工程や製品の開発、および製品ミックス、製品保有や製品価格決定に関する意思決定への情報提供といった多様な目的のために環境会計を使うことを意味しています。

また、日本では、通産省が(社)産業環境管理協会に委託して、企業や組織単位の内部環境会計について調査・研究を進めており、1999年度の調査結果の報告書が、2000年6月に発表されました。

本ニュースレターでは、こうした内外のガイドブックや調査結果およびその他、欧米で進められている内部環境会計に関する試みを踏まえつつ、内部環境会計の中でも主要な位置を占めている原価計算、資本投資、工程・製品開発、サプライチェーン・マネジメント(SCM)への活用について、品質原価計算、QFD(品質機能展開)、VE(価値工学)関連する手法を含めて紹介します。さらに、環境会計をの効率化に活かす手法についての米国環境保護庁(EPA)のガイドブックについても紹介します。今号では、原価計算の分野についてまず紹介します。

2 環境コストの適正な配分

 内部環境会計の第1の分野が、コスト配分(配賦)への環境会計の適用です。環境コストを間接費から区分して、これらの環境コストが実際に発生している製品や工程に配賦する(帰属させる)ことによって、企業は該当する管理者や従業員に対して、環境コストを削減して収益性を向上させるための努力を促すことが容易になります。

間接費は、既存の原価会計システムにおいては、単一の工程、システム、製品や設備には完全には帰属しないすべてのコストのことです。例えば、監督者の給料、建物管理サービス、公共料金、廃棄物処理などだが、ほとんどの環境コストは、企業の原価会計システムにおいては、間接費として処理されることが多く、伝統的には、間接費項目は、二つの方法のいずれかによって処理されてきました。つまり何らかの規準に基づいて特定の製品に配賦せるか、または、特定の製品のいずれにも属さないコストに集計されるか、のどちらかです。

ある環境負荷を抑制するための環境コストが含まれている間接費が間違って配賦されれば、そのような環境負荷とは関係ないのに、ある製品(同図表の製品A)は正当なコストを超過する間接費の配賦を負担し、一方、その環境負荷に関係ある他の製品(同図表の製品B)は、実際の関与より少ないコストしか負担しないことになります。その結果は、不正確な製品原価が算定され、価格決定や収益性にも影響を及ぼしかねません。また、こうした間接費が、製品のコストや価格に全く反映されていない場合もあります。

 以上、いずれのケースでも、管理者は、生産している製品の真のコストを把握できず、これらのコストを削減するための創造的な方法を見いだそうとする努力を妨げてしまう。「見えないものは管理できない」からです。

 図表2aのように、環境コストを、環境コストが隠されている間接費勘定から区分し、その環境コストの本来の発生源である適切な製品(例えば同図表の製品B)、工程、または設備に直接、配賦することによって、経営者、コスト分析担当者、技術者、設計者などにとって、はじめて、こうした環境コストが明らかになり、この環境コストの管理も可能になるのです。

 

 

図表2a 修正された原価会計システム――廃棄物処理費を正確に配賦

 

 

 

 

 

 

図表2b 環境コスト配賦の2つのアプローチ――無理する必要はない

 

 1.原価会計システムに直接、適正な配賦を確立する。

 2.(暫定的方法として、または必要な対象のみについて)既存の会計システムの外部でコストを配賦処理する。

  

 

環境コストの配賦には、図表2表bの2のように暫定的方法として、既存の会計システムの外部でコストを配賦処理する方法や、目標とする製品や部門、投資案件関連だけについて行う方法もあります。理想は、EPAのガイドブックが言うように原価会計システムに直接、適正な配賦を確立することだが、無理をする必要はなく、あくまで企業や組織のニーズ、目的に絞って行うべきです。