T. 環境会計の概説その12−内部環境会計B
KPMGセンチュリー審査登録機構
森 哲郎
前々回から、環境会計を企業内部の経営管理にどのように効果的に活用するかを解説していますが、今回は、環境会計を投資の意思決定に役立てるための方法を紹介します。
4.1ライフサイクル全体への視野は不可欠グリーン調達法、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法などの制定により、企業の責任範囲が拡大しています。つまり自社の製品やサービスの直接的なプロセス・工程の環境負荷だけでなく、川上や川下に関連する環境コストを負担するケースが今後ますます増えていくことになると考えられます。こうして、企業が、自ら負担する私的コストの管理を行うにあたっては、ライフサイクル全体からの視点(Life-Cycle Consideration)がもはや不可欠になっており、環境だけでなく経済、技術、社会的側面にも焦点を当てたLCM(ライフサイクルマネジメント)という考え方も近年広がってきています。
4.2 LCAやLCCAをきちんとやろうとすると大変ライフサイクル・アセスメント(LCA)は、ライフサイクル的な視野の原点となるものです。LCAは、原料採取、原材料・部品製造、生産、物流、ユーザーの使用、廃棄などの、製品・サービスのの全ライフサイクルにわたって、環境に与える影響を認識し評価する分析手法です。ISO(国際標準化機構)のISO 14000シリーズにおいても、ISO 14040シリーズで規格化されています。
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構成要素 |
内容 |
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目的及び調査範囲の設定 |
意図する用途、伝達先、対象とする機能の単位、製品システムの境界、前提条件などを明確にする。 |
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ライフサイクル・インベントリー(LCI)分析 |
ライフサイクル各段階での環境負荷を調査して積算すること |
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ライフサイクル・インパクト分析 |
インベントリー分析で調べあげた、各種の環境負荷が総合的に環境にどのように影響しているかを解析する |
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ライフサイクル解釈 |
結果を考察し実践の課題を明確にすること |
製品を構成する部品点数が増えれば増えるほど、それらを製造するためのそれぞれの原材料やエネルギーなどを定量的に把握する必要があため、LCAのコストは加速的に膨らむ。電機メーカーなど、取り組み事例も増えているが、現状では、多くのケースでLCAの一部である環境負荷量を把握するLCI(ライフサイクルインベントリ)分析に止まっており、成熟した手法として定着するまでにはまだ時間がかかると考えられます。
環境会計に関わるものとして、このLCAの考え方をベースとしたライフサイクル・コストアセスメント(LCCA)という手法があります。LCCAは、LCAのコスト計算面を重視したものです。それは環境に与える影響を識別し、それを貨幣評価することによって、製品、製造ライン、工程、システムまたは設備のライフサイクルコストを評価するための体系的プロセスとして用いられてきた。コストには、私的コストだけか、社会的コストも含めるのか、両方の場合があるが、LCCAもLCAと同様、通常、非常に大きなコストや労力がかかります。
4.3 より現実的な手法――「簡易ライフサイクル環境会計(SLCEA)」
LCA
やLCCAを環境会計のためにまともに導入すると膨大な手間とコストがかかる恐れがあります。そこで、簡便な形でLCAの考え方を取り入れた環境会計の観点から洗い出す手法として、本参考資料で推奨する簡易ライフサイクル環境会計(SLCEA)の手法を紹介します。この手法のポイントは、第1に、利用目的にとって必要ない、または重要でない部分を省く、第2に、当面、企業としての負担が考えられない社会的コストについては、ライフサイクルの環境負荷情報(LCI)の収集範囲外とし将来の課題とする、ことです。
社会的コストのうち、今後負担を求められる可能性があるものは、高いものから、低いものまでさまざまです。対象コストの範囲は必要最小限にし、今後負担を求められる可能性が高い社会的コストから、低い社会的コストまで、必要に応じて徐々に広げていけばよいのです。
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簡易ライフサイクル環境会計(SLCEA)のポイント: 1.利用目的にとって必要ない、または重要でない部分を省く 2.私的コストのみの把握からはじめ、必要があれば、企業としての負担の可能性が高い社会的コストへと、徐々に対象範囲を広げる |
SLCEA
の作業の流れは、ISO 14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)で行われている環境側面の洗い出し、環境影響評価の手法と類似しています。ライフサイクル環境会計では、製品・サービス別の環境側面であるが、環境コストを考慮した、ライフサイクル環境会計側面(LCEA側面)の洗い出し、環境影響評価の製品・サービス別に行い、そのなかで抽出された著しいLCEA側面を、詳細な分析の対象とする(図表4.3a「ライフサイクル環境会計の流れ」を参照)。図表
4.3a 環境適合設計(DfE)や工程改善等をサポートする簡易ライフサイクル環境会計(SLCEA)の流れ注:「
LCEA環境側面」は「ライフサイクル環境会計側面」の略称