企業経営と環境報告書

本記事では、環境報告書の最近の動向と基本的な考え方を紹介します。

外国企業の動き

近年、環境に係わる方針、行動、および実績に関する報告を行うことに対する欧米企業の関心の高まりがある。利害関係者の圧力と法令による要求がその理由である。米国では、証券取引委員会(SEC)が、すでに財務報告書に記載する環境情報についての要求事項を定めており、また、有害物排出目録(Toxic Release Inventory = TRI)制度が、正社員10人以上のすべての企業に対して、特定の排出物に関するデータの提出を義務づけている。カナダでは、証券委員会が、公開企業に対して年次情報書式(Annual Information Form)において、環境法令の現在と将来の(業績への)影響についての報告を義務づけている。

欧州でも、 企業の自発的な参加で環境声明書の作成を行うEMAS(EU理事会規則「環境管理・監査スキーム」)が1995年に施行され、各国で環境報告書に対して積極的な取り組みが行われている。また、英国、カナダ、オランダおよびデンマークの会計士団体は、毎年、良い環境報告書に対して表彰を行っている。

デンマークでは、環境報告法が1995年に可決された。デンマークは、環境報告書に関する法規制を制定した最初の国である。同国では、1996会計年度から、環境への著しい影響がある企業は、いわゆるグリーン・アカウント(法定環境報告書)を公表することが義務づけられた。これらの法定環境報告書は、同国の商業・企業庁(Danish Commerce and Companies Agency)に提出される。企業が環境マネジメントシステム(EMS)を導入するという約束するという拘束力のある契約を同庁と締結することを条件に、一時的に環境報告の義務が免除される3年間の移行期間が設けられていた。ただ、この移行期間は、1998年12月に終了し、その結果、法定環境報告書を作成する企業は、1999年初現在の1200からさらに増えると見られている。

オランダでは、1997年に可決された法律によって、1999会計年度より、環境へ著しい影響を及ぼす可能性があるおよそ330の企業が、環境報告書を公表することが義務づけられている。

またノルウェーでは、1999年以降、すべての企業が財務報告書の中に環境に関する情報を含めなければならなくなった。

今や、環境広告で効果を上げられる時代が終わり、信頼性の無い環境情報は、企業に対するマイナスのイメージをもたらしかねない時代になったと言える。

国内企業等の動き

日本企業は、80年代から、環境に対する取り組みを紹介する冊子を出しているところは多かったが、まとまった環境報告書を発行するようになったのは1995年頃以降であると考えられる。さらに近年は、環境に係わる方針、行動、および実績に関する報告を行うことに対する日本企業の関心の高まりが加速している。日本でも1997年から、環境庁がかかわるものとして(社)全国環境保全連合会により環境報告書に対する評価を含む「アクションプラン大賞」が開始され、また、1998年からは環境報告に関する研究団体であるグリーン・レポーティング・フォーラム(GRF)が東洋経済新報社と共催で環境報告書の表彰制度である「グリーン・レポーティング・アウォード」を開始した。また、同じく98年には、企業、自治体、NGO、学者などが集まり「環境報告書ネットワーク」も結成された。1999年現在で環境報告書を発行している会社は、国内では200社程度(生協、地方自治体を含む)に達しているとみられる。

環境庁は、1999年3月から「環境報告の促進に関する検討会」を開催し、環境報告書の第三者検証の問題を取り上げている。また、日本公認会計士協会の環境監査専門部会で、環境報告書について研究を進めている。なお、KPMGセンチュリー審査登録機構の 丸山陽司取締役は、同部会の部会長を務めている。

環境報告書についてのガイドライン

国際的には、良い環境報告のやり方に関する標準的な枠組みはできあがってはいない。しかし、さまざまの団体が環境報告書に関する作成ガイドライン等を発表している。その中で従来主なものとしては、IBM主導で進められたPERI(Public Environmental Reporting Initiative)、UNEP(国連環境計画)、ICC(国際商工会議所)のWICE(World Industry Council for the Environment)、日本の(社)全国環境保全連合会(環境庁監修)などによるものがあった。また、KPMGグループにおいてはKPMGデンマークが、環境報告に関するガイドブックを発行している。そして、1997年秋から、世界の環境報告書に取り組む団体や個人が集まったGRI(Global Reporting Initiative)が、環境面だけでなく社会・経済面を含めた報告書作成ガイドライン作りに着手し、1999年3月には「持続可能性ガイドライン(公開草案)」を発表した。GRIのガイドラインは、まだ完全なものではないが、2000年6月には正式版が発行される予定であり、事実上のグローバル・スタンダードとして認知されていく可能性が大きい。

(センチュリー監査法人 センチュリーニュース1999年9月号掲載のものを一部修正)