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| ■ネパールの旅の記録 |
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■■■ ネパールの旅に参加して 澤田一馬 ■■■
1月末日でもって長年勤めていた銀行を定年退職し、これからの人生どのように生きたらよいものか、次の仕事も決めずにしばらくの間考えてみたいと思ってました。それというのも11年前に大病を患い、左手首と右足首に障害が残り、銀行を初めとして多くの人たちの助けと、励ましがあって定年まで勤め上げることができました。その事に心から感謝してますし、身障者になった事まで今まで見えなかったことが見えたり、ハンディーをもった人の気持ちが少しは分かってきたように思います。これからは少しでも世の中に恩返しが出来たらと思い、自分を見つめなおす時として、また大郷先生はじめ参加人たちとの交わり、ネパールの人たちとの出会いを大切にとの思いをもって参加させていただきました。カトマンズ空港に着く手前でヒマラヤの山々を機上から眺めた時、いいしれぬ感動を覚えると同時に、いっぺんに心の底から元気が沸き上がってきました。
今回の旅行で一番気がかりなのはトレッキングで、足の不自由な私がガンドルン村まで登れるのだろうか?皆さんに迷惑をかけてしまうのではとの思いは出発前からずーと持ち続けてました。しかし、カトマンズの市内観光から始まったこの旅行はゆったりとした日程で、のんびりとあるがままのネパールの人たちの暮らし振りを眺めてゆく時、心の不安が段々と薄れて、楽しみと「来てよかった。」との思いが強くなってきました。トリスリ川でのラフティング、チトワン国立公園での象乗りサファリ、若者と一緒になってのトランプ遊びなど楽しく日程をこなしてきました。同室させていただいた大郷先生との語らいは、これからの私の生き方に示唆を与えてくれた貴重な一時でした。
いよいよ最後のトレッキングを残すのみとなり、美しい湖のあるポカラを後にしてスタート地チャンドラコットへと向かいました。ポカラからはヒマラヤの山々が白い雪をかぶって輝いてました。峠へと向かいまた谷底に下がってゆくバスの車窓からは、山の頂まで段段畑がつくってあり、水牛を使っての田おこしは、子どもの頃よく見た牛を使ってやっていた風景とダブり懐かしくのどかなものでした。町の中の風景も人の動きも私たちがはるか昔に経験し、今失ってしまった人の温もりが伝わってくるものでした。
チャンドラコットの第一歩を踏み出したとき、左足は地面が少しでも傾いていると「くじく」ような状態になり小指全体に全体重がかかってしまい、予想していたとはいえ大変な道行きになると思いました。幸い特段の配慮をして下さり2人の案内人が両サイドを固め、後ろからは大郷先生が腰に巻きついたロープをもって転倒しないようにして歩き出しました。
最初の休憩地までは比較的なだらかな上り坂だったため。「水戸黄門の一行のお通り」など大郷先生が冗談を言ったり休憩時に写真を撮ったりしました。しかし、私としては通過する村人たちにけげんな顔でみつめられるので、「捕らわれたイエス様のゴルゴタへの道行きもこんな状態の苦しみの連続かな」と勝手に想像しながら左足の着地に集中して歩きました。次の休憩地で青竹を買ってもらい2本にして両腕にはさみ、4人で支えられながら登ってゆきました。この時から参加メンバーの大郷先生、丸山先生、笠井高志くん、佐々木太郎くん、神山拓史くん、鵜飼祐一くんらが交代して青竹を持ってくださり、中村真紀さん、荒川恵理子さんらに励まされ、一歩一歩自分の足であえぎながらすすみました。
険しいごつごつした岩はとても自分の足で登りきることが出来ず、青竹にすがっていくしかありませんでした。こんなに皆さんの力を借りて登る以上、どうしてもカンドルン村までたどり着こうという思いが苦しみの中から湧き上がってきました。
やがて峠を越えて左に道が開けてきたところで、アンナプル南(7,219m)とマチャプチャレ(6,993m)の間白い山が眼前に飛び込んできました。雲一つない青空に悠然とそびえている姿は、私の苦しみを和らげ、先へと進む勇気を与えてくれました。いつしか私に合わせて登るようになり、予定の5時はすぎても目指すガンドルン村はまだ見えません。少し登っては休憩を繰り返し、「さあ〜行きましょう。お願いします」と休憩まで私のペースにあわせてくれました。それからどれだけの峠をこえたか覚えていませんが、やっとめざす山の頂にガンドルンの村の一番高いところに立っている山小屋が見えてきました。
ところがそこからの登りはきつく、見えているのになかなか近づかず、休憩が多くなりました。他のグループが追い越していく中で手助けしてくれる外人の方もあらわれて、一団となって私を支えてくれるようになりました。どんなに苦しくても私自身の足を一歩ずつ前に出さなければ到着は出来ません。やっとの思いでガンドルン村の入り口にたどりつきました。先に山小屋に到着していた人たちも、最後の登りに手を貸して下さり、やっとの思いでたどりつきました。「ヤッター!!」という感激がこみ上げてきました。山小屋のガーデンにいた人々から一斉に拍手がおこり祝福してくれました。最年少の中村友一くんから、「沢田さん使って下さい」と言って冷たいおしぼりを渡され顔を拭いている時、涙が次から次へとあふれてきました。ガンドルン村までのトレッキングは無理だと思っていた私を、参加者全員で押し上げて下さったことが嬉しくて、ビールで乾杯している時も、記念写真を撮っている時も涙は止まりませんでした。
アンナプルナ南とマチャプチャレは夕日に映えて黄金色にそまり一段と近くにそびえ、「よくきたね」と優しく声をかけてくれているように私を見つめていました・・・。
村での滞在2日間は雲一つない快晴が続き、朝夕変化していく山々の輝きを堪能しました。下山は全員交代で私の手助けをしてくれました。右ひざをやられ登りよりも更に困難と苦しみを味わいましたが、荒川恵理子さんが「自分も補助坊を担いたい。ゴールでの喜びを一緒に味わいたいから。」と言ってくださった言葉が、このトレッキングに参加してよかったと心から思いました。
私の苦しみを共に担ってくださった人たち、喜びを共に喜んでくださった人たち・・・。この旅行での体験はこれからの歩みの中できっと私を変えてくれることでしょう。
「困難に立ち向かう勇気、苦しみを喜びに、そして共に喜び合える。」そんなことを教えられた旅でした。
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