■あぶらむ通信
■あぶらむ農場
加藤 正
○あぶらむ通信19号より抜粋




4月25日、あぶらむで今年の農場開きを行った。
今年は宿の前の畑10aに加え、今までの水田を畑に替えてジャガイモとスイートコーンを植えた。奥飛彈の山にも春が巡ってきたのだ。
宿の前の畑はいちごが春の陽を受け、今伸びようとしているが、昨年の6月のいちごは毎日たくさん採れ、心から幸せな気分になったものである。今年も楽しみだ。

ここ数年のあぶらむでは、畑でいろいろ野菜を作ってきた。このあぶらむは標高が高く、東北北部や北海道と同じ栽培時期で管理することも少し分かってきた。いろいろな作物の収穫が多くなったことは嬉しいことだ。
しかし、収穫よりも日々の土よせ、草取りなどの管理のなかでいきいきと日々変化していく作物たちの生き様を見ながら「育てる喜び」を感じる人々が存在することこそ、うれしいことであり、あぶらむに農場の必要性を感じているところでもあるわけだ。
「あぶらむ通信」No.18で長田まどかさんが書いている内容がそうだ。それを少し掲載させてもらうと、『特に、日々の生活の中で「農作業が好きだ」と感じるときが幸せだ。私には、収穫の喜びよりも作物が成長していく過程を見守る喜びの方が大きい。移動することが出来ない故に、彼らの獲得した生きていくための手段はたくましく、種によってさまざまなスタイルはほれぼれと見とれてしまうほどに美しい・・・』
今年スタッフとしてあぶらむで活躍してくださっている中村真紀さんも、4月19日に蒔いたほうれんそうが7日たっても芽が出てこないので心がキュンと痛くなったらしい。8日目にやわらかい芽が出たときは、さぞ、いとうおしく思えただろう。
こころがキュンとなったのはやはり、「育てる喜び」の心が根底にあるではないだろうか。少し大げさに言えば、「植物を育てる」ことは自然を観ることや生命の営み、命の根元にかかることを教えられる場所ではないかと思う。
植物を育てることは時間のかかることであり、相手の成長を待つことであり、それは忍耐することでもあるが、この事を経験することにより、心には「相手を思うこと」、「思いやり」が育まれ、やがてそれは「やさしさ」や「愛する心」して醸成されることだと思うのである。

昨年からすこしずつ子供たちと農作業や食事を作った時の印象も報告したい。
稲の除草を行ったとき、真夏の炎天下、稲の葉先で、体をチクチクされながら、田の草取りを行い、「食べるってたいへんだ。しんどういなぁ。」と食べ物を作ることはたのしいことばかりではなく面倒くさいことを実感していた。
8月に鶏をつぶして食べたときの子どもの反応は「今まで生きていたトリさんを殺したのだから、きれいに食べなかったら申し訳ない」と食べることは悲しみを伴うことであり、真剣さが伴うこと、生けるものへの畏敬、尊敬が生まれていた。
こんな事から、子供たちは種を蒔き、それを調理して食べるようにするまでにはずいぶん時間と労力がかかり、大変さと真剣さを学んだように思う。
しかし、そのことは、ひとつひとつの出来事を通して真面目に考え、人としての生き方などを考える心が培われるのではないだろうか?

土や作物に触れていると、心が穏やかになるのは、子供たちだけでなく、私自身がそうである。
土を耕し苗を植える。体いっぱい動かした後で収穫したものをおいしく食べることで、ゆったりした心になるのは、土や作物は人の心を癒してくれる力があるのだろう。子供たち(大人も含めて)との農業体験や自然体験はもっと増やしたいと思っている。

5月15日、電話の向こうから真紀さんの弾んだ声が飛び込んだ。「いちごの葉がね、毎日毎日ぐんぐん伸びているんですよ。すごい伸びなんですよ。」と、いちごの生命の躍動に新鮮な驚きを感じての電話だった。いちごの元気な様が頭に浮かび、今すぐにでもあぶらむに飛んでいきたくなった。


私は年に数回あぶらむにお世話になっている。農場の土なぶりをさせて頂いているが、あぶらむの吉田さんをはじめとするスタッフで、農場いっぱいの野菜や稲を作っている。
それは農業体験学習と共にあぶらむの宿に来られた方に新鮮な野菜を食べてもらうことであり、お土産であり、好きな時間に農場に出られ好きな作業をされることであり、自分で種を蒔かれたり、観察されたりする農場を提供しようとの考えからだ。
ありがたいことに春から冬になるで、畑や田はいろいろな野菜が生育を続けている。私自身、ゆっくり、たっぷり、心ゆくまであぶらむ農場を満喫し身も心もリフレッシュさせて頂いている。

<追記>
ほうれん草の発芽の遅れは、種子の芽だし処理の説明をせず、そのまま蒔いてもらったのだから日数がかかったのであって、悪いことをしたと反省している。




Copyright (c) あぶらむの会 2001
本サイトの内容の一部または全部を著作権者の許可なく
使用することは固くお断りいたします。
All rights reserved. Reproduction in any form prohibited