自転車社会学会 2001/3/作成 2004/10/12更新

自転車からみた道路構造基準

新道路構造基準の概要

赤字パブリックコメント案の引用

1.基本的考え方

我が国においては生産年齢人口の減少や環境問題の顕在化など、経済・社会のかつてない大きな潮流による転換期を迎えています。このような中で、人々が日常生活を営む上での最も基礎的な社会空間としての役割を再構築し、充実する必要があると考えます。

と新道路構造基準の必要性を訴えています。大幅な方針変更ですから、必要性を充分に説明する必要がありますね。続いて・・・

車道を中心として道路全体の構造を定める現在の考え方を超えて、歩行者のための空間、自転車のための空間、路面電車等の公共交通機関のための空間、緑のための空間、そして自動車のための空間をそれぞれ独立に位置づけるとともに、これらが互いに調和した道路空間となるよう、道路構造の再構築・見直しを図る必要があると考えます。

車道中心(自動車中心)から歩行者、自転車、緑地、自動車を互いに調和するよう、道路構造の再構築を図るとしています。再構築も再構築、全くのゼロからの再構築が必要とされるほどの道路行政の大きな転換ではないでしょうか!。

2.適用の範囲

これから道路を新設又は改築する場合における道路の構造に関する基準の検討案です。また、既設の道路空間の見直しを行う場合にも、この検討案をもとにした基準を準用していくことを考えています。

既設の道路空間の見直しって一体何を意味しているのでしょうね?。抜け穴をふさぐのための表現なのでしょうか?。

3.新しい道路構造に関する基準の検討案
I.歩行者・自転車の安全かつ快適な通行空間の確保
これまでは、幹線道路には必要に応じて自転車歩行者道又は歩道を、その他の道路には必要に応じて歩道を設置することとしてきました。このため、自転車と自動車の接触事故や、歩道上での自転車と歩行者の接触事故など、歩行者や自転車の安全な通行が十分確保されていませんでした。

いままでも「自転車歩行者道」って設置されてきたのでしょうか?。どの道路が自転車歩行者道だったのでしょうか?。

(1)自動車と独立した歩行者・自転車の通行空間の確保
・幹線道路には自転車道と歩道(自転車又は歩行者の交通量が少ない場合には自転車歩行者道)を設ける。
・その他の道路には必要に応じて歩道を設置する。
・歩道を設置しない道路においては、必要に応じて自動車の速度を抑制するためのハンプやクランク等を設置する。
ことにより、歩行者及び自転車のより安全かつ快適な通行を確保する。

(以下略)

としています。パチパチパチパチパチパチパチパチ。でも内容はこれしかありません、4行です。設置の方法や設置後の運用については何もふれられていません。

設置上の問題、課題
●道路を拡げるのではなく、車道を削る?
どうやって、自転車道または自転車歩行者道を整備するのでしょう。方法は大きく分けると2つしかありません。
・道路を拡幅して拡大した部分に自転車道または自転車歩行者道を設置する。
・現在の車道を削って自転車道または自転車歩行者道を設置する。
基準案はあくまでも基準であって、その実現方法については何の記述もありません。基準なのですからあたりまえですね。赤字財政、規制緩和の中、土地を買収して(または区画整理事業を行って)道路を拡幅することは困難(ほとんど不可能)ではないでしょうか。すると車道を削って(車線を減らして、車線幅を狭くして)自転車道または自転車歩行者道を整備することになります。はたしてこれが可能なのでしょうか?。自動車社会である現代日本において、車道を削って自転車道を作るということが果たして可能なのでしょうか。
●自動車利用者との利害調整は可能?
具体的には自動車利用の利便性を損なうことになりますので、自動車利用者との利害調整が難航することが予想されます。建設業界は賛成するのかもしれませんね。自転車道設置工事を受注できるのですから、でも道路の拡幅というもっと大きな工事を自ら失うことに賛成するのでしょうか。運輸業界は反対でしょうね。道路が狭くなれば、許容交通量が小さくなり、ひいては渋滞・速度低下・・輸送効率の低下を招くことは自明です。自動車業界も賛成するとは思えませんね。自動車の利便性を損ねれば売り上げにも影響するのですから。そうすると・・・本基準案に賛成するのは政治力のない自転車通勤者だけということになるでしょうか。その自転車通勤者も建設業界や運輸業界や自動車業界の人もいるのですから。
はて、この困難な障害を越えるだけの力がどこからでてくるのでしょうか。本基準を進める力って、(地球)環境問題以外には思いつかないのですが(ほかには何があるのだろう?)・・環境だけで人々は動くのでしょうか?。
運用上の問題、課題
国土交通省道路局の作成する本基準には当然のことながら、運用に関することは何も記述されていません。自転車道が設置されたと仮定して、問題点を考えてみます。
●左側通行じゃないの?
”幹線道路の標準的な通行区分は「車道+自転車道+歩道」” と説明のあるイメージ写真の自転車は、あああ〜「右側」通行!!。歩道の延長線上に自転車道を考えているのでしょうか?。その上の”車道、自転車歩行者道、歩道、自転車道の位置関係”と説明のあるでは左側通行のようですが。右側通行と左側通行が区別されていないのでしょうか。この自転車道って双方向通行の(自転車がすれ違う)運用にするのでしょうか・・・・ハハ、恐くて乗れない・・・私、車道を走ろうかナア。
●自転車道=歩道?
あれま、”車道、自転車歩行者道、歩道、自転車道の位置関係”と説明のある図で、路肩は車道と自転車道(または自転車歩行者道)の間にある。ということは自転車道は歩道の一部または同様な性格をもつものと認識されているのでしょうか?。そもそも、自転車歩行者道という発想(自転車と歩行者を同じ区分にする)ということ自体が自転車=歩行者の延長、歩行者の一形態という発想であることを証明していますね。現在の歩道を走る自転車で歩行者に怪我をさせる事態、をさらに悪化させることにならないでしょうか?。きっと、充分な道幅(はて何mなんだろう?)を確保すれば歩行者と自転車を分離することも可能になるのでしょうね。
●自転車を分けて考える必要がある?
どうも、自転車は歩行者と同じ・類似の存在として構造基準案が作られているように思います。小学生が自転車に乗れば・・そんなにスピードは出ないし、お母さんのお買い物の時も歩道を走った方が安全かもしれません。でも通勤通学で乗る自転車は学校に遅れまいとスピードが上がっています、渋滞の自動車よりもずっと速い乗り物です。歩行者にすればこんな速い自転車に歩道を走られたのでは危なくてしかたありません。自転車としても現在の歩道の凸凹、段差、障害物の多さを考えると歩道を走るのは困難、かつ危険です。
速い自転車は車両と同じだから自転車免許を発行し免許のない自転車の車道通行は禁止する・・・という議論にも一理あると思います。社会の中で自転車に関する交通教育が行われていない現状を抜本的に改善する一つの方法、ではあるからです。「自転車は車道の左側を走る」という原則すら今の日本では常識になっていません。ヘルメットの着用義務もあってもしかるべきと思います。自転車が車両であるのならば、交通安全に自ら責任を負うべきという意見にも耳を傾ける必要があるのかもしれません。
今後の課題
基準そのものは単なる基準であって、それ以上のものではありません。この基準とその実行(自転車道の設置)、設置された自転車道の運用を分けて考えていいのでしょうか。運用も考えずに自転車道を設置していいのでしょうか。自転車道設置の可能性を確認しないで(自動車利用者の意見を反映しないで)基準を設けていいのでしょうか。国土交通省道路局だけでは解決しないのかもしれません。自治省や警察庁や経済省を含めて検討しても・・・船頭多くして、舟、山にのぼるのかもしれません。道路局が独断で走るのもいいかもしれませんね。調整・調整では・・・いつになったら実現するかわかりませんから。

道路法道路構造令(法令データ提供システム)
新しい道路構造に関する基準の検討案(HTML版)
新しい道路構造に関する基準の検討案(国土交通省道路局)

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