No.13--------→ 5月のお茶会 〜佳馨さん編〜



春の雨が降り続いてます。

こんなに降ると まるで梅雨の季節みたいです。

やることの無い柘榴さんと牡蛎さんは

少々ストレスが溜まってるようです。

そんなとき 一通の手紙が来ました。


差出人は 佳馨(かけい)さんです。

佳馨さんも 長引く春雨に飽き飽きしていたらしく

お家でお茶会を開催することにしたそうです。

今日届いた手紙は その招待状でした。

麦太郎たちは 佳馨さんの家に招待されたのでした。


さっそくおめかしし始めた牡蛎さん。

牡蛎さんのお目当ては 佳馨さんちにいる

ハムスターの苺さんです。

牡蛎さんは 苺さんのことが大好きなのですよ。

まぁ おめかしと言っても牡蛎さんの場合、

顔の毛並みを肉球で整えるくらいしか出来ませんけれど。


麦太郎たちは途中でケーキ屋さんに寄り

チーズケーキを買って行きました。


ピンポーーーーーーーン


呼び鈴を鳴らすと

奥から佳馨さんがやってきました。


「いらっしゃいませ 麦太郎さん」


「こんにちは 佳馨さん。 お邪魔します」


「にゃにゃにゃー」
 (こんにちはー)


佳馨さんは腰までくる長い黒髪を そよそよとなびかせて

麦太郎たちを奥の部屋に連れて行きました。

部屋には ありとあらゆるお茶の香りが充満しています。

その香りだけで 春の長雨の鬱陶しさなんて

吹き飛んでしまった麦太郎でした。



麦太郎が持って来たチーズケーキを

佳馨さんが切り分けています。

麦太郎と柘榴さんは テーブルに座って

その様子を見ています。


牡蛎さんは お茶やケーキなんてそっちのけで

さっそく苺さんを探しに行きました。

この広い家のどこかに

牡蛎さんの大好きな苺さんがいるのです。


「にゃにゃにゃにゃ〜ん」
 (苺さ〜ん どこですかぁ〜)


すると小さな小さな声で


きゅっ きゅっ
(牡蛎さーん ココですよー)


と 苺さんの声が聞こえてきました。

苺さんは日だまりいっぱいの部屋にある

自分のケージの中で ニコニコしていました。

牡蛎さんはそ〜っとケージの扉を開いて

苺さんを出してあげました。


きゅきゅきゅぅ〜ん
(いらっしゃいませ 牡蛎さん)


苺さんはヒマワリのたねを

牡蛎さんに差し出しました。

牡蛎さんは本当は ヒマワリのたねを食べたくないんですが

苺さんの可愛いくて小さな手に コロっと参ってしまって

お礼を言ってからヒマワリのたねを食べました。

案の定 牡蛎さんの口には合わなかったみたいですが

そんなコトは おくびにも出さず、

牡蛎さんは笑顔で 苺さんの歓迎を受けました。


牡蛎さんは夢みています。

いえ、実際には牡蛎さんは寝ているワケじゃないので

“空想している”と言った方が正しいでしょうね。


(このまま僕と苺さんが結婚するコトになったらどうしよう)


(子供は何匹くらい作ろうかな)


(ああ、いっそこの場から苺さんをさらってしまいたい)


どうも牡蛎さんは先走りすぎてるようですね。

しかし恋は盲目なのです。

そう。それはまさに禁断の愛

『猫とハムスター』という種族の違う者同志の・・・。

苺さんとの楽しい語らいをしながらも

牡蛎さんのアタマの中では

“禁じられた遊び”のモノ悲しいメロディーが

勝手にリピートされて流れてました。

 


その頃 麦太郎たちは

美味しいお茶を飲みながらくつろいでいました。


「牡蛎さんは苺のトコロへ行ったみたいですね。

 いつも遊んでくれて 苺も大喜びなんですよ」


と 佳馨さんが微笑みました。


「牡蛎さんは苺さんのコトが大好きですからねぇ。」


「うにゃにゃにゃ」
(そやそや。牡蛎のバカは苺はんに首ったけやからなぁ)


麦太郎と柘榴さんが答えました。

すると佳馨さんは

ちょっと不思議そうな顔をしてこう言いました。


「え・・・・・でも、
  
うちの苺はオスですよ・・・?

 

 

 

帰り道、外はまだ小雨が降り続いてました。

そんな雨の中でも 牡蛎さんの心はウキウキと弾んでいて

スキップまでしている始末です。

そんな牡蛎さんに どうやって真実を伝えましょう?


「にゃにゃにゃーご」
 (ま、禁断の愛ゆうたら禁断の愛やね)


また柘榴が憎たらしいコトをボソボソつぶやきました。

しかしそれは事実ですから

麦太郎はプッと吹き出しそうになりました。


「うにゃ?」
(んん? ナンか言ったぁ?)


前を歩いていた牡蛎さんが

振り返って聞きました。


「いえいえ、こっちの話ですよ」


麦太郎は笑いを堪えながらそう言いました。


・・・さて、牡蛎さんの恋の行方は

どうなるのでしょうね。


麦太郎のお友達 佳馨さんと、

ペットの苺さんのお話でした。