・仕事の内容について
これは業種や会社により様々でしょうか私の場合は一応注文家具を専門的に請け負っ
ている工場に入りました。注文家具といっても一般のお客さんから直接注文を受ける訳
ではなく売るわけでもありません。販売やデザインを手がける会社から下請けとして注
文が来るだけです。設計図を自前で書くわけではないので、はっきり言って指示されたと
おりに相手の言いなりで作るだけです。こういう形態であっても「注文家具を作ってい
る」というようです。私からすればお客さんからの注文(交渉などの商談)、デザイン
設計、製造、納品をトータルで請け負うことを注文家具の作成をしているというのだと
思っていました。これに対して「既製品の作成」という形態があり、これは同じ製品を
ライン生産していくことを表すそうです。これにも自前でデザインして作るのと下請け
で作る形態があります。
注文家具を作成しているとうたっている工場はほとんど単なる下請け工場であること
が多いです。確かに常に同じものを作っている既製品工場とは少し違いますが、結局は
下請けであるために発注元からは同じ製品の注文が来ることが多いので、同じ製品を繰
り返し作っていることが多いです。しかし実際は注文家具を作っているというプライド
は高く既製品工場とは一線を画しているという気持ちが強いようです。
具体的な仕事の内容は設計図に従って、木取り、加工、組立仕上げ、塗装といった感
じに分かれていて、中には建具のように施工の伴うものもあります。私の場合は慣れて
いないこともあり組立仕上げ(研磨中心)から入りました。まあこれは流れとしては普
通でして、危険が伴い経験が必要な機械加工は慣れているベテランの人が中心となって
やります。しばらく経つと少しづつ加工も手がけるようにはなるのですが、結局は作業
の流れとして元々いるベテランの人がやっていたことなのでその分担は余り変わらなそ
うです。
まあ仕上げというのは細かくて手間がかかり面倒な割にはあまりやり甲斐が感じられ
ないので敬遠されることもあるようです。誰でも形を作る根本的な部分をやりたいです
からね。
・製造はどこまで手がけるのか
家具の作成というと1から10まで全て自前で作るのかというと全くそんなことは無
いです。特に零細企業では利益が出ないと話にならないので、金にならないような手間の
かかる仕事は外注(アウトソーシング)に出すのが普通です。例えば椅子の脚の曲線な
どの加工の面倒な部分は手間がかかるし、元々加工する機械も持ってないので外注に出
すことが多いです。近頃はNC(数値制御による木工機械)というコンピューター制御
のルータが欠かせないものとなり面倒くさい(複雑、数が多いなど)ことはほとんどN
C加工の外注に出します。
その為に実際自分たちでやっている仕事は組み立てて研磨をするだけだったりします。
ただその外注費用も結構バカにならないらしく、製造効率を上げるための外注が利益を
圧迫するという悪循環になっていたりします。でももうこれからはNC無しでの製造は
有り得ないでしょう。一度機械化をして楽をしてしまうと元には戻れませんから。
椅子などの脚モノがそういった状態ですが、タンスなどの箱モノもあまり変わ
らない気がします。まあ余程のこだわりがある所でもないと作り易さ、コスト、見た目
重視になります。フラッシュ構造やランバーを化粧合板ではさんで板を作り木口や木端
面には薄っぺらい面材を接着剤で貼って見た目だけを整え、組み立てるための溝を掘っ
て接着剤と木ねじで組みつけて終わりです。これでも結構見た目はしっかり出来ます。
何か、単なる手抜きの張りぼてにも見えますがフラッシュ構造などは人類の英知を結集
した結果の賜物に思えますね。見えるところにしか高い材料を使わないですむのですか
ら。叩けば張りぼてなのがバレバレですがそれはそれで良いのではないでしょうか。買
い手が居るのですし、まあ大量生産の家具などは大半がこんな感じです。
・職人さん達
こんな事を言うのは何ですが自分たちは職人であるというプライドはとても高いよう
です。職人経験数年の人から何十年の人までその経験をとても誇る傾向があります。
たしかに手仕事なので経験を積むほど深まり自信もついていくのは分かりますが、率直
な意見を言わせてもらえば「どうかな」といった感じです。昔みたいに全て手作業でや
っていた頃ならば腕が全てでしょうか、今はほとんど機械加工が中心です。腕と言うよ
りどのくらい機械の使い方を知っているかの気がします。まあそれも確かにそれも腕に
は違いませんが、結局は手順や方法を知っているか(経験があるか)どうかです。
カンナやノミ、ノコギリも補助的な道具としてしか使わないし、工具も電動化された
ものがほとんどです。最近はNCが主流なので更に手仕事は減ってますね。機械をつか
った作業の所々に腕を活かせる部分があるといった感じです。特に若手と呼ばれる世代
の職人は機械に頼る傾向が強く、機械の使い方を知っていて有る程度のスピードで仕事
が出来ることがステータスのようです。要はいかにうまく手を抜いてソコソコのものを
作れるかと言うことです。だから出来たものに対してのこだわりは余り無く、とにかく
図面通りの形になればいいだろうといった感じですね。見た目重視で。その点古くから
の職人はこだわりがまだ有り、出来たもの以外にその過程を重視したりもします。職人
気質というのでしょうか。意味があるのかは分かりません。
まあこれは家具業界に限ったことではないのですが、昨今は職人がもてはやされ何で
も「匠」とか言って有頂天になっている時代ですからね。その流れに乗って職人という
肩書きに酔っている所もあるのではないでしょうか。結局の所は世の中の全ての仕事は
「プロ」であり、どの仕事もその道に精通している「職人」がやっていると思うのです
が、最近は手仕事の職人だけがもてはやされている気もしますね。でも長いことをずっ
と続ける事は大変なのでそれはそれで評価に値すると思います。
それから職人といっても所詮はサラリーマンです。会社に属し同じ時間に出社し退社
します。給料をもらって経営者のいうことを忠実に実行しているだけです。仕事が家具
をつくっているだけで基本的にスーツを着ているサラリーマンと何ら変わりません。仕
事のやり方も働いている人の意識もです。余り求められる以上のことをするつもりはな
く、そこそこの結果を出そうとします。それは頑張っても余りメリットが無いからかも
しれません。結局はサラリーマンなので。。。
昔は職人としての頑固なこだわりがあったのでしょうが、今は職人とサラリーマンの
都合のいい「良いとこ取り」です。勿論働く当事者にとってはこれはいいことですが、
職人としてのこだわりを誇示する割には残業代や休みなどの待遇などに妙にこだわった
りします。良い意味での割り切りなのかもしれません。少し悲しいですね。でもそうで
もしないとやっていられないのがサラリーマンとしての仕事なのかもしれません。良く
も悪くもです。
・とりまく環境
またこれも個人的な意見なのですが働いているほとんどの人は単なる仕事として働い
ていると考えた方が良いと思います。当然生活をするためには収入が不可欠であるので
その為の手段としての仕事となるのはやむを得ないことだと思います。しかし中には何
か別の付加価値を求めて来る人も居ます。途中で人生の方向転換をする人にそんな人が
多いのかもしれません。しかしそこで注意しなくてはならないのはそういう人は世の中
かなりの少数派だということです。大部分人は別に何かこだわりや目標があるのではな
く人生の流れにより行き着いた結果であるということです。仕事は仕事であってそれ以
上でも以下でもないということです。勿論それは自然な事でべつにおかしな事では無い
のですが、少し違う考え方を持った人から見ると「なんか違うな」「これで良いのか」
という疑問を持つ事になるかもしれません。多分説明しても分からないだろうし、説明
事態が無理な気がします。もともと考え方の土台が異なるのですから。。
・結局は。。
長くなってしまいましたが、結局言いたいのは自分の考えは常にしっかりと持ってい
ないとならないし、その為には常に自分を取り巻く状況を見回して必要と有れば臨機応
変に変えていく必要があるだろうということです。せっかくの人生なのですから。