サラリーマンを悪く言うつもりは全く有りませんが、与えられた仕事を指定され た期日までにこなすことが使命であり、社員としての義務や責任はありますが、その範 疇は集団レベルであり、誰も会社というものを個人的に背負って仕事をしているのでは ないと思います。これはいくら偉い役職に就こうがどれだけ優秀で素晴らしい仕事をこ なそうが同じ事で、所詮組織の一員として動いているだけです。
これは良くも悪くもサラリーマンとしての宿命でもあります。会社という組織に 守られているのでもあり、捕らわれているのでもあります。これを心地よく感じるのか 窮屈に感じるのかは個人の捉え方によると思います。木工業界にもサラリーマン職人が います。むしろほとんどがサラリーマン職人とも言えます。しかし中にはサラリーマン 職人として生きている人とは別の道を志すものがいます。それが雇われるのではなく自 分から何か起業をやろうという独立志向の人達です。
もともと職人系の仕事を志す人々は得てして独立志向が強いように思えます。そ れは木工に関わらす極めて手仕事重視の職人系の傾向の強い職種は、仕事自体が狭い範 囲で完結していていることが多く、やろうと思えば全て自分の手で仕事を完結させるこ とができることにあると思います。企業のサラリーマンでは手がける仕事は全体のごく 一部ですが、独立をするのならばそのほとんどを自分でこなす必要があります。
ただし独立したからといって必ずしも作業をほとんど自分で行う人ばかりではあ りませんし、その必要もありません。下請けなどをして製造の中の工程の一部のみを仕 事とする人もいますし、仕事を分業して委託する事もあります。ただ、明らかにサラリ ーマンと違うのは仕事の内容、報酬、期限などを自分の意思で判断して決めることがで きることに有ると思います。なにしろ自分が社長ですから。。 これに関してはメリットとデメリットが必ずありますが、そのようなリスクをとっても 独立起業したい理由が何かあるのかも知れません。
私が今までに聞いたり会ったりした独立している人々についてその傾向を少しま
とめてみました。分類は独立時期と独立形態の2つでパターン分けてみました。何の役
にも立ちませんが参考にはなると思います。
・いきなり独立型
ほとんど何の技術的な準備もなく、夢と憧れだけでなんとかなるだろうと取りあえず
独立してしまい、後から知識や技術を身につけていこうというタイプ。脱サラ雑誌な
どで持ち上げられている起業家などはこのタイプの気がする。こういうのはさすがに
少ない。余程の運がないとうまく行かない気がする。
・やや準備あり独立型
職業訓練校などで基本的な技術を学んだ後にいきなり独立するタイプ。または趣味な
どを兼ねて独学で技術を身につけた後に独立するタイプ。多分本当に物づくりが好き
な人がこれにあたると思うが独立して商売に向いているかは定かではない。
・念入り準備後独立型
職業訓練校などで基本的な技術を学んだ後、まずは企業に入って技術や知識を身につけ
ながら機会を見て独立するタイプ。一通り色々なことを経験してから独立しようと考え
ている人で商売なども見据えているが物づくりに向いているかは定かではない。そのま
ま会社の居心地よくなりサラリーマンになってしまうことも。。
・ひたすら木工職人型
とにかく木工さえやれればいいという人。材料や加工方法にこだわり採算度外視が多い。
お客さんのニーズよりも自分が作りたいものを作ることが目的で、ある意味自己満足。
高級な無垢の材料のこだわりフラッシュなどはもってのほかで馬鹿にしている。道具や
機械などにもこだわりがあり、とにかく特殊な技術を持つ職人であること強調する。
作ることは好きだが商売のことをあまり考えていないので、よほどの知名度がないと木
工だけで生活できる人は少なく、木工とは直接関係のないアルバイトなどをやっていた
りする。またアルバイトは邪道だと極貧生活をしていたりもする。とにかく木工という
物を神格化し妙に拘っている。下請けなどはもってのほかと考える。
・利益追求ビジネス型
木工を利益を得るための手段とある程度割り切っている人。お客さんが何がほしいか、
市場がどういうものを欲しているかを分析してとにかく売れるものを作って売る。
材料や加工方法も状況に応じて臨機応変に使い分け、針葉樹や外材なども使う。
売れるものを作るので本当に自分が作りたいものを作れるわけではないが、まずは木
工で生活していけないと続けることすらできないので個人的欲求は二の次の商売優先
である。インターネットなどの手段を用いて知名度を広げ注文をとるのも一つの手段
で用いる。今は商売優先だがいずれは自分の作りたいものを作って生活できるように
なりたいという理想は持っている。
・芸術追求先生型
木工を仕事というより自分を表現するための芸術的手段と考えている人。いわゆる先生
肌の人で人間国宝的なものだろうか。とにかく作りたいものを作り売れる売れないは二
の次三の次で分かってくれる人にだけかって貰えばいいという考え。個展やクラフト展
などを渡り歩き日銭を稼いでいるようにも見える。実用的なものよりアート優先の自己
満足のものも多く、これもよほどの有名な先生でもなければ木工一本で生活していくこ
とは難しい。とにかくひたすら苦労をして量産家具を作るなどは耐えられるはずもなく
当たれば強いが外れればじり貧生活が続く。誰か生活をバックアップしてくれる人がい
ないと出来無そうなことである。このことを別名で趣味というのかも知れない。
・着の身着のまま(行き当たりばったり)型
木工命ではないが何とか木工で生活してきたい人。具体的に何かやりたいことがある訳
はなく、それほどこだわりもないが木工職人としての誇りは一応持っている。とりあえ
ず自分の作りたいものを作り売ろうとしてみるが、元々計画性がないためにあまり思い
通りに商売にはならず、何を作ったら売れるのだろうと色々なもにの手を出してみたり
する。理想はあるが死にものぐるいになって追い求めるほどのこだわりはないので、本
当は木工で無くてもいいのかもしれない。でも木工をやっていきたい気がする。
でも結局はすぐに方向転換して別の仕事に移ってしまったりする。
・理想生活スタイル追求型
木工をやりたいというより自分の理想とする生活スタイルを確立するために木工を仕事
に選んでいる人。田舎暮らしをしたいとか木で作った自然な感じの家に住みたいとか、
同じような職人たちと関わって生活したいとか、ある意味木工は二の次で望む生活が実
現できなかったら木工をやっていることすら無意味と考える。だから当然死にものぐる
い木工をやるタイプではない。農業や何かの副業を生業としている場合もある。正直言
ってこんな生活ができたらいいなというパターンでもある。
妙にログハウスが好きだったりする。
・木工関連職業型
木工の携わっていても必ずしも自分で作りたいというわけではない人。自分でデザイン
をして外注に出してできたものを売ってみたり、単に商品を仕入れて売ってみたりする
ブローカーみたいなこともする。同業者のプロ相手に道具や材料を売ってみたり、お客
さんと製造者の仲介をしてみたりと木工というより流通業のような感じか。インテリア
ショップなどのお店を持って注文家具という看板を掲げ実は全て下請けに出していたり
する。でも本当に商売として木工に関わりたいならこういう形になる気もする。
・多角経営ハイブリッド型
木工をメインに全く関係がなさそうな仕事も併せ持っている人。木工でこういうことを
やりたいという理想は持っていて実際ものを作っているが、それとは全く関係のない手
段で生活を得ている人だが、アルバイトという一時的副業というものではなく、本格的
に商売として生活の糧を得ている。インターネットを使って色々な商品を売ってみたり、
コンサルタントのようなことをやってみたり、はたまた株などの投資をやってみたりと
単なる何でも屋のような気もする。人間関係が広くそのつてを頼って仕事を得たりする。
見ようによっては全て中途半端のようだが、それらの要素が木工お仕事を得るのに結果
的に役立っていたりする。木工家と呼んでいいのか判断に困る人でもある。
これも木工は単なる趣味だったりする。
・木工何でもやります商売型
とにかく木工に関わる仕事は何でもやりますという人。自分で仕事が取れればいいのだ
が下請けのような仕事が大半だったりする。無垢材からフラッシュまで頼まれてできる
ことは何でもやり、種類も何でもこなす。ある意味何でもできる技術レベルの高い木工
屋だが、結局下請け家業に終始して理想とする仕事とはほど遠かったりする。ただ生活
のためにはしょうがないので理想と現実のギャップに苛まれながらも仕事は続けるが、
いつかは打開したいと思っている。個人というより零細木工企業の大半はこの形態に埋
もれていっているように思える。またこの形態が木工の仕事だと考えている節もある。
単に流れで木工の仕事をしているだけで本質的には木工が好きでも何でもなく、仕事も
別のことでもよかったりする。
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■■独立形式■■