大阪連絡会会報・じねんじょレターズ
鳥と木の実 自然の中のつながり ホオノキの部
畚野剛
植物の生活型
沼田真監修「目本山野草・樹木生態図鑑 シダ類・裸子植物・被子植物(離弁花編
)」
(全国農村教育協会、1990年)という図鑑がある。この本は原色写真と図と解説文
を組み合わせ、それぞれの長所を生かして、植物の生活を纏めようとした力作である。
さらに一つの試みとして生活型の記号表示も行われている。生活型という概念につい
て、
本書の9一16頁で詳しく説明しているが、掲戟の趣旨として「野外での観察をより正
確にするうえに、植物を生活型にみることは有効な方法といえる」と述べている。
生活型(Life一form)とは、植物が種々の環境のなかで碁らして来たなかで
築き上げた形(と働き)を、生態学者の目から類型化してとらえようとする考えであっ
て、ふつう記号化した式として表現されると、私流に解釈している。さまざまな生活型
の分類形式が工夫されているそうだが、そのうち本書では休眠型、地下器官型、散布器
官型、生育型がとりあげられている。
たとえぱ、ホオノキ(250頁)の項では[生活型]Lf:MM R5 D4 e
となっている。休眠型はMM:休眠芽が地表面上8一30mの木、地下器官型はR5
:地下や地上に連絡体をつくらず単立するもの、散布器官型はD4:とくに散布の仕組
みがなく、親株とその周辺に落下するもの、生育型はe:直立型(地上部の主軸がはっ
きりした直立性のもの)という意味である。
ホオノキの実は誰が運ぶ?
さて前号で布谷さんがコブシの実について書いてられたが、その集合果実の構造はタ
イサンボク、ホオノキ、モクレンなどと基本的には共通であって、熟するとr果皮が裂
けて美しい朱赤色の種子が白い糸で下がる。この糸は種子を通る多数の道管の内壁のら
せん状の肥厚がほどけてたばになったもの」(亘理俊次、1961年)という説明がさ
れている。私も大野山頂でコブシ(植栽?)の実が垂下している現場に接して感激した
記憶がある。味は少し辛昧があったように思う。
それでは、この赤い実は誰を待っているのか?ホオノキについて次のような趣旨の
記事がある(赤 勘兵衛ら、1988年)。「果皮が裂けると種子が赤く色づき、鳥
達に
信号を送る。しかし果皮はなを種子をしっかりと包み込んでおり、ついばむことが出来
るのは、大きくて強いくちぱしを持つ鳥、キツツキの仲間だけである。」そして、ア
カゲラが果実にしっかりと抱きついて、種子をくわえ出している様子がイラストで示さ
れている。そのあと「種子ははきもどされるか、またはふんにまじって散布される」と
いう。「取材地/山梨県南都留郡 海抜900m・10月」と脚注がある。
それにしても、イラストでは赤い糸で下がる種子は一つも見えない。糸で下がる前
に、
こんな奴が来ていたのか!自然界は驚きに満ちている。そして辛抱強い観察者もいる
ものである。これらの新知見によって、私のノートは「ホオノキの散布器官型は(D4
よりは、むしろ)D2:果実が動物にたべられて種子だけが排出されたり、カギ、針、
粘液などで動物や人体に付着して運ぱれるもの」と書き換えられた。皆さんも観察の場
で、生活型というめがねをかけてみて、新しい発見をされてはいかが!