大阪連絡会情報誌・じねんじょレターズ


いつまで寝てるの?目覚めの遅い木たち

畚野剛

 毎年、春のはじめ、日が進むに連れて、冬枯れの雑木林の木々が目覚めて行きます。 花が先か?葉が先か?それとも両者ほぼ同時か?それぞれの種により定まっているようです。
 花が先というグループの中には、ダンコヴバイ、マンサク、キブシなどがありますが、黄色の花が多いと言うことに、どんなメッセージが込められているのでしょうか?
田中肇さんの研究では、ダンコウバイと同属のクロモジではハエが、またマンサクではハエ(?)が花粉媒介すると書かれています(文献1)。ハエの目は黄色に敏感なんでしょうか?しかしキブシの場合媒介者は「夜の舞姫達j、クロテンキリガ、カバキリガ、チャイロキリガなどと報告されています(文献2)。自然現象とくに生物界に関しては、単純一律に解釈しないほうが無難と言うべきでしょう。
 次に、春の葉の展開が、木の種類で早いもの、遅いものがあり、だいたい順番が決まっていると言う現象についてのお話です。草の例になりますが、光合成を巡っての時間的な棲み分として、早春の雑木林の下生えとして、いち早く葉を広げ、花を咲かせ、実り、すぐに消えて行くカタクリやアマナ、イチリンソウなど、「スプリング・エフェメラル」と言われる生態的なグループの話はあちこちで紹介されていますから、皆様、よくご存知のことと思います(文献3)。
 その対極(?)として、木が喋るわけではありませんが、「そんなに慌てなくてもいいじやない!」と言わんばかりに、悠々と「春眠」をむさぼっている連中もいるようです。誰が書かれたのか忘れてしまったのですが、「木の王者ネムノキは春の目覚めが一番遅い。悠々たるものである。」という言葉が、いつの頃からか、私の頭の隅っこに居着いてました。ところがあるとき、佐藤治雄先生の文を読みましたら、大阪市大の穂積先生が「ナンキンハゼはほんまにサボリやな。ほかの木はもうみんな葉を出しているのに、この木だけはまだ寝てる」とおっしやったそうです(文献4)。ナンキンハゼの遅い芽吹きとはやい落葉の理由付けとして、佐藤先生は「この種が今の日本より暖かい環境に適応していることをしめしている。」と述べられています。
 そこで両者の芽吹きを川西市内で実際に調べてみました。
   1998年はナンキンハゼ4月18日、ネムノキ4月20日。
   2000年はネムノキ4月30日、ナンキンハゼ5月1目でした。
まだデータ数が少なすぎるのですが、両者の「ドンビリ競争」は、なかなか良い勝負のようです。
 北村・村田の「原色日本植物図鑑 木本編1」によれば、ネムノキは「熱帯のものが暖帯に侵入したものである」とあります。したがって、芽吹きの遅い理由は、ナンキンハゼとかなり共通しているように思われます。それならぱネムノキもナンキンハゼ同様に「はやい落葉」なのでしょうか?また観察すべき宿題ができたようです。

文献1)田中肇:花と昆虫がつくる自然、保育社(1997)
文献2)登日邦明:三熊山の自然 第1集、淡路自然研究保護連合会(1979)
文献3)守山弘:週間 朝日百科 植物の世界No.131、朝日新聞社(1996)
文献4)佐藤治雄:都市と自然 265号、大阪自然環境保全協会(1998)
 
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