大阪連絡会情報誌・じねんじょレターズ(50号)

身近な自然の観察データ4
エゴノキ2002
川西市  畚野剛
落花を拾って子供と遊ぶ
 落花が一面に散り敷く山路の風景に接し、それを深く心に刻んだ経験は、多くの方が持っておられると思います。散り敷く花の色もさまざま。サクラのピンク、ツバキの赤、フジのうす紫、ヤマブキの黄。昔から日本人はこのような花木の多くを社寺や屋敷の庭に、季節を彩る大切な構成要素として取り入れてきました。

 上に述べなかったものとして、今の季節、テイカカズラやエゴノキがあります。どちらも色は白。しかも野趣をおびたものです。また落花をみて初めてその親木の存在に気づくことは自然観察の醍醐味のひとつでありましよう。今回のレポートはこのエゴノキの落花を扱うことにします。
 十年ほど前になるでしょうか、箕面山で子供たちと歩いたとき、崖道でエゴノキの花が散り敷いているところに通りかかりました。そのころ「観察会のテーマ探し」に興味を持っていた私は、そのおびただしい落花を見て気がついたのです。知識としてエゴノキの花弁の数は5枚です。しかし、そこにあった実物の中には4枚や6枚のものが混じっていたのです。

 注:エゴノキはヅバキと同じように、花びらとおしべが一体となって落ちます。

 さっそく「みんなこの花を10個ずつ拾ってみよう。」、「拾ったら、花びらが何枚か数えてみよう」、「はい。全部が5枚だった人、手を挙げて!」、「5枚のはなびらでなかった人も少しいるようだね?何枚だった?」、「そのひとたちは、ラッキー賞!ビンゴカードの7番に丸をつけましょう。」と展開して行きました。このようにして、子供と遊ぶことが出来たのも、落ちた花を扱えたからだと思います。高い木に付いている花を見上げながらでは、こんな観察は出来なかったでしょう。
 注:そのご、草本(オカトラノオ)でも、花穂を構成する小さな星のような花を調べて、やはり花びらの数の変異があることを知りました。調べれば、ほかにもいろいろの例が見つかると思います。こういう場面では、大阪連絡会のN先生は、よく「植物はええ加減なもんです」と言われます。


花びらの数の変動
 「じねんじよレターズ」22号(1997年7月)に「データボックス・シリーズNo.6エゴノキの花びらを数える」と題して、我が家に植えられたエゴノキを対象として、この問題をもうすこし突っ込んだ形で取り扱いました。それから毎年追加報告をしていましたが、早いものでもう6年目になりました。

リスト:対象としたエゴノキ
No.1 川西市大和西  植栽  淡紅花
No.2 川西笹部    自生  白色花
No.3 川西市赤松   自生  白色花
No.4 川西市大和東  植栽  白色花

 毎年同じ木を見続けたかったのですが、「そうは問屋が卸しません」でした。たとえばNo.1は、我が家の庭の木で、これからスタートしたのでしたが、99年は花数少なく、雨にいためられて駄目。そうして今年(2002年)は木が弱ったのでしょうか?わずか一枝、5花しか咲かなかったのです。そこでNo.4の木を今年初めて見つけ出して、その落花を採取しました。野外の自生木でも、たとえばNo.2の木では、2000年に落花がほとんど見当たらない状況がありました。それでも何とか次のような表にまとめることが出来ました。

表:エゴノキの花びらの数の変異(まとめ)
No.
年次97980001 9902000102
3弁
4弁3747610838 18161222
5弁1219656446129 24114710288112
6弁401815 13142302033
7弁



私が立てた仮説
 上の表から何が言えるでしょうか?
1. エゴノキの花びらは5弁のものがもっとも多い。
2. 5弁についで多いのは、白色花では6弁、薄紅花では4弁である。

 と、一応言えそうです。しかし薄紅花については1本の木しか調べていません。今年、新しく薄紅花の木を植えた家が近所にあります。我が家の木と違ってものすごく元気に咲いていました。しかし道路の側溝に落ちて水浸しになっているのを、垣間見ることしか出来ません。印象としては、5,4,6弁の順のようでしたが、立ち止まっていると、家の主人が中から出てきて、胡散臭そうに見ます。「見事に咲きましたね!」という私の外交辞令も通用しませんでした。ここでのデータとりを諦めました。

 では、なぜ薄紅花の弁数が少ないほうに偏っているのでしようか?私には手におえない問題ですが、最近、次のような話を知りました。

 大阪経済大学の西山豊先生は、数学的な考察として、花茎形成初期の茎頂(生長点)での細胞の配置が弁数を決めているのではないかという考えを述べておられます。茎頂の細胞配列がドーム型の場合、サッカーボールの模様のように、5個の六角形が1つの五角形をかこむかたちとなり、これが5弁の始まりではないか?もし茎頂点が平面であれば、6個の六角形が1つの六角形をかこむかたちとなり、6弁が誘導される。また中抜きで4個の球(細胞)が正方形充填の配置をとれば4弁で進んでゆく、というイメージを描いておられます。

 西山 豊「5弁の謎」in大阪経大論集、49巻、1号、1998年5月。

 余談ですが、No.1は調査した中で唯一の薄紅花品種でしたが、花の大きさも小さいようです。測定例としてNo.1で100花が約5グラム、No.2で100花が約12.5グラムとかなりの差がありました。(完)


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