大阪連絡会会報・じねんじょレターズ
<自然観察のテ−マ・31>
雨の日の観察会
自然観察はお天気には関係なくできる、雨の日には雨でなければ見られないよう
な自然が見られる、というようなことを耳にしますし、自分でも口にしたことがあ
ります。しかしそうはいうものの、やはり雨の中での自然観察はやりにくいもので、
お天気のほうが見やすいのは間違いありません。でも実際には雨だから中止という
ことは余りありませんし、雨の中での自然観察もわりとやっています。そういう雨
の中でやれそうな観察のテ−マを幾つか考えてみました。
まず最初は雨つぶを見ることから始めましょう。森あるいは木に降る雨は、まず
木の葉に落ちて、一部はたまって雫となり、一部は葉の柄のほうに流れていきます。
葉に落ちなかった雨つぶは直接下に落ちてきますが、かなりの雨つぶはいったんは
葉で止められるといっていいようです。強い雨でも最初のうちは木の下に逃げ込む
と雨にかからないですね。ところがしばらく雨が続くと、木の葉にたまった雨が大
きな雫になって落ちてきます。木の梢の下にいるとよけいにぬれそうな気がします。
この梢から落ちてくる雨のことを樹雨(じゅう)と呼んでいます。
この時、梢から落ちてくる大きな雫を見上げてみましょう。そこそこの大きさの
木でなければ見えません(あまり背が高い木では分かりません)。葉の先端に大き
な水の雫がたまってきて、ス−と落ちてきます。上を向いている姿勢だとなかなか
逃げることができません。逃げてもいいし、顔で受けてもいいでしょう。ちょっと
きれいで雨だなあ、と思えます。大きな雫が次々と落ちてくるのが分かってとても
不思議な感じがします。それだけで何の能も無いのですが、目線の違いでとても違
ったように見えます。
木の葉の形を見ると、先端がとがっているものが多いですね。大江健三郎さんの
小説にもそれを題材にしたものがありましたが、あの葉のトンガリは雨を集めるた
めだといわれています。その証拠として上げられるのは熱帯多雨林の樹木の葉には
先が細長くとがっている木があることがあげられています。大部分の葉は先が細く
なっていますから、そこまで細長くなる必要もないように思うのですが、まあいい
でしょう。とにかく葉の先端は雫集め装置なのです。
さてもう半分ほどの雨は一体どうなるのでしょう。それは逆に葉の柄のほうに集
り、細い枝をつたって低い方へと流れていくことになります。こちらも多くの場合
はだんだんと太い枝に流れ、最後には幹へと流れていきます。つまり幹に川が生ま
れるのです。これを樹幹流(じゅかんりゅう)と呼びます。これも根っこの近くに
水を集めて木に水やりをする働きがあるようにいわれているのですが、別にそうし
なくても均等に落ちてくればいいわけですから、本当に木に取って有効な水になっ
ているのかどうかは知りません。
雨が降っていないときに、この樹幹流がどこを通るかを考えてみましょう。枝ぶ
りを見ながら、水が通りそうな所を推理するわけです。そして雨が降りだしてから、
推理の通りに水が流れているかどうかを確かめてみましょう。
実はその流れの道が雨が降っていなくてもわかる場合があるのです。木の幹を良
く見てみましょう。もちろん低い側へ流れるのですが、いつも雨が流れている場所
には、藻類がついて緑色をしていたり、カビが付いて黒っぽくなっていたりするこ
とが多いのです。木の幹のある側だけが違ったように見える場合には、なにか理由
があるはずですね。この場合には、水が流れることが多いために、湿気ている時間
が多く、藻類や菌類が付いていることが多いというわけです。以前に木の北側には
コケが付いていることが多い、ということを書いたことがありますが、これはまた
違った落とし穴ですね。
きっとあの枝の下を通って、その水の流れは下の太い枝の上を通って次の太い枝
につたい、そこで方向を変えて幹の反対側に流れてそのまま下に降りてくる、とか
いう具合に想像ができそうです。これで実際に雨が降りだしたときには、答えが分
かりますね。
実はこの雨の雫をじっと見つめるという観察をこれまで雨の時に何回かやってい
るのですが、一度も受けたことがありません。先日の長居公園での大阪の講習会で
もやってみたのですが、もう一つでした。私はとにかく面白くてしかたがないので
すが、なんで皆はそう思わないのだろう。是非次の雨の時にはやってみてください。
☆ ☆
次は雨の中の虫探し。雨が降ると昆虫たちはどこで雨宿りをしているのでしょう
か。これは実際に探してみましょう。探す目の数が多くなると意外と沢山の虫たち
が隠れているのが分かります。一番多いのは植物の葉の蔭ですね。小さなガやチョ
ウの仲間などが葉の裏から飛出してきます。でも木のウロなどに潜り込んでいる虫
は、雨から隠れているのか、あるいはただそこにいるだけなのか、あるいは住み家
なのか、どうもよくわかりません。
アミを張るクモ類はもともと葉の蔭に隠れています。雨が降ってもあんまり関係
がないのではないでしょうか。
もっと大きな動物たちはどうしているのでしょうか。もともともっと大きな動物
たちにはお目にかかれることはありませんから、それを確認することはまずできま
せんが、どうしているのだろうと考えると気になってしまいます。奈良公園のシカ
はまったく気にしていないように見えますがどうなんでしょう。
☆ ☆
雨が降っているときの観察のテ−マはあまり思いつきませんね。もう一つは雨散
布植物ですが、これはタイミングが難しそうです。でも雨が降ってきて,しずくが
飛び散るのは分かります。きっとしずくと一緒に種子が飛び散っているのだろうと
思いながら見て下さい。
雨にかかわって観察のテ−マにされているのは、雨と水の流れによって、土壌が
浸食されている様子を観察することです。新しく開発された土地などでは、道の脇
などに雨の通り道ができて、土が流されてしまっているのを良く見ます。あるいは
小石のまわりの土が流されて、石を頭にかぶった土の小さな柱が沢山できているこ
とがあります。どちらも雨水の力を見てもらいます。
昔柴田さんが良くやっておられた実験もこの土壌の寝食を見ようというもので、
土の山を作り、一方には少し草などをかぶして植物が生えている状態にし、片方は
裸の山の状態にして、上からジョウロで水をかけて植物が生えていないところでは
土が運ばれてしまうことを直感的に分かるようにするものでした。なんでもない当
たり前のことなのですが、実際に目の前で見るとなかなか迫力があります。
さて雨の中の自然観察のテ−マとして書き始めたのですが、雨だからできる観察
のテ−マというのはどうも思いつきません。これまでの観察会などで雨の中でやっ
た時のことを思いだしてみると、結局は特別なことではなく、普段と同じ様なテ−
マを目につく限りやっていたように思います。逆に雨が降っているから気が付くこ
とがあったり、雨だから分かることなどもあります。結局雨だからといって構えな
くても、普段と同じように目に止ったことを観察すればいいということになるのか
も知れません。(布谷)