大阪連絡会情報誌・じねんじょレターズ


 <自然観察のテーマ・36>

木の実の上と下

布谷 知夫


 以前に葉の裏と表について書いたことがあります。今回は実の上と下について。
 滋賀県では田んぼの周囲には必ずといっていいほどカキの木が植えられていて、丁 度今頃、山手を歩くとカキの花が終わって小さな実が出来ています。この小さな実を 見ると頭の中にある柿の実と違っているのに気がつかれるでしょう。
 実の柄があって、ふくらみかけた小さな実が出来かけており、そして緑色のおそら く花のガク片と見えそうな4枚の葉があります。どうやらこの緑色のガク片はこのま ま大きさを変えずに、柿の実が出来た時には、あの4枚の葉のような状態で残るよう に思えます。
 さて何が違うのでしょうか。実につく柄の位置と実の位置とガク片の位置が逆転し ていますね。現在の状態では、柄→実→ガク片ですが、出来上がった柿の実では、柄 →ガク片→実の順番になっています。つまり実とガク片の位置がいつか逆転するとい うことのようです。でも実が大きくなってから逆転が起こるとはちょっと考えられま せん。この1ヵ月 <左下へ>

ほどを見ていると、いつ変化していくのかが分かるかも知れません。 ぜひ確認してみて下さい。
 でもこんな変な逆転が起こるのはカキぐらいのもので、普通は花の時の位置関係と 実になった時の位置関係が変るような種類はありません。そういう目で実を見てみる とどういうことになるのでしょうか。 
   ☆        ☆
 植物の花の部品を考えると、普通は外側から、ガク片、花びら、おしべ、そしてめ しべが真ん中にあることになっています。そしてガク片と花びらが付いている場所が 問題となります。植物の実が出来るのは、めしべの下部にある胚や子房と呼ばれる部 分がふくらんでくることになっています。そしてその実になる部分より上に花びらや ガク片が付いている場合と、その下に付いている場合があります。そしてその花びら の位置を基準にして、その上にある場合には子房上位(しぼうじょうい)、下にある 場合には、子房下位(しぼうかい)といいます。
 理屈はこういうことになるのですが、実際の問題として何が違うかというと、実が できる時には大抵の場合には花びらは落ちてしまいますが、 <右上へ>
ガク片は残る事が多いの です。そうすると、子房上位の場合には、柄、ガク、実という順番になり、子房下位 の場合には、柄、実、ガクという順番になります。ここまでわかりますでしょうか。
 わかりにくくても実際の実の形を頭におきながら考えていただければ、分かると思 います。カキは最初に書いてあることはとりあえず忘れていただいて、柄、ガク、実 ですから子房上位です。ナスビは柄、ガク、実の順番ですね。ガク片が実にくっつい て残っているのはわかると思います。トマトも同じです。ミカンはどうでしょうか。 ミカンのヘタの部分がガク片などの痕です。
 さてリンゴではどうでしょうか。リンゴの柄が付いている部分の反対側を見て下さ い。深く凹んだ構造をしていて、その凹みの口に小さな列片が5枚付いているのが分 かると思います。これがガク片です。したがって順番は、柄、実、ガク片ということ になります。キュウリではどうでしょうか。お店で売っているキュウリではちょっと 分かりにくいですが、畑のキュウリを見れば、しなびてしまった花びらが残っている のを見ることが出来ます。この順番は、 <左下へ>

柄、実、ガク片です。カボチャも同じです。 ビワを見てみましょう。柄のところはすらっとしていますが、反対側には真ん中に凹 みが見えて、構造が残っているのが分かります。ビワの順番は柄、実、ガク片という ことになります。
 実はこの子房上位と子房下位の中間的な構造などがあってそれほど簡単でもないの ですが、とりあえずは、このような大きな分け方が出来ることは、実際の果物などを 見ていてもわかります。同じように野外でいろいろな植物の実をみたり、あるいは若 い時のまだ花びらやガク片が残っている花を観察しても、同じように大きな区別が出 来ることがわかります。
   ☆        ☆
 こんな話は植物の勉強のようなものなのですが、実には上下の関係が <右上へ>
はっきりとあ ることはわかるでしょうか。ところが見かけの上下関係はちょっと違うのです。リン ゴは普通はヘタ(柄)のある部分を上にして並べます。カキは柄が無いほうを上にし て並べてないでしょうか。カボチャは柄のあるほうが上でしょうか。これがキュウリ やナスビのようにごろんと横にしかできないようなものでは上と下の関係はまったく 分かりません。さてハヤトウリではどうでしょうか。
 この位置関係の、どちらを上と呼び、どちらを下と呼ぶかは分かりにくいところで すが、植物の進行(成長)方向を上と呼ぶのが普通と考えると、柄がついているほう が下で、先にあたるほうが上ということになるでしょうか。従ってリンゴは逆に置い ており、カキは正しい位置関係で置かれていることになります。
         (布谷)


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